作品情報
痴漢加害者の心理を容赦なく晒す表題作と、介護現場の暴力を克明に刻む受賞作を収録。
第51回新潮新人賞受賞作。後の短篇集『狭間の者たちへ』に収録され、加害と介護をめぐる不穏な感覚を支える代表作のひとつとして読まれている。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2023-06-29
- ページ数
- 256ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 19.1 x 13 x 2 cm
- ISBN-13
- 9784103551119
- ISBN-10
- 4103551119
- 価格
- 1980 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
高瀬隼子氏推薦! 痴漢加害と介護現場のリアルを抉り出すブルドーザー小説集 保険営業所に勤める藤原は、通勤電車で見かける少女に日々「元気」をもらっていた。ある日、同じ少女を盗撮する男との奇妙な交流が始まりーー。痴漢加害者の心理を容赦なく晒す表題作と、介護現場の暴力を克明に刻む新潮新人賞受賞作を収録。愚かさから目を背けたいのに一文字ごとに飲み込まれる、弩級の小説体験!
レビュー
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日常に潜む闇
"これが終わったら、いつものサイトを見ようと思う。早く、早くと手に力を入れていくと白黒の写真が目の前に浮かび上がった。いつから、と興毅は思う。いつからこんなにも、と冷え出した指先を太ももの上で擦った"2023年発表の本書は新潮新人賞受賞作を含む闇深さと向き合わされる一冊。 個人的には著者のプロフィールに興味を持って手に取りました。 さて、そんな本書は2025年、「橘の家」で第38回三島由紀夫賞を受賞したことでも知られる著者デビュー作を含む一冊で。本書では表題作である、保健営業所に勤めるも、妻と間に不満を抱える藤原が癒しを求めるように通勤電車で見かける少女の匂いを嗅ぐ『狭間の者たちへ』。介護士として過酷な労働をこなす興毅が老人"89"の発言をきっかけに満洲での兵士たちの蛮行をとらえた写真にWEB上で魅了され、依存していくデビュー作『尾を喰う蛇』の二作品が収録されているわけですが。 特に『狭間の者たちへ』は、いわゆる痴漢加害者側の視点、心理を描いているのですが。痴漢行為自体はもちろん許容されるものではなくも、藤原の何とも逃げ場のない感じが息苦しかった。 また『尾を喰う蛇』も介護現場の過酷さ、ブラックさを感じつつ。興毅が感じる事、することがどんどん不穏な方にむかっていくのがもどかしかった。 日常を過ごす人に潜む闇。に向き合いたい方にオススメ。
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読み手の胸に迫る。
読み手の胸を刺さってくる一冊。二作とも素晴らしい。
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新品のようでした。
早く発送して頂きお品も大変綺麗でした。 ありがとうございました。
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「尾を喰う蛇」は新人賞受賞作とは思えない力強い作品でした。文字通りぐいぐいひこまれました。併載の「狭間の者たちへ」も質の高いいい作品でした。
たまたま最近になって2019年度の新潮新人賞受賞の作者のインタビュー記事を読み、興味をもって手に取ったのが、受賞作と最新作の2編が収録されたこの一冊です。 2作品ともに女性作家が描く男性主人公ですが、作者は男のことがわかっていないと思うこともなく、逆にかなり男性の心理や心の葛藤をリアルに描いていると感じました。多少ステレオタイプ的になっているところはご愛敬ですが、セックス、性に関する面ではやはり類型的過ぎると感じる点が2作ともにありました。 それでも、途中で興ざめすることなく、ぐいぐいと引き込んでいく筆力は新人とは思えない力量だと思います。 私は2作とも、面白さを感じつついろいろと考えさせられながら読ませてもらいました。 作者のインタビューでは、大阪文学学校に通っていたとのことで、もちろん本人の実力があってのことでしょうが、こんな作品を書けるように指導してもらえるなら私も通ってみようかと思わされました。 まずは「狭間の者たちへ」 主人公は俗にいううだつの上がらない四十代の中年男性。作者は女性でありながら、かなり男性が納得せざるを得ない男の生き辛さ、だらしなさ、情けなさ、どうしようもなさをこれでもかと描写し、男性読者である私も認めざるを得ない男のグダグダを突きつけられます。最初のうちは男ってそんなところがあるんだよね、と、余裕をもって楽しく読はじめ、共感もし、いや、いくら何でもここまでひどい男性はいないだろうと思ったり、実際に行動に移さなかったり、ここまで極端な行動をしないだけで、心の中では自分も含めて似たり寄ったりのところがあるかもしれないと思ったり、読み進むにつれて男性として追い込まれるような作品でした。 断っておきますが、面白いと思ったり、納得したり、共感することと、私自身も同じような感覚を持っているかというのはまったく別次元です。特に主人公の電車でのホームで見る女子高生に対する歪んだ思いについては。 と、断っておかないと、このレビュアーも同じ穴の狢だと思われそうなほど、この作品は男にとって危険な作品です。 ただ、ここまでは素直に認めるものの、ある部分ではかなり女性の独断と偏見もあると感じたりもしました。 特に、主人公の妻との関係については、女性は男性をこんな風にしか見られないなのだろうか、男の悲哀や辛さはあっさりと切り捨てられるしかないのかという思いも過りました。男性だって女性に対して思うことはいっぱいあるんだぞと、主人公を応援してやりたい気持ちにもなります。 ただ、最近のご時世では、男性中心の社会が完全に崩壊し、今まで本当に長い間虐げられ我慢してきた女性たちが今こそ声を上げ始めているのだから、主人公の妻の言うことに耳を傾け共感する男性が増えなければならないとも思います。 【ここからはネタバレです】 最後に、主人公は身から出た錆というか、男性からするとちょっと濡れ衣っぽいとしか思えないのですが、自分の挙動不審な態度、きっと目つきや振る舞い、顔の動かし方などで、その前からいつ何をするかわからない変態として女子高生にマークされていたために女子高生が自分の身を守るために友だちの協力を得て、主人公を痴漢だと告発するところで終わってしまうのですが、このシーンを読んだとき、これから何年か先には「目つきがいやらしい」「じっと私を見つめるのがキモイ、怖い」という理由で少なくない男性が痴漢として逮捕されるようになるのだろうと、少し怖くなりました(笑) 目つきだけで、セクハラ、そして公然わいせつと言われるようになった社会って女性にとっては快適なのでしょうが、果たして、という思いも拭えません。 私はとうにその年代を通り過ぎましたが、家族を支え、ローンと生活費に追われリストラや減給に怯えて生活する中年男性や、正社員に馴れず非正規で働きながら、先の保証もなく、彼女もなく独身で生きる所謂「非モテ」の中高年男性は、この先どうやって生きていくのだろうという思いも過りました。 男性にとってシビアな作品のせいか、レビューもどうもうまくまとまりません。 「尾を喰う蛇」 これは2019年の新潮新人賞受賞作。新人賞の作品とは思えないほど、しっかりとして読者を惹きつける作品でした。 主人公は病院に働く30代独身の男性ですが、仕事の内容は入院患者の介助なので、内容は介護施設で働いているイメージです。この描写が、作者も介護施設か病院で働いていたのではないかと思うぐらリアルで読者を惹きつけます。何人かの入院患者のキャラクターや職場の主任やパート、特に女性たちの描写も、「ああ、こんな人いっぱいいるよね」と共感させられました。それほど人物描写がリアルで読者を引き込みます。 主人公の付き合っていた女性との関係や、いろいろとある家族との関係も、今はそういうことがあるだろうと思わせるリアルさでした。 あらすじには戦争写真とありますが、これはあくまでも主人公の内面を象徴するためのものでしょう。 同じ男性として、主人公の苦悩には共感できます。 クライマックスでは、主人公の精神が半ば破綻して、最後はどうなるのかと思わせるのですが、ラストはクライマックスから一転してとても爽やかさを感じるラストで、読了後、気持ちが清々しくなりました。 この作者すごいですね。 いい作品を読ませてもらいました。感謝です。
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後味悪いけど、読んでよかった
自分は正しい、という思い込みは時としてよくない結末を招く。でもそれ以外に何ができただろう?最初からそれに関わらないという選択肢はあったのかな?というモヤモヤが残る小説群。結論は出ないけど、今までより少し賢く判断できそうな気はする。
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