日本の文学賞

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指の骨

新潮新人賞

指の骨

高橋弘希

太平洋戦争中の南方戦線で負傷した一等兵が、臨時野戦病院に収容される。敵味方の区別が崩れた極限状況のなか、病院からの退避と戦場の狂気が静かに迫る新潮新人賞受賞作。

戦争南方戦線病院記憶極限状況一人称

作品情報

これは戦争なのだ、呟きながら歩いた。

第46回新潮新人賞受賞作。太平洋戦争下の南方戦線を舞台に、戦場の狂気と死の感触を描く。2015年刊単行本、2017年刊文庫の双方がある。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2015-01-30
ページ数
122ページ
言語
日本語
サイズ
13.7 x 1.5 x 19.7 cm
ISBN-13
9784103370710
ISBN-10
4103370718
価格
2230 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

死を覚悟したのではなく、死を忘れた。そういう腹の決め方もあるのだ。果たしてこれは戦争だろうか。我々は誰と戦うでもなく、一人、また一人と倒れ、朽ちていく。これは戦争なのだ、呟きながら歩いた。これも戦争なのだ。しかしいくら呟いてみても、その言葉は私に沁みてこなかった──。34歳の新鋭が戦争を描き、全選考委員絶賛で決まった新潮新人賞受賞作にして芥川賞候補作となった話題作。

レビュー

  • 戦争文学の傑作。純文学好きなら、ぜひ読んでほしい。

    なかなかすごい。文章がいい。

  • 戦争体験もなく空想でここまで良く書いたと思います。

    野戦病院の臭いが伝わらない。汚物や膿のにおい、死臭も充満していたのでは? 所詮、観念の作品。

  • リアリティがある

    びっくりするくらいリアリティがある。一気読みしてしまいました。

  • 「死に向かう はかなく切ない想い」

    著者は、乾いた感情で「死」を追いかけていく。 「内地から何千キロも離れた密林の奥地の穴で少しずつ骨になっていく、日本兵の死体」。 戦争を知らない著者の大きな想像のもと、兵士たちの「死」への道行きが静謐な筆致で描写 されている。戦闘で死んでいった兵士たち、野戦病院で、無残な死を余儀なくされた兵士た ち。著者は、後者を中心に描いている。例えば、不慮の事故、マラリヤ熱、凍死、電気芋や 毒草で中毒死、蔦植物に絡まれたりなど、さまざまな死がある。 日本軍の敗戦が濃い夏、いや、もう終戦になっていたかもしれない夏。 赤道のやや下に浮かぶ巨大な島。補給路を断たれ、食料、薬品、武器もない兵士たちが生き 延びようと逃げる「黄色い街道」は冥府への道であろうか。もう、カーチスもロッキードも グラマンも飛来してこない。黄色い道沿いにある大きな欅に似た樹木の下に腰を降ろして、 自分に訪れようとしている死を待ちながら、戦友たちとその死、本土での思い出を語り継い でいく「私」。自分を含め戦友たちへの鎮魂歌、本土に残された家族や親族への遺言書にも 読める。 「私」は、「ジョート―」と呼ばれている二十一歳。「個人名」なのか、「上等兵」の意 味なのか分からない。背嚢のアルマイトの弁当箱には、同僚であった真田の親指の「指の骨」 が入っている。死に慣れた冷たい人間の衛生兵が、ニンジンでも切るようにして、死体から 「ゴトリ」と切り落とす。本土に無事帰還できれば、届けられるのだが・・・・・。 語り手の「私」は、黄色い街道筋の樹木の下から一歩も動いていない。定点描写である。 著者の巧みな構成力を発揮している。作品の冒頭部分から結末部まで四個所「黄色い街道」 が表現されている。そこでの描写は、彼の心の奥底、仲間兵士たちの思い出(本土に残して いる妻子、願望、ささやかな希望など)である。語り継ぐ内容は重層的であるが、時間は 半日強であろうか。樹の根元に座り込んでからの時間の流れは、太陽の動き、空の様子、葉 陰からの陽だまりなど、自然の変化で、それとなく読者に理解させている。そして、「私」 が、「そこにある脚が確かに自分の脚なのだと実感する」、「果たしてこれは戦争なのだろ うか」「同じ景色ばかりが続く・・・・」と、次第に「狂気」から「死」に追い込まれていく 精神状態が伝わってくる。 また、「私」の「不安感」「空虚さ」「繊細さ」など、身体と精神のアンバランスな心理 状態を、「痺れ」「体内の水の音」「細い線」などの言葉に象徴させている。 「ロッキードの轟音」や伝令兵が軍医に手渡した「書簡」が「痺れ」の原因である。「書簡」 は吉報なのか、そうではないかもしれない。「体内の水の音」は「心身の空洞感」につながる 感覚。原因は、仲間である清水(鉛筆一本で描く絵がうまかった)が死に、分隊長や幼馴染が 次々と死んでいくこと。「細い線」は、心の琴線であろう。指を切断する「ゴトリ」という音 に敏感に反応し、真田一等兵の、ほほえましい夫婦愛を想像して心が震える。盆祭りで祖父に 買ってもらった「金魚柄の風鈴」のひびきにつながっていく、せつなく繊細な表現である。 心にしみる個性的な表現も随所にみられる。 例えば、幼馴染の藤木が淡谷のり子の唄を歌うが、彼女の声を「高音で音程が揺れるとき 白詰草の周りを飛び交う紋白蝶のような響き」と表現している。また、「夕顔の薄桃色の花 弁が唄うように揺れていた。雄花と雌花があるのかもしれない。雄花は外側へ捲かれるよう に花弁を垂らしていたが、雌花はちり紙をくしゅっと丸めた形でこじんまりと咲いていた」。 戦場で、つかの間の安堵感に包まれた視点であるが、美しく、ほほえましい描写である。 芥川賞を受賞していてもおかしくない作品。再読で新たな感動をよみがえらせる作品である。

  • 肉体の滅び

    「送り火」を読んでからこちらを読みました。 この作家は肉体の滅びに強い関心を持っているなとつくづく感じました。 終わり方はほとんど「送り火」と同じでした。 しかし、この世代がどのようにしたら小説としての嘘がない 戦場の小説を書けるのか不思議でなりません。 文章は読みやすく、構成も簡素でありがたいです。 次は「スイミングスクール」を読んでみようと思います。

  • 良かった

    同世代の作家が書いているのと、戦争小説が読みたくなったので、読んでみました。文章も表現も分かり易く、情景が伝わってきました。他の作品も読んでみたくなりました。

  • 驚愕はしません

    商品の説明内容(「BOOK」データベースより)以下、 死を覚悟したのではなく、死を忘れた。そういう腹の決め方もあるのだ。 果たしてこれは戦争だろうか。 我々は誰と戦うでもなく、一人、また一人と倒れ、朽ちていく。 これは戦争なのだ、呟きながら歩いた。 これも戦争なのだ。しかしいくら呟いてみても、その言葉は私に沁みてこなかった──。 34歳の新鋭が戦争を描き、全選考委員絶賛で決まった新潮新人賞受賞作にして芥川賞候補作となった話題作。 太平洋戦争中、激戦地となった南洋の島で、野戦病院に収容された若き兵士は何を見たのか。圧倒的リアリティで選考委員を驚愕させた第46回新潮新人賞受賞の新世紀戦争文学。 * 良いも悪いも思わないから普通に☆やね。 圧倒的リアリティは感じなかった。 乾いてる感じだったかな。 どこで終わるんやろうな~っとだらだら読んでたな・・ もっと短編やったら良かったかもしれん。

  • 得がたい秀作

    若い方たちの同意を得られると思える秀作です。この困難なテーマに柔らかく取り組まれた作者に感謝します。

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