作品情報
百年近い生の記憶が、未完の森のように広がっていく。
『迷路』『秀吉と利休』に連なる野上彌生子晩年の大きな到達点。知的に生きようとする女性の歩み、家族や社会との関係、長い時間を経た自己認識が、静かな筆致で積み重ねられる。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 1985-11-01
- ページ数
- 513ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784103163039
- ISBN-10
- 4103163038
- 価格
- 3300 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
★★★全体的に良好な状態です。函の背にヤケあります。帯付き(小さなヤブレ有)。本自体はとても綺麗な状態です。第3刷。丁寧な包装で迅速発送します。
レビュー
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ありがとうございました。
大変きれいな商品で有り難かったです。それに敏速なご対応有り難かったです。
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以下、矢川澄子「 恢復期としての性 」より。 Iはもともと野上文学の忠実な読者とはいい難いけれど、それでも『 秀吉と利休 』の世界をあのように透徹した眼で見究めたしたたかな作家根性には、十分信頼してもいたのだった。ただその古今東西にわたる豊かな学殖や、一点非の打ちどころなさそうな処世ぶりにはいささか圧倒される思いで敬遠していたふしがないではない。/そんな大先輩に対して、Iがにわかに親愛の情を覚えるようになったのはつい最近のことで、絶筆となった最後の大作『森』を読んでからである。[…]あたらしい記憶よりも古い記銘の方が後々までのこるのはこの[ジェンダー・バイアスという]分野での常識だ。[…]そのしたたかな生命力に半ば舌打ちしながらも、いっそおもしろいとクールに記す。この知性もまた彼女独特のもので、それがあのようにまったく老化を知らぬ晩年を過させたともいえよう。
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何か惹かれる作品
読み進むにつれて、ひきこまれる作品であり、面白くなる。情熱を感じてきて読んでて熱くなるのは私だけか? 100歳に近野上弥生子が、なにか青春時代の女学生に戻り書いているようだ。 久しぶりの小説を読んだという気持ちだ。
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森に集う乙女たち
野上弥生子が、百歳を前にして書き続けた畢生の大作。文章は、古風ではあっても、基本的に平易。森の中の学園に集まった少女たちの友誼と交情を瑞々しく描写していきます。そこに、キリスト教を度台とした啓蒙主義的教育や時代的背景が差しはさまれ、いかにして野上弥生子的な精神が涵養されたのかが、主人公・加根の目を通して自然に理解される構造になっています。難しいことは考えずとも、非常に良質な少女小説として読めます。とにかく、加根ちゃんが素直な良い子で、かわいいのです。ここには、間違いなくひとつの時代における「幸福な時間」が凝縮されています。そして、その幸福な時間との遭遇は、そのまま幸福な読書体験を約束してくれます。
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明治が舞台の一種のラノべ
明治30年代の少女たちの女学校生活(ハイスクール・ライフ)の描写が現代のライトノベルの乗りに通じる。画家志望の青年を巡る二人の美少女の恋のさや当て等は読んでいて実に面白い。実際、主人公は作者がモデルだそうだし、他の登場人物も誰がモデルであるかはある程度わかる。それにしても、最晩年にこういう作品を書けた作者はすばらしい。是非、完結してほしかった。
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買って良かった。
少し汚れが気になった。
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野上弥生子さんが99歳(満年齢)で著した未完の遺作
野上彌生子氏の遺作『森』は、自伝的要素の強い作品で、この物語(主に前半)の主人公である女学生の菊地加根(かね)が、著者自身の投影である。 1972年(昭和47年)87歳のときから執筆を始め、1985年(昭和60年)3月に急逝する直前まで書き継がれた長編小説。 連載中の1985年(昭和60年)3月30日、完成を間近にして、著者が亡くなってしまった(満99歳)ため、未完の作品である。 この物語の年代は、1900年(明治33年)から日露戦争の始まる前年1903年(明治36年)くらいまでで、 1900年(明治33年)春、九州(※この小説では「大分県」とは書かれず「九州」のみ)の酒造業を営む家の長女として生まれた菊地加根(著者自身がモデル)が、満14歳のときに上京し、東京の“森”にある「日本女学院」(…【明治女学校】がモデル、北豊郡巣鴨の森の中にあった現在の東京都豊島区西巣鴨2丁目)に入学するところから物語は始まる。 キリスト教系の学校だが、自由な校風で、生徒たちの大半が寄宿舎に入っている(但し、加根は少数派の通学生) その森の学園で学ぶ少女たちとその周辺の人々を描く物語である。 本作は、第1章から第15章までおよび、死後に発見された遺稿「終章」(終章の冒頭を欠いた未定稿)から成るが、主人公と思われる菊地加根がまったく登場しない章もある。第5章「春の別れ」は、学園のある森の中に住まう画学生の・篠原健(…荻原守衛(碌山)がモデル)が主人公。そして、後半の第11章「遠い花火」から第15章「春雷」までの5つの章は、加根の同級生である園部はるみが主人公となっている。園部はるみの複雑な家庭事情(出生の秘密)や、東京大学医学生の加部圭助との恋など、おとなしくて“いい子”の加根の話よりも、園部はるみの話の方が正直おもしろい。 ところで、この作品には、教育関係・キリスト教関係・芸術関係などなど様々な著名人が登場するが、実名で登場する人物と、そうでない人物(仮名で登場する人物)とがある。後者のほうが大半である。 また、人物だけでなく、学校名や雑誌名なども仮名となっているものが多い。 実名で書かれているのは、勝海舟(勝安芳)、内村鑑三、星亨、伊庭想太郎(・・・星亨を暗殺)、津田仙など。 一方、仮名で書かれている人物は、 ・山下蕭雨(毎日新聞記者)→木下尚江 ・岡野直巳(日本女学院の第2代目校長)→巌本善治(…女性教育家。明治女学校の第2代目校長、雑誌『女学雑誌』を創刊) ・黒木亮(英語の教師・秋田出身)→青柳有美 ・立松操子(ペンネーム)/岡野直巳の妻・岡野佐緒→若松賤子(本名:村川甲子)…『小公子』の翻訳者 ・篠原健(長野県出身の画学生)→荻原守衛(荻原碌山)…彫刻家 ・嘉治とみ代(舎監・作法と習字の先生)→呉久美(くみ)…呉文聰、呉秀三の姉 ・池田薫(篠原健の恩人、「日本女学院」の卒業生)→相馬黒光 ・池田真(池田薫の夫、篠原健と同郷の資産家)→相馬愛蔵 ・田村哲(日本女学院の創立者・初代校長、元幕臣、岡野直巳を洗礼、勝海舟へ岡野直巳を紹介)→木村熊二…妻の木村鐙子とともに明治女学校を創設、またその後、長野県小諸で小諸義塾を開設。牧師として島崎藤村に洗礼を施し、のちに藤村を小諸義塾の教師に招く ・田村澄子(田村哲の最初の妻)→木村鐙子 ・河村香村(元日本女学院の英語教師)→島崎藤村 ・青木駿一(詩人・河村香村に影響を与える)→北村透谷 ・矢野美子(河本香村の妻・日本女学院の卒業生)→秦冬子 ・鳴海氏(日本女子大学の創立者)→成瀬仁蔵 など。 最初のうちは、野上弥生子さんの独特な文体なのだと思うが、一つの文がやや長く意味が取りにくいところがあることと、「~でなかったとはいえない」とか「~と言えないこともない」といった、「否定の否定」表現が多く使用されているのがやや気になったが、慣れてくると、すらすらと読めるようになり、夢中になって読んでいた。 男女の恋愛の表現が婉曲的で、慎ましやかであるところが、現代小説と違って珍しく感じ、好感を持った。 99歳(満100歳まであと僅か)という年齢で、亡くなる直前まで、この長編小説を手掛けていたことに、驚きを禁じ得ない。 あと少しで完結するというところで、未完のまま終わってしまったのがとても惜しいことだと思ったが、この作品と出会えたことを幸せに思った。
関連する文学賞
- 日本文学大賞 第18回(1986年) ・受賞