日本の文学賞

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なずな

伊藤整文学賞

なずな

堀江敏幸

四十代半ばの独身男性が、事情により生後間もない姪なずなを預かることになる長編小説。育児の不慣れさ、周囲の支え、幼い命の変化を静かに追い、父性と生活の時間を繊細に描く。

育児父性日常家族

作品情報

赤ん坊との暮らしが、男の時間と世界の見え方を少しずつ変えていく。

集英社文庫公式であらすじを、単行本書誌は書店・古書 DB で ISBN とページ数を確認。受賞時の単行本 ISBN を採用した。

書籍情報

出版社
集英社
発売日
2011-05-02
ページ数
440ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784087713770
ISBN-10
4087713776
価格
1980 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

生後2ヶ月の女の子と過ごすイクメン小説! 「世界の中心は、いま、《美津保》のベビーカーで眠るなずなの中にある」──ひょんなことから授かった生後2ヶ月の「なずな」。かけがえのない人々と、二度と戻らない日々を描く長編小説。

レビュー

  • 命っていいなと思える育児小説

    いとこの中では最年少、子どもがいる友人も少ないため、これまで赤ちゃんと触れ合う機会がほとんど無かった。苦手というほどではないが、抱っこの仕方もわからないくらい遠い存在。子育ては大変だという漠然としたネガティブイメージだけを持っていた。 そんな私も、3ヶ月前親になった。絶賛子育て中だ。抱っこ、授乳、オムツ交換を繰り返す日々はもちろん大変だが、子どもはめちゃくちゃ可愛い。 ふと、以前読んだ本書「なずな」のことを思い出した。40代独身男性の地方新聞記者である主人公が、止むに止まれぬ事情により生後2ヶ月の弟夫婦の子ども「なずな」を預かり育てる物語。ストーリーはぼんやりとしか覚えていないが、とても温かい気持ちになった記憶がある。せっかくだから読み返してみた。子育てを経験しながら読む本書はまた格別。2〜3ヶ月の赤ちゃんあるあるを存分に堪能した。 しかし、本書の解説文まで読み終えてから、この物語は他者である赤ちゃんを育てることの大変さや喜びだけを表現しているのではないと感じた。 本書の中で「なずな」は、寝て、泣いて、飲んで、出すことをひたすら繰り返す存在だ。周囲の大人がどんな事情を抱えていようとお構いなく。そして「なずな」はただそこにいるだけで、暖かい春風のような、新緑のような光を放っている。私は自分が0歳児だった頃の記憶がない。でも、まちがいなく私もかつては赤ちゃんだった。そして、赤ちゃんだった私もきっと「なずな」のように光を放つ存在だったのだ。 本書は、かつて赤ちゃんだった自分の存在、今を生きる命、かつて存在した命をまるごと肯定して抱きしめたくなる、そんな物語だった。

  • いつものスタイルとは違いますが傑作です

    これは、いつもの堀江敏幸の小説とはかなり雰囲気が異なります。ネタバレになるので内容は語りませんが、ほんわかして、そして、一途な生命の尊さをリアルに緻密に描いた作品です。また、周辺の人たちとの交流、他人からの手助けを厭わない主人公の素直な姿勢が愛おしいです。最後の残された二人のこれからを想像させる余韻をもった終わり方もいいです。堀江敏幸を難解だとかペダんティックだと思ってる人は、この作品を読むと印象が全く変わりますよ。

  • 赤ちゃんを中心とする世界

    『暮しの手帖』の書評からこの本を見つけました。まもなく第一子を迎える、父親見習いの私にとって、よい学びの読書となりました。そこに描き出された赤ちゃんの細やかな動きと確かな成長とともに、彼女を中心として広がっていく世界の描写が美しかったです。

  • 赤ちゃんはかわいい! でもちょっと退屈。

    〇 産まれたばかりの赤ちゃんは可愛い。どうしようもないくらい可愛い。この小説は生後2か月から3か月過ぎまでの赤ちゃんの無垢なすがたを見事に写し取っている。久しぶりにわが子が生まれたばかりの頃の様子を思いだした。 〇 この赤ちゃん(なずな)が第一の主役ならば、伊都川という小さな田舎町のコミュニティはもうひとりの主役だ。伊都川には著者の別の作品に出て来る「雪沼」という町と同じ種類の人たちが住んでいてよく似た空気で満たされているようで、善人ばかりの地方ミニコミ紙伊都川日報の同僚や、近所の人たちとのやり取りが、赤ちゃんの描写と同じのどかさで描かれる。 〇 それに加えて、語り手の感想やら思い出やら知識の披瀝やらのモノローグがふんだんに差し挟まれて、全体を大きく引き延ばす。450ページにおよぶ全編にのんびりゆったりとした気分が横溢して、ゆったりしたテンポで平和な時間が進んでいくわけで、それはそれで良いのだけれど、読んでいてやっぱりちょっと退屈になる。短編ならばともかく、これだけの長篇となると、もう少し何か出来事とか山谷がないと、マンネリ感が漂ってくる。 〇 面白いと思ったのは文体である。堀江さんの特長は、なによりも比喩に満ち知的で抑制の効いた凝った造りの文章だと思っていたのだが、この作品の文体はとても素直である。文の構造もシンプルだし、ひねった比喩も使わないし、欧文から引き写したような構文も使わない。焦らしに焦らしてなかなか種明かしをしないということもない。堀江さんの香りがしないとは言わないとしても、とても薄いのだ。やはり長篇と短篇とで使い分けているのだなと思った。わたしはどちらかというと短篇の堀江さんの方が好きだ。

  • ファンになりました!

    堀江敏幸さん、ラジオのトークを聞いて、ダンチュウのコラムを読んでからずっと気になっていた作家さん。これからじっくり他の作品も読みたいです。妊婦さんにも子育て中の人にもプレゼントにオススメの本!

  • 傑作。

    美しき日本の文書。 読み終えて得るもの、要した時間の価値はある。

  • ああ、それ分かる!がいっぱい。

    子供がいて、あなたが男性なら、あるていど育児に参加している自覚があって、純文学系の小説が好きだったら、これはおすすめ。 もちろん、そうじゃなくっても純文学方面の小説が好きならばおすすめ。 引越しや、むすめの成長にともなってエルゴベビーはすっかり利用しなくなっていた。 この夏、二人で過ごす時間があり、眠いのになかなかお昼寝ができずかわいそうだったので、久しぶりに引っ張りだしてみた。おおはしゃぎで、とても嬉しそうに抱きついてきた。 これで、しょって家事を...と思っていたのだけれど結果的には「おさんぽいく」のリクエストに。 もちろん、エルゴで抱っこしたままで。 お腹とお腹で密着する暑いけど妙に耐えられる感じ。 成長したむすめの重いこと! そして、やっぱりなんとなく手をむすめのお尻のあたりに添えてしまうなあと思いながら、堀江さんの「なずな」を思い出す。たとえば、こういったそう!あるある!という行為や感覚がこの小説にはちりばめられていて、楽しい。 子供がいる人が面白く読めるというのはそういう意味。良質な文章と共に。 図書館で借りたのだけれど、もう一度読みたいし、誰かにプレゼントしたい一冊。

  • いい話。

    これといって何が起こるわけでもない。突然預かることになった生後2ヶ月の赤ちゃんと、それを取り巻く大人たち。子供、というより一つの生命体といった方がいいような成長の記録。暖かい作品でした。

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