作品情報
アメリカン・スクール見学の一日が、敗戦後の日本人教師たちの不安と滑稽さをあぶり出す。
小島信夫の芥川賞受賞作で、NDL OPACでは『文藝春秋』掲載作、1954年のみすず書房版256ページの単行本、1955年版などが確認できる。新潮社公式ページでは新潮文庫『アメリカン・スクール』が、表題作のほか「小銃」「汽車の中」など全八編を収録する初期短編集として紹介され、ISBN 9784101145013が確認できる。原刊のみすず書房版はISBN導入前のため、現在参照しやすい新潮文庫版の識別子を採用した。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 1967-06-27
- ページ数
- 400ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-13
- 9784101145013
- ISBN-10
- 4101145016
- 価格
- 825 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
文壇を惑乱し、陶酔させた異才。その出発点。 芥川賞受賞の表題作を含む初期短編集。 アメリカン・スクールの見学に訪れた日本人英語教師たちの不条理で滑稽な体験を通して、終戦後の日米関係を鋭利に諷刺する、芥川賞受賞の表題作のほか、若き兵士の揺れ動く心情を鮮烈に抉り取った文壇デビュー作「小銃」や、ユーモアと不安が共存する執拗なドタバタ劇「汽車の中」など全八編を収録。 一見無造作な文体から底知れぬ闇を感じさせる、特異な魅力を放つ鬼才の初期作品集。 【目次】 汽車の中 燕京大学部隊 小銃 星 微笑 アメリカン・スクール 馬 鬼 解説:江藤淳/保坂和志 本書「解説」より 注目すべきことは、小島氏の(主題としている)「アメリカ」が、「近代」というものをすでになにかのかたちで体験したことがあり、人間には自律した内面があり得ることを識(し)った日本人のとらえた「アメリカ」ではなく、いわば「近代」という仲介者なしに土俗がそのままとらえた「アメリカ」だということである。このような「アメリカ」は、私の知るかぎりでは大江健三郎氏の作品にしか登場しない。そして小島氏と大江氏との根本的な相違は、大江氏にとっての「アメリカ」が明らかになにかを解放したものととらえられているのに対し、小島氏のそれがもっとも深い敗北をもたらした圧力――しかしつながりようのない圧力としてとらえられている点にあるものと思われる。 ――江藤淳(文芸評論家) 小島信夫 (1915-2006) 岐阜県生れ。東京大学英文学科卒。1954(昭和29)年「アメリカン・スクール」で芥川賞、1965年『抱擁家族』で谷崎潤一郎賞、1972年『私の作家評伝』で芸術選奨文部大臣賞、1981年『私の作家遍歴』で日本文学大賞、1982年『別れる理由』で野間文芸賞、1997(平成9)年『うるわしき日々』で読売文学賞。その他の著書に『各務原・名古屋・国立』、保坂和志との共著『小説修行』ほか多数。2006年遺作『残光』を発表後、肺炎のため死去。
レビュー
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普通の人の捉えたアメリカ
本書に掲載された「アメリカン・スクール」を読みたくて購入した。本書には表題の「アメリカン・スクール」の他7編の小説が収められたいる。その中でも「アメリカン・スクール」は、期待通りであった。本書の解説で江藤淳は「近代という仲介者なしに土俗がそのまま捉えたアメリカ」だといっているが、これは普通の人が捉えたアメリカと言い換える事ができるだろう。
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日本文学史上もっとも奇妙な小噺
とにかく「微笑」と「馬」を読んでください。こんなけったいな話はないですよ。なんでこんなこと書いたんですか、小島さん、最高じゃないですか。
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飾りのないピュアな文体で突き刺さる表現がぶっ飛んでる
SNSで誰かが褒めてたのを見て読みました。 とんでもない作家だと思いました。 センテンスごとに、突拍子もないところを突いてくる「言葉運び」に魅せられました。 こんな卓越した文章を書ける作家がいたことに今更ながら新鮮な驚きを受けました。 終戦まもない時代が舞台で、語彙表現の古臭さはあります。しかし、人がもつ感情の機微、醜さ、卑小さの発見があり、作者の感性の鋭さには時代を超えた、古さを感じさせない部分が確かにあります。 この本に出会えて良かったです。 (個人的には安部公房を洗練させて淡白にした作風だと感じました。安部公房のようなネチネチした理屈っぽさがなく、とりわけ収録短編の『馬』は実にカフカ的不条理観が漂います。安倍の先駆者的な前衛作家ともとれました。)
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ユーモアのあるお話
特徴的な文体で初めは少し読みにくく、ひどく疲れました。 しかし次第に慣れてくるにつれてグイグイと文章に惹きこまれていきます。 初めて読んだときは表題作の「アメリカン・スクール」も良かったですが、「微笑」が特に好きでした。 読み終わったときはそれほど好きな作家ではないと思っていたのですが、時間が経ってから なぜかこの作家さんの描く不思議なグロテスクさのあるユーモア溢れる世界が気になって仕方なくなりました。 さらっと読んだはずの「汽車の中」の奇妙な雰囲気や映像が頭から離れず、 もう一度その文体を味わいたくなってくる魅力的な作家さんです。
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独特のテンポと空気。
いずれの短編も、戦時中もしくは戦後を舞台としているので、陰鬱、かつ当時の日本人の心の卑しさのようなものが生々しく描かれていて、正直読みごごちは良くない。戦争に負けるということは、こんなにも人の内側まで貧しくしてしまうものかと思わされる。文章には独特のテンポがあり、なんとも言えない魅力があるのだが。この人が明るいテーマを書いたものを読んでみたいと思わされた。
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面白い!
小島信夫は、サッカレーのユーモアについて卒論を書いただけあって、小説にもユーモアの精神が溢れている。 戦時中の軍隊生活と、戦後の市民生活を描いた短編がおさめられている。 表題作もさることながら、「星」や「馬」などは非常によく出来ており、読み物としても面白かった。
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戦後すぐの感覚なのでしょうか?
とても繊細な感覚を感じる様々な心理描写の中にも、やはり没入できない時代感覚がどっしり横たわっていると思うので、40代の私には遠い昔の特殊な時代のお話と感じてしまいました。
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小石川高校の英語の恩師の芥川賞作品
今年創立百周年を迎える都立小石川高校(旧府立5中)が戦災後、茗荷谷の仮校舎で授業をしていた頃に書かれた有名な芥川賞受賞小説である。当時私は新制3期生(昭和26年卒)として熱心に英語を教えて頂いた。昭和20年代の米軍占領初期に日本の英語教師が抱いた文明の衝撃を良く描いている。ことに、アメリカンスクールで初めて耳にした若い女性の英語を「小川のせせらぎ」と表現してその感動を表している。