日本の文学賞

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きことわ

芥川龍之介賞

きことわ

朝吹真理子

幼い日に親しく過ごした貴子と永遠子が、長い時間を経て再会する物語。夢、記憶、家の気配が溶け合い、時間の層を繊細な文体でたどる。

時間記憶再会

作品情報

きことわは、朝吹真理子の受賞作として刊行形態でも確認できる作品です。

きことわは、新潮社から刊行が確認できる朝吹真理子の作品。受賞歴と書誌情報を合わせて読むことで、同時代の文学賞が評価した題材や語り口を追える。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2011-01-26
ページ数
142ページ
言語
日本語
サイズ
12.7 x 2 x 18.8 cm
ISBN-13
9784103284628
ISBN-10
4103284625
価格
1 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

第144回(平成22年度下半期) 芥川賞受賞

レビュー

  • 言葉に漂う

    かなり知的な作品。言葉の海に漂うような心地よさがある。リアリズムではないので難解ともいえるが、難しいことは考えずに、言葉の響き、形、柔らかさに身を委ねれば、その世界に浸れる。小説が言葉の芸術であることを理解できる。

  • 永遠の今を表現する小説

    冒頭の二行は非常に意味深である。これは単に夜見る夢だけを意味しているのではないだろう。 夢をみる永遠子と夢をみない貴子、対照的な二人の視点から描かれている。何よりも、主人公の名前、とわこは”永遠”な子である。おそらく、作者はこの名前にかなりのこだわりを持っているはず。 少し読みにくい部分がある。それは、改行が少なく書かれている箇所で、所々で出てくる。 我慢して読み進めていけば、なんとか読み切れる。芥川賞作品にしては比較的長い方で、直木賞作品に近い感じもした。 25年ぶりに二人が再開するシーンを読んでいて、私も子供の頃よく遊んだ親戚と、父の葬儀の際、18年ぶりに会ったことを思いだした。まあ、浦島太郎のような感覚であったことを思いだした。 本作の主題とは関係ないが、永遠子の移動中の携帯電話が繋がりにくい描写が、とてもリアルであった。細かい指摘で恐縮だが、とても上手い。プロの作家さんに、表現が上手いとは失礼だと思うが。 さて、文学とは一見関係ない話であるが、時間とは過去→現在→未来へと流れていくと、一般の方は信じている。しかし、アインシュタインの言うように、時間は空間と同じく広がるものである、と言うのが現代物理学の定説である。その意味に置いては、この作品は主人公の中では、過去も現在も未来さえも同居していて、あるのは永遠の今だけなのである。 だからこそ、とわこは”永遠”の子なのだ、と私なりに勝手に解釈してみた。 それにしても、芥川賞は難解で解りにくい。やはり、直木賞の方が読みやすく面白い、ただし、直木賞は長い作品が多く、読み終えるまでに少々、くたびれるのだが。

  • ストーリーについては判断しかねるが、描写力は極めて高い部類。

    風景描写や心象描写に関してはかなりレベルの高い著者であると感じました。 ストーリーについては純文学らしいもので、含められたメッセージを読み取れないと難しいかと思います。 ただ、作家を目指す方には一読し、参考にするべきではないかと思えるほど、描写力に優れていると感じました。

  • 表現力の秀逸さに目を見張る

    「永遠子は夢をみる。貴子は夢をみない。」この書き出しで始まるこの小説 のテーマは、「夢」である。ただし、ここでいう夢とは、寝ているときに 見るただのそれではなく、「昔の記憶」としての夢である。 別荘の管理人の娘であった永遠子は、昔別荘に来ていた貴子とその家族に 招かれ、昔よく一緒に遊んでいた。時間がたって25年後。その別荘がと うとう取り壊されることとなり、解体前の荷物の整理を手伝うため、永遠子 は貴子と再会するに至る。永遠子は一緒に遊んだ昔に想いを馳せ、現在の 自分と過去の自分を交錯させながら、ノスタルジーに浸る・・・という のが粗方のストーリであるが、この現在の自分と過去の自分を交錯させて いく表現力は秀逸だと思う。 ただ、テーマとしては、中国の古典「胡蝶の夢」にある、「胡蝶になった 夢を見たのか?胡蝶が夢を見ているのか?」に似ているのでは無いだろう か。つまり、過去から現在へと時間の流れに応じて人の置かれる環境は 刻々と変わるけれども、全ては「自分」を形作るものであり、どちらかが 幻で、どちらが真というようなことは無い、ということである。 小説の最後で、貴子は「うまれてはじめて夢を」みる。しかし、貴子は「夢 をみたことなどすぐに忘れて」いってしまうという描写がある。 人によって、「夢」の位置付けは違うけれども、誰にとっても「夢」はすぐ 側にあるんだよ。この小説はそう言っている気がした。 既視感のややあるテーマながら、弱冠26歳にしてこの表現力、構想力は すばらしく、さすが芥川賞と唸らされる。評価点星4つ+次回作に期待を こめて星1つ、合計で星5つとしよう。

  • 理解が難しかった

    物語の背景や時間軸、人物の視点の変化が分かりづらい。 何がキーワードで何を伝えたい内容なのか理解し辛かった。 しかし表現についてはしなやかで、人物の心の機微の表し方は勉強になった。 文学の表現に触れるには良い一冊だと思う。

  • こういう本が読みたかった!

    まずは、小説に散りばめられた上等な脇役達が、作者の洗練された感性と希少な経験を感じさせる。 一つ一つの言葉がそーっと、お重箱に菜箸で詰められていくようなほっくりとした繊細さを感じた。 でも、どこかきゃぴきゃぴしてる。なんだかすれてない。 でも玄人ぽい、上質。 おいしい、松花堂弁当のようなお弁当を食べながら夜空の星を見て宇宙に思いを重ねていくようだった。 または、畳にねそべってのんびりうたたねしながら空に流れる雲を見ている。 私にとっては滋養たっぷりの娯楽小説となった。心に潤いが欲しい時、感性が疲れている時にこれから何度も開く本になるはず! 非現実的な空間の中にいるようで、本を閉じたあと現実に戻る時すーっと滑り出しが良さそうなのもgood!

  • 合う合わない

    芥川賞受賞作。 純文学という感じです。 合う人と合わない人で別れると思います。 私は、同時に受賞した苦役列車の方が好きです。 このレビューが良いなと思った方は、役に立ったボタンをクリックお願いします。

  • 作中に出てきたレコードのタイトルに驚いた

    ここ数年、芥川賞作品は大体購入して読んでいる。芥川賞作品に共通する感想は変な作品ばっかだなというのと、こんなの国語の教科書に載せられないだろというもの。近年の芥川賞作品としては、まともな(?)作品。国語の教科書に安心して載せられるでしょう(笑) 前半は情景が思い浮かびにくく、なおかつ文章も同じ「思う」という言葉でも、漢字表記だったり、ひらがな表記だったりしてとても読みにくい。 よくこんな文章で小説家でいられて立派な賞をとることができたな、と思った。まぁ、プロ作家としてはまだ年を経てないようだからこんなもんなのか?違うよなぁ? 後半は前述のようなところは見られずよかった。 他には、作中に出てくるレコードのタイトルから、テクノや現代音楽を聴く人なのかもと思った。小説を読んでて「マニュエル・ゴッチング/E2-E4」、「スティーヴ・ライヒ/18人の音楽家のための音楽」を目にするとは(作中ではアルバム名しか出てこない)。驚愕したw これ、読んだ人の中で判る人ってとっても少ないと思う。

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