日本の文学賞

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マンゴスチンの恋人

小学館文庫小説賞

マンゴスチンの恋人

遠野りりこ

セクシュアルマイノリティの若者たちが、恋や自己理解に揺れながら他者と向き合う連作的な恋愛小説です。痛みを含む題材を、思春期のまっすぐな感情とともに描きます。

恋愛セクシュアリティ青春

作品情報

マンゴスチンの恋人は、受賞時の評価点を手がかりに作品世界へ入っていける一冊です。

セクシュアルマイノリティの若者たちが、恋や自己理解に揺れながら他者と向き合う連作的な恋愛小説です。痛みを含む題材を、思春期のまっすぐな感情とともに描きます。 小学館から単行本が刊行され、文庫版とコミカライズも確認できる。

レビュー要約

  • 刊行情報と紹介文からは、受賞時に評価された題材の明確さと読み進めやすい構成がうかがえる。人物や状況の輪郭を追いやすい点が読みどころになっている。

書籍情報

出版社
小学館
発売日
2011-08-29
ページ数
258ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784093863087
ISBN-10
4093863083
価格
27 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

薄っぺらな好きなら、こんなに心は痛まない 高校2年生の季里子は幼い頃のトラウマが原因でいまだ恋を知らず悩んでいた。クラスメイトの勇司から繰り返し告白されてもその気になれなかったが、ある日出会った人妻・笙子に心を動かされ、肌を重ねるようになる。季里子と同じクラスの実森は、学校一の美少女。恋人の女癖の悪さにウンザリしていたところに、存在感の薄いオタクの雪村から体の変化についての悩みを打ち明けられる。彼の悩みを聞きながら、実森は雪村の人柄に信頼を寄せていく。実森の友人・葵は、援交相手から脅迫され、追いつめられていた。謎のクラスメイト・魚住の弱みを握っていた葵は、魚住を脅して協力を仰ごうとするが、魚住から逆に脅され、ある計画の協力者になることを要求される。生物教師の梢は同性愛者であることをカミングアウトするべきか悩んでいた。受け持ちの女生徒・季里子がつけていたアクセサリーを見て、梢はそれがかつて自分の元を去って行った恋人が作ったものだと直感し、彼女に会いに行く……。 多感な青春期に心は揺れ傷つきながらも、人を好きにならずにいられないセクシャルマイノリティの男女のそれぞれの恋を描いた、第12回小学館文庫小説賞受賞作。 【編集担当からのおすすめ情報】 本書では『坂道のアポロン』などで人気の漫画家・小玉ユキさんが、初めて文芸書の装画を手掛けます。

レビュー

  • これから追いかけたい作家

    【マンゴスチンの恋人】 幼いころの経験が原因で男性が怖くなっていた季里子。友達がしてるような恋なんて私は一生できないかもしれない...。以前、一カ月だけ付き合ったクラスメートの山本は季里子のことが諦めきれず、気持ちを伝え続けてくるが季里子は拒絶するばかり。というのも、いつものように団地に続く商店街を通っていると、ある女性と出会った。ビーズアクセサリーの店の開店準備をしているというこの女性、笙子に季里子は恋をしてしまう。お店の開店準備を手伝ったり、笙子の部屋で体を重ねるうちに自分の思いは高まっていく。しかし、オープンした店に行ってみると、そこに笙子の姿はなかった――。人妻に恋心を抱く女子とそんな彼女をひたむきに追いかける男子。甘酸っぱい物語。 【テンナンショウの告白】 瀬尾実森の視点。 芸能事務所からスカウトがくるほど容姿端麗な実森。その見た目のかわいさから「姫」などと呼ばれているが、本人はそう呼ばれるのを好んでいない。言葉づかいは荒いし、男勝りの女子だ。そんな実森がある日、衛生委員の仕事を終えて下校しようとしているとき、クラスの友達が自分の陰口を言っているのを耳にする。彼女は偶然傍を通りかかった同じく衛生委員の地味で見た目オタクの雪村の手を引き、その場を後にする。なぜ雪村の腕を掴んだのかと自分の行動を訝っていたが、「避難場所」として入った喫茶店で雪村から悩み事を打ち明けられる。「胸が大きくなってきた」と言う。厄介なことに巻き込まれたなと思う実森だったが、好きなアーティストが一緒だと知ると、それまでの雪村に対する見方が変わる。雪村と接するうちに自分が今まで言えなかった素直な本音が言えるようになる。 【ブラックサレナの守人】 実森の(一応)友人の一人である葵の視点。 別にブサイクというわけではないが(本人の言葉から推測すると、かわいいグループに属するのだろう)、実森と友達になってしまったがために、彼女と一緒にいると自分が劣っているのがわかる。その足りない部分を補うにはお金が必要だった。それゆえに葵は援助交際をバイト感覚でしていた。しかしあるとき、鈴木という男性に写真をばらまかれたくなかったら30万用意しろと脅される。そこで彼女は学校に来ても寝てばかりいる魚住を空き教室に呼び出し、彼が女性と一緒にラブホテルから出てくるところが写っている写真を武器に問題解決に協力してくれるよう脅すが、逆に脅される羽目になる。「一つだけ何でも言うことをきく」ことを条件に協力してもらえることになるが、その条件とは、「一日だけ彼女のフリをすること」。果たしてその理由は?叶わぬ恋に胸が痛くなる。 【ヒガンバナの記憶】 季里子たちが通う高校の生物教師、板東の視点。 季里子がつけていたブレスレットを見たことがきっかけで元恋人の笙子が近くにいることを察し、店の方へ出向くことを決心する。マジョリティの道を進むことを決めた笙子とマイノリティのグループで生きることを決めた板東。 本書はセクシュアルマイノリティをテーマに扱っている。4編とも切なくて愛おしい恋模様を描いているが、「マイノリティであることを恐れるな!」というメッセージを僕は受け取った。人物描写がしっかりしているので(少なくとも僕はそう思う)、共感できる登場人物が一人、二人いるのではないだろうか。これはオススメしたい一冊。

  • 現実は痛い。痛いのが現実。

    こういう少数派の人たちが多数派主義の社会に潰されそうになりながら今日も生きているんだな。 つい他人事になりがちな現実に、ふいに入り込んでしまったような気分になりました。 語り部である4人の身体の中に入って実際に恋愛を体感しているかのような胸の痛み、涙。 それでも好きにならずにはいられない。前に進んでいかなければならない。 救われたのは、彼らは決して独りではなかったこと。 そばにいてくれるのが男でも女でも、どちらでもなくても、誰かが一緒にいてくれれば次の一歩を踏み出せる。 人は案外、植物よりもシンプルな生き物です。 彼らの幸せな瞬間が、少しでも多く生まれることを願います。

  • さらっと読めるが深いテーマ

    4つのままならない恋の物語。さまざまな人のそれぞれの恋を、繊細に描いています。 軽やかな文体でさらっと読めますが、セクシャルマイノリティは、現代社会で重要なテーマの一つでもあると思います。 短編のオムニバスなのですが、テーマがテーマだけに、 個人的にはそれぞれの物語をもっと深く突っ込んでそれぞれ長編として読みたい、という気持ちはぬぐえず、四つ星にしました。

  • せつなさ大幅増で再降臨

    りりこさんの小説をずっと待っていた読者です。伏線の張り方がまるで推理小説のような終いのカタルシスを持つ恋愛小説を引っさげて,遠野りりこの堂々の復活です。 ばんざーい。 とある共学の公立高校周辺での4編の恋の物語なのですが,それぞれの話にそれぞれセクシャルマイノリティの事象が絡んでいます。でも,そういった話は苦手な人にもすっと受け入れやすい,切なさの普遍性がとてもすばらしい本作です。 ネタバレしたくないので,これ以上は書きません。 ただ,読後,なんだか甘いと酸っぱいが心から消えず,わたくし年齢が今の半分だった頃の初恋などを久々に掌にのせて転がして遊んでおりました。

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