作品情報
鬼と修羅、相容れないはずの二人が雪の中から旅を始める。
人々が鬼に殺められた村で、修羅の鳳はただ一人生き残った少女・夜闇と出会う。鬼を斬る役目を持つ彼が、鬼の血をひく少女を守る理由をたどる物語で、若い筆致の荒々しさと後年の作風につながる濃い幻想性が同居している。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2014-12-22
- ページ数
- 276ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 14.8 x 10.5 x 1.7 cm
- ISBN-13
- 9784101800233
- ISBN-10
- 4101800235
- 価格
- 7 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
鬼と修羅、宿命を負う。二人の旅路が始まる──。最強の修羅として生きる男、鳳(おおとり)は、人がみな鬼に殺(あや)められ焦土と化した村を訪れ、一人残された少女夜闇(よや)と出会う。それは鬼の血をひく娘だった。鬼を斬るのが役目の修羅だが、夜闇の手をとり旅に出る。少女の秘めたる力を狙う者どもが行く手を阻むなか、鳳は何故、命を賭して夜闇を守るのか? ──十代で描いた鮮烈なデビュー作。著者の原点となる物語に特別書き下ろし掌編を収録。
レビュー
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新旧の版の比較を含んだレビューです
第3回ファンタジア長編小説大賞準入選にして、応募当時17歳だった著者のデビュー作がここに復刊。1992年刊行の旧版は、現在電子書籍として配信されている( ひとつ火の粉の雪の中 (富士見ファンタジア文庫) )。 舞台は魑魅魍魎が跋扈する、中世日本に似た世界。偉丈夫の鬼斬りが、最強の力を持つ鬼の娘を連れて旅に出る。 著者の代表作である「オーフェン」は、ライトノベルという分野において、やたら理屈に凝りまくった世界設定をウリにすることに先鞭をつけた作品だった。一方、本作は仏教的な世界観に通じるその設定を大仰に開陳することはしない。代わりに、押韻を強く意識したテンポの良い文章や数え歌が、妖しく幻想的な世界の雰囲気を形作っている。アクションシーンは「臓物結界」「闇の春蟲」といった謎のセンスで単純にかっこいいものになっているし、いかなる時も表情を動かさない大男と天真爛漫な童女の、どこかずれた掛け合いも楽しい。そうやって作品世界を堪能する内、読者はいつの間にか、この《苦痛多き世界》との向き合い方という、今も昔も変わらずライトノベル(ジュヴナイル)の本流となっているテーマに向き合うことになる。 ここからは、旧版と今回の版の比較をしていく。 本作に瑕疵があるとするなら、才気が迸りすぎているが故に説明が足りず、何が起こっているのか分からない場面が幾つかあるということだった。応募段階の原稿を読んだ審査員が分かりにくいと評し、勿論旧版を出版するに当たって改稿したらしいが、やはり分かり辛い。今回、細かい言い回しなどが結構な量修正されて、全体としてはより整った文章になっているのだが、根っこの難解な部分、具体的にはある謎かけについてのくだりは変わっていなかった。ただ、ファンとしてはこれを単なる若書きだとは評したくないし、全面的に改稿しなかったということは著者はそれで良しとしたのだろうし、この独特の雰囲気は分かりづらさとトレードオフではあったかもしれないと思うと、悩ましいところだ。 2枚の扉絵を除いて挿絵がないという点は、若菜等によるビジュアルがぴたりとハマった旧版から、むしろ抽象的な印象を強めている(表紙イラストだけなら遠野志帆による今回のそれも負けず劣らず鮮烈で素晴らしい)。 修正部分で最も目につきやすいのは、固有名詞の変更だろう。特に重要な登場人物である「真影」を「ヌイ」、その娘「十六夜」を「リユヌ」としたのは面喰らったが、元々この親子が別の国から渡ってきたという背景を考えると、エキゾチックでなかなか悪くない(ヌイ=フランス語で夜、リユヌ=月という意味らしい) 問題はーーーこれはどちらかというと読者であるわたしの問題という意味だがーーー新たに書き下ろされた掌編だ。特に変わったものではない。むしろありふれた展開だとは言えるだろう。一度完全に終わったあの物語に付け足すとしたら、こうもなろうという気はする。しかし、それにしても、今になってこう来るとは!例えばこれが店舗特典として執筆されたSSなら、ひとつの可能性としてあっさり受け入れたと思うのだがーーー。ある意味、旧版から長い時間を経た読者へのサービスなんだろうか?それとも、何かの問いかけ?蛇足ではないのか?物語からの必然的な要請によるものなのか?今はまだ結論が出せない。しばらくは、悩みながら過ごすことになりそうだ。
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読んでみたくなった
ありがちな設定なんですよ…。今にして思えば。語りは、それはもう、秋田さん全開しています。 私はオーフェンで入った口、 古本屋で探して立ち読みしたけど、買うことは無かった。 でも、もう一度、読みたくなりました。 15年以上たった自分にとって、どういう物語なのか。 小林めぐみさんも好きだったが、今はどうされているのかな。
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意味がわからないけれど文章には惹きこまれる……
新潮から出ている文庫よりの感想です。この方の本を読むのは初めてで、表紙に惹かれて読みましたが…… ファンの方には申し訳ありませんが、私にはまったく、わけがわからなかったです。。。 こちらが理解する前に、どんどん目の前で色々な光景が繰り広げられていってしまって、 個人的な感想としては置いてけぼりをくらったような そんな気分になりました。 造語や、比喩、世界観は独特なものがあり、大変惹きこまれます。 そのあたりは、最近のラノベ(と比べる?のが正しいのかわかりませんが) とは一線を引くという感じがする。ただ、ストーリーがよく、わからない。 いえ、主旨としては、鬼の子を拾った(もちろんその事情は明かされる)男と、その拾われた鬼の娘との旅の物語で、 戦闘シーンがあったり独特な世界に巻き込まれたりとするのですが、説明がそもそも私にとってはわかりづらく、 なんとなく話が進んでいて、なんとなく登場人物たちが最強なのに苦労しまくっている、ということしかわからないのです。 突然意味深な人物が出てきたり、突然昔話が始まったり、いまいち誰にも感情移入できない。。。 とはいえ、そんな状況でも、とりあえず読んでみたいという気持ちにはなる(文章とかの使い方が巧み)ので、そこは、有名な方?だからなのかなという気がする。理屈で説明できるわけではありませんが、文章に重みがあるというか……(わかりづらくてすみません) 表紙から想像していたものとはちょっと違う感じだったので、少し期待外れ?なのもあり、★を3つにしました。 たぶん娘にしても、主人公?たる男にしても最強すぎて人間味からは遠く離れているのが、あまり個人的についていけなかった 理由である気がします。 ただ、世界観や、設定?等はすごく独特で、見たことがないです。予想がつかないという意味では、とても楽しめました。 表紙の絵の担当の方が素敵ですが、それに期待してしまうとちょっと残念に思われる、かもしれません(私だけかもですが)
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とても懐かしい
すばらしく懐かしい作品。私がこれの存在を知ったのはオーフェンの第二部が始まって間もないころのこと。 その新刊を待っていた時の暇つぶしを探していたところ、本屋の片隅で一冊だけひっそりと本棚に収まっているのを見つけたというのが出会いでしたかね。ファンタジア文庫だし、ちょうど待っていたシリーズの著者だったものでさっくり購入。 まー、どっぷりとはまりましたね。何度も読み直した。それが改稿されてまたも出版されるのだから、その喜びだけで☆4つけました。 私は基本的に渡された情報をそのまま受け入れる性格だし、どうしても必要な部分が欠落していても手元にある情報をもとに想像で補完してしまうので、この話が難しいとか意味不明といったことは思わなかったですね。 それはこの本に出会った子供の時からそうなので、たぶん読解力とかとは別の次元でこの本との相性のようなものがあるのかもしれません。おそらく冲方さんの『黒い季節』とかにまったく抵抗がない方なら、すんなり「楽しい!最高!!」って気持ちになれるんじゃないでしょうか??
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理解できなかった数少ない作品
アマゾンのレビューの評価が高かったので読んでみたが、私には意味が分からなかった。ストーリーが理解できなかった。こんな読書体験は恐らく初めてだ。主人公の鳳と夜闇はどのような存在なのか、何を求めているのか、最後まで分からず仕舞いだった。
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詩情たっぷりに紡がれていく圧倒的なイマジネーションにただただ脱帽
第三回富士見ファンタジア長編小説大賞準入選作、およそ十数年ぶりの再読。 鬼の子の少女「夜闇」をめぐる悲しい物語。初読の際の衝撃を思い返しながら読みました。コメディ的な展開はなし、説明は極度に控えて、詩情たっぷりに紡がれていく圧倒的なイマジネーションにただただ脱帽。和風伝奇ファンタジーの大傑作であります。 大学を卒業してからは読書自体からも遠ざかってしまったため同賞は第十回までしか追いかけていませんでしたが、それまでの受賞作・準入選作・佳作の中では本作が一番印象深いですね。なお同賞同回の同じく準入選作はこれまたコメディ描写なしの伝奇歴史小説の傑作『東北呪禁道士』。伝奇小説ファンにとっては至福といえる二作でした。 こうした独特の味わいの作品を受け入れた90年代ライトノベルの懐の広さを思いつつ、しかしながら、がらりと作風を変えた『魔術士オーフェン』シリーズがこの次からスタートしたという事実に業界の深淵を垣間見た気分に。それにしても投稿の時点で十七歳とは、秋田先生天才ですか。
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秋田禎信の原点、日本がその存在を誇るべきファンタジー。
もともとのタイトルは「鬼の話」で、秋田禎信が17歳のときにタイピングの練習のために書いた長編ファンタジー小説。 富士見書房のファンタジー小説の賞に入賞し、改稿されて出版されたもの。 タイトル変更の理由は、元のタイトルが地味すぎるから、っていうことらしい。 「鬼の子」である少女・夜闇(よや)と、「修羅」である大男・鳳(おおとり)が、二人で世界を旅する話。二人が、宿命に従い、宿命に抗い、生きようとする話。和風ダークファンタジー。 この世は《苦痛多き世界》だとする仏教的無常観に通じる暗〜い世界観、結局最初からハッピーエンドなんてありえないというやるせなく悲しい物語。 けれど希望を感じさせるラストは涙もの。 「世界と人間の関わり方」という大きくて根源的なテーマに挑んだ作品。 この世界は苦痛と悲劇に満ちたものとして、その上でその中でいかに生きるかを考えた作品。 ずっと読み継がれてほしい物語です。
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鬼の話
魔術士オーフェンシリーズで知られる秋田禎信のデビュー作です。 オーフェンシリーズにおいて、無謀編はともかくとして、本編のストーリーをきちんと把握している人って何人くらいいるのでしょうか?私はイマイチ把握してません。 本作『ひとつ火の粉の雪の中』もまたオーフェン本編と同じでストーリーがわけわかりません。私だけかと思ったら、編集部の解説にも、筋が意味不明といった内容のことが書かれてありました。 それでもジャパネスク・ファンタジーとして重厚(その中に淡い軽さを含んでいる)で印象的な文章でしっかりと雰囲気を作っています。 話の内容も重いです。人(あるいは鬼)が生きていく姿、生きていくということを、描いている中で作者自身もまた模索していたのでしょう。 17歳の時にこれを書いた作者も、またこの作品を見出し幾度も改稿をさせて完成度の高い秀作へと仕上げた編集部も、両方とも素晴らしいと思いました。後のオーフェンシリーズの成功への伏線となっていましたね。
関連する文学賞
- ファンタジア大賞 第3回(1991年) ・準入選