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撃てない警官 (新潮文庫)

日本推理作家協会賞

撃てない警官 (新潮文庫)

安東能明

安東能明の警察小説短編。組織の規律と現場の判断がぶつかる警察の内側を舞台に、管理と監督の責任、部下を抱える者の孤独を描く。短編集『撃てない警官』に収録され、柴崎令司という警察官の屈折した再出発を形づくる一編。

警察小説組織責任左遷現場捜査職業倫理

作品情報

警察組織の管理責任と現場の痛みが、静かにぶつかり合う短編。

『撃てない警官』は、本庁から綾瀬署へ左遷された警部・柴崎令司を中心にした連作短編集。「随監」はその中で、警察官としての責任と組織の論理が鋭く問われる一編である。現場経験に乏しい主人公が事件に触れ、管理職としての自意識を揺さぶられていく。

レビュー要約

  • 緻密な取材に基づく警察組織の描写と、出世意識を抱えた主人公の屈折が読みどころになっている。派手な事件よりも、職務上の判断が人を揺さぶる過程に力がある。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2013-05-27
ページ数
363ページ
言語
日本語
サイズ
14.8 x 10.5 x 2 cm
ISBN-13
9784101301525
ISBN-10
4101301522
価格
693 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

日本推理作家協会賞受賞(収録作「随監」) 本庁から左遷された若き警部は復活を胸に誓った――。 警察小説の新たな旗手・安東能明の出世作 俺はいったん、落ちるところまで落ちる。しかし、やられたことはやり返す。そこから、ふたたび這い上がる。それを肝に銘じておけ。(本文より) 目次 撃てない警官 孤独の帯 第3室12号の囁き 片 識 内通者 随 監 抱かれぬ子 総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。

安東/能明 1956(昭和31)年静岡県生れ。明治大学政経学部卒。浜松市役所勤務の傍ら、1994(平成6)年『死が舞い降りた』で日本推理サスペンス大賞優秀賞を受賞し創作活動に入る。2000年『鬼子母神』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞する。2010年『撃てない警官』所収の「随監」で日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。緻密な取材に裏付けられたサスペンス、警察小説で注目を集めている。『撃てない警官』に続く柴崎警部シリーズに『出署せず』『伴連れ』『広域指定』『総力捜査』がある。

レビュー

  • 面白かったです。

    警務畑一筋で事件捜査現場の経験が乏しい中間管理職の警官が、部下の拳銃自殺の責任を負わされて左遷された所轄署で遭遇する個々の事件を解決しながら過去の復讐を果たすまでの連作形式。警察組織の中での自らの立場・昇進に固執する主人公の姿を通して、犯罪摘発・市民の安全確保と言った警察本来の職務を二の次にして、階級社会での個人のキャリアやマスコミに対する組織防衛を最優先させる警察組織の問題点を巧みに顕している一方で、著者の他作品に見られる様な事件捜査のスピード感や事件背景解明に於ける謎解きの妙味は感じられない。

  • 横山秀夫未満

    ・話し言葉に違和感があります。 ・主人公の心情表現が薄くて、没入感がありません。 ・今まで読んだ警察物で一番面白くありませんでした。

  • 横山秀夫を継ぐもの

    「警察小説」の第一人者横山秀夫は「64(ロクヨン)」以来新作を発表していない。「刑事」ではなく「警務」を中心に、警察の組織や上下関係の 中で悩む警官たちを描く横山は私の最も好きな作家の一人である。「64」は間違いなく傑作であったし、「真相」「深追い」などの短編でも 佳作ばかりだ。同じような作品を書く作家はいないものかと思っていたら、この安東能明を見つけた。そしてこの「撃てない警官」を読み終え て、非常に横山秀夫に近い作風を書く作家であることが確認出来た。この作品でも、一編一編が完成された短編でありながら、綾瀬署に左遷さ れたエリート警察官である柴崎令司を軸に、警察官の不祥事、心意気、悩みなどが連作となっている。現場経験のない柴崎が面する事件は決して 大事件ではない。だが、そこには警察という大組織の中で蠢く男や女たちのどろどろした人間関係を中心に、エリート臭さを隠さない、出世欲の 強い柴崎という警官の人間的成長も描かれていくという手法が取られる。読むにつれて作品の面白さに引き込まれていく。読了後、早速次作で ある「出署せず」を購入した。

  • 現役時代の話を自慢げに吹聴している元警官の知り合いを思い出し、優秀な警官ほど現役時代のことは語らないというのは真実だなと思った次第。

    日本推理作家協会賞受賞作品「随監」収録の短編集である。 いきなりで恐縮だが、主人公の義理の父親が方面本部の本部長まで登り詰めたヒトなので、本書の冒頭、その娘である奥さんが主人公の出世にプレッシャーを掛けてくるくだり、いかにも警察官夫婦にありそうな話だなぁ、と思われて気持ちが暗くなる。 とはいえ、本書のクオリティが良くないと言っているのではない。警察小説として、ミステリーとして、実に緻密に描かれており、概して評価が高いのもうなづける。 印象に残ったのは、例えば、職場でいつも笑顔を振りまいている人物。誰からも愛され定評のあるこうした人物が、実際には人の目の届かないところではどんなことをしているか、生来的にこのような視点で人を捉えようとする人間、それがプロの捜査員ではないかと個人的には思う。あの人は誰からも評判が良くていい人だ、で終わりなのではない。裏表が無いように見えるが本当にそうなのだろうか?と考えるのは単なる天邪鬼ではない。大抵は、裏がある。それが人間。まさかあの人が!という小説で描かれるどんでん返しも、そういうものでしょ、ということである。 また、別の短編では、被害者の女性がそのおとなしそうな印象とは裏腹に、実は金銭的な意図を持って被害事実さえも利用して行動していたということが分かるという展開。ここでもやはり、意外にもあの人がそんなことを?と思わせるが、こういう筋が多いなこの短編集、と感じたのは私だけでしょうか。 さて、こうして振り返ってみると本書、女性の裏の心理がキーになっていることが多いような気がするが、本書のレビューとしては期待されていない内容かも…。 最後にもう一つ。警察官として大いに出世した主人公の義父。彼が再就職した職場の個室には、現役時代を連想させるものは一つもない。優秀な警官ほど、現役時代のことを必ずしも誇らしいとは思わない傾向があるという。この点、いつも現役時代の話を自慢げに吹聴している元警官の知り合いのことを思い出した。「そんなに現役時代が良かったのなら、なんでサツカン辞めたの?」と、元警に対する禁句を言いたくなってしまう。本書を読み、優秀な警官ほど現役時代のことは語らないというのは真実だなと思った次第。

  • 主人公が受け付けられないキャラでした。

    短編物です、刑事モノというよりも、浮かない警官の短編ものなので、大きく展開するような話ではありません。一つ、一つは、確かによくまとまってるけど、何か主人公のキャラがネガティブ感が、ぬぐえず、横山秀夫などの警察もの短編集を望んでた私としては、面白みに欠けました。

  • 組織内の人間関係の話。

    警察小説というと、短絡的に殺人事件の捜査という展開になるのかと思っていました。よく確認しなかった私が悪いのですが、これは、舞台が警察というだけで、そこで働いている人たちの日常的な人間関係のドロドロがメーンです。 現実逃避できるようなファンタジー的な展開もなく、とても身近で現実的過ぎて、這いあがろうと必死だけれど、どうにもうまくいかない主人公の境遇にひどく疲れてしまいました。でもあくまでもこれは個人的な好みの問題です。文章は何気なく読んでいてもすっと入ってきましたし、読みやすく、分かり易い。 なので、そういうのが読みたい方にはぜひおすすめします。

  • 警察小説と企業小説の絶妙な融合

    今や警察小説は小説の人気ジャンルの一つと言えると思いますが、本書はそういった警察小説と、古くは城山三郎〜最近では池井戸潤の著作に代表される企業・経済小説がうまく融合しているところに特徴があるように思います。 警察小説はともすると登場人物を描く際に「この人物は警察官だからこういう言動を取るのだ」という描写になってしまいがちですが、本書は主人公の柴崎令司警部が部下の拳銃自殺という不祥事に巻き込まれるオープニングから始まり、登場人物たちの人間臭い振る舞いや者の考え方と、警察の内幕とはこういうものかと唸らされる丁寧な描写がうまく噛み合って読み応え十分です。

  • 左遷された警官の心情

    自殺した警官の責任を負わされて警視庁総務部から 所轄の警務課に左遷された柴崎。 エリート意識の強い柴崎が、責任を押しつけた 人物のスキャンダルを探るなど、人間臭い展開が面白い。 また捜査経験のない柴崎が、徐々に力をつけていく様子と 副署長の助川との関わりもよかった。

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