日本の文学賞

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冬の旅

伊藤整文学賞

冬の旅

辻原登

妻の失踪をきっかけに、緒方隆雄の人生は失職、病、路上生活、罪へと崩れていく。刑期を終えた彼がひとり歩き出す姿を通じて、絶望の底に残る自由と、人がなお歩き続ける理由を問う長篇小説。

転落再生孤独

作品情報

すべてを失った男が、雪のように冷たい自由のなかを歩き出す。

集英社単行本として二〇一三年一月刊行。版元ドットコムと集英社文庫ページで単行本・文庫の存在を確認し、受賞対象に近い単行本 ISBN を採用した。

レビュー要約

  • 物語の余韻や人物の感情に寄り添う読みやすさが評価される一方、題材の重さや展開の甘さを指摘する声もある。

書籍情報

出版社
集英社
発売日
2013-01-25
ページ数
360ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784087714821
ISBN-10
4087714829
価格
2850 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

魂を震わす、慟哭の道。 2008年6月8日午前9時。緒方隆雄、滋賀刑務所を出所。罪状は強盗致死。ドミノ倒しのように不運が続き、すべてを失った男が歩き出す。21世紀の日本に刻む、現代文学の到達点。

レビュー

  • 何度も繰り返し読んだ唯一の現代小説

    最初にこの本を書店で購入したのはもう10年くらい前だと思いますが、その後しばらくの間、本棚に置かれたままになっていました。 読むきっかけとなったのは、手術ために入院することが決まり、まだ読んでいないこの本に気づき、病院に持って行った時に始まります。いったんは退院しますが、その後2回の入院・手術がありました。検査入院を含めると約80日、術後ICUいる数日とリハビリテーションの時間以外は、本当に没頭して幾度も読み返しました。 決して勇気もらうは様なストーリーでははなく、むしろその逆です。それでも読み続けた理由を、今も考えます。この小説に流れる時間、バブル崩壊・大震災・オウム真理教・同時多発テロ等、同じ時代に自分も生きたからかもしれません。 作者の巧みな何気ないエピソードが、後に残酷で重大な意味を持つことを、何度も気づかされます。人には良くも悪くも分岐点・偶然の分かれ道がありに、それに私たちは気づくのか、気づかないのか。そんな読後感を、長い時間の読書を通じて親しい存在になった登場人物達に伝えるすべはないょうに、過去のわたくしについてもまた同様です。 多くの人に薦められる本ではありませんし、また読後の感想も、人それぞれに分かれると思います。最後の解説には「二十一世紀の日本で書かれた最も恐ろしく、最も美しい小説」と書かれています。 長い年月で表紙も破れ、傷んだページのある本を棚にしまい、いつか読むときは来ると思い、また新たに購入しました。

  • 読めてよかった。

    先日、ハードカバーで手に取って読めず、心残りだったので入手した次第です。報われぬ主人公でしたが、最後は心においては救われたのかなと感じました。この先生の作品を続けて読んでいます。

  • とても暗い小説でした。

    これでもか、これでもかと不幸な人々が登場します。世の中、人生なんて所詮はそんなに甘くはないとは認識しているつもりですが、もう少し希望のもてる内容であって欲しかった。とくに、最後の結末は悲惨すぎます。

  • 白鳥がいい

    白鳥のキャラ造型に感嘆した。自分に忠実で全く迷いがない。主人公のアンチテーゼ的な存在であり、悪魔的でもある。深みがあるいい悪役だと思う。

  • 暗すぎる

    とにかく暗い話で、読んでいるのがつらくなりました。この作者は比較的好きだったのですがもう読むことはないと思います。

  • 長いだけ

    読売新聞で紹介されていてので期待して読みましたが、我々夫婦にはともに不評でした。なにが言いたいのか、また読後感も悪く、個人的にはお勧めしたくないです。

  • 中田トン吉

    救いのない暗いお話ですが、一気に読まされるのはやはり著者の筆力あってです。

  • ローリング・ストーン

    転がる石には苔も生えない、ということわざがあります。 作品を読みながら、その言葉を思い浮かべていました。 いい意味での使い方と否定的な使い方があるそうで、 イギリスでは「職業や住まいを転々とする人は成功できない」という意味で使われるそうです。 そしてもうひとつ、性根とでもいうのでしょうか、性向とでもいうのでしょうか、 人間の本性とは何か、について考え、怖れを抱きました。 決して、偏見でも差別でもないのですが、 その人が本来持っている性質で、あるていど人生は決まっていくような気がします。 自分ではまともだと思っていても、 もし性向に若干の問題があり、仕事や家庭、また人間関係でつまずいてしまったら、 坂を転がるごとく、あれよあれよという間に犯罪に手を染め、人を殺めることもありえます。 作品を読みながら、社会と反社会のあいだは紙一重であり、 ぎりぎりのところで私たちは生きていることを痛感します。 辻原登さんはここでも人間の地下を深く深く掘り当て 巧みな文体を駆使し、見事な世界観を構築しました。

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