作品情報
右と左を確かめるように、言葉が世界の見え方を変えていく。
『左右の安全』は、日本語で詩作する著者の感覚を生かし、ふだん見過ごす言葉や習慣を新鮮な角度から照らす。軽やかな語りの奥に、社会や平和への問いが潜んでいる。
レビュー要約
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詩集として、題材の選び方と表現の密度が評価されている。読者には背景や形式への集中を求める一方、短い作品の中に残る余韻が強い。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2007-10-05
- ページ数
- 128ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784087748826
- ISBN-10
- 4087748820
- 価格
- 156 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
日本語は楽しい! 雑誌、ラジオ、エッセイ集などで活躍の詩人アーサー・ビナードによる詩集。自転車にまたがり、ありふれた日常の、ありふれない一瞬を切り取った、40編の都市のスケッチ。 第8回 山本健吉文学賞 詩部門 受賞作。
レビュー
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自分で熟成させたことも忘れて
ほとんどすべての詩が、日常生活での実体験や過去の思い出を題材にしたものだ。 フィクションの要素はほとんどない。旅に出たり、珍しい体験をするわけでもない。 改行や比喩も、思っていることが伝わりやすいように意図されて、必要に応じて用いられてるといった感じで、無理や無駄がない。 それでいて、独特の雰囲気があって、ウイットに富んだユーモアが感じられる。 比喩やイメージが強烈なラディカルな詩も良いけど、こういう、気持ちがゆったりするような詩も良いなと思う。 一番目にある「手紙」という詩は、祖母からの手紙の文面が、だんだん短くなっているという話。 二番目の「動物園が閉まるまで」は、アメ横を通って動物園に行ってゾウを見る話。 三番目の「草」は、老人が草の背丈を見て、今年の積雪量を予想するという話。 四番目の「グレードーム」の書き出しを引用させてもらうと、 古い四階建て鉄骨アパートの六畳間を、来日したばかりの ぼくが借りることにしたのは、家賃の安さが決めてだった。 まさか日本一の<おまけ>が付いていたとは―― 入居して数日経ったある朝、なんとなく屋上へのぼり、 池袋の街を眺め回していると、富士山だ! ビルの谷間に、信用金庫と電気屋の看板が左右のフレーム。 日常的なできごとも、アーサー・ビナードさんの頭の中で寝かされて転がされて、熟成されたら、ちょっと面白いものになっていくのだと思う。そうして、自分で熟成させたことも忘れて、それに驚いたり、納得したり、悟ったり、過去の何かに結び付けて悲しんだり、何か行動を起こしたりする。 話がどんなにヘンの方向にいってしまっても、もうビナードさんの人間性を信頼しきってしまっているので、それが自然なことなのだと、すんなり受け入れてしまう。
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普段見過ごしている事象
図書館本 種々な媒体に掲載された詩を収めています。 アーサーさんの感性と日本語、絶妙なバランスで絡み取る日本の日常。 それは人と人との交流(絡み)から生まれてくるのだろう。 彼の詩を読んでいると、この人は本当に正直で純粋な人なのだと思う。 読後がすがすがしい気分になるのも、彼の詩の特徴なのかもしれない。 僕が普段見過ごしている事象も、何気に拾い上げて、日本語で綴ってしまうのだ。 「抗体検査」なんていうドキッとするお題も、彼の心象を上手く映し出している。
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日本語の海を自在に泳ぐ。
日本語を母語としないこのひとは、思考も日本語で行うのでしょうか。 それくらい不自然な言い回しがないのです。 しかもすきな語法もあるみたい。 「○○なのだ/〜だけれど」 というふうな。 表題作は、それは男性ならば必ずいちどは悩むことなのでしょう。 勝手に性的なイメージの薄い人物だと思っていたわたしには、 軽いショックとともに一気に親近感が湧き上がるのを感じました。 でもこの季節、やっぱり『万人のバースデー』を推します。 それは日本人ならではの〈数え〉の計算法。 百年ほど前のジャパン紹介本には 「いまいましい」とさえ書いてある数え年。 それをかれはなるほどと思ってくれたのです。 何月何日に芽を出したかに関係なく 雑木林の木々は同じ風雨の中で年輪を重ねる。ぼくらも 本当はいっしょに歳を取っていく。 ・ ・ ・ ミシガンと東京の間に日付変更線のみならず 国際年齢変更線もあったら面白いと、今でも思うのだ。
関連する文学賞
- 萩原朔太郎賞 第16回(2008年) ・候補