日本の文学賞

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バルタザールの遍歴

日本ファンタジーノベル大賞

バルタザールの遍歴

佐藤亜紀

双子のバルタザールとメルヒオールが、ウィーンから北アフリカへと流転していく放蕩と転落の物語。

歴史幻想双子ウィーン退廃

作品情報

ひとつの身体を共有する双子の遍歴が、退廃と歴史の影を浮かび上がらせる。

第3回日本ファンタジーノベル大賞受賞のデビュー作で、ウィーンとマグレブをまたぐ流転のイメージが鮮烈な作品。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
1991-12-01
ページ数
264ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784103831013
ISBN-10
4103831014
価格
135 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

Amazon.co.jp: バルタザールの遍歴 : 佐藤 亜紀: 本

レビュー

  • 上出来

    この作家のエッセイを読んで、ずいぶんえらそうな人だと思った。その毒舌に興味をそそられる形で買って読んでみた。 ちょっと退嬰的で暗いけど、読者を引きつける表現力も構成力もある。巧い。賞を取ったのもこれなら分かる。 文句をつけるとすれば、小説全体から湧き上がってくる力というか芸術性というかがもう一押し欲しいところだ。だがそんな文句をつけても仕方ないだろう。 ノスタルジアを感じさせる娯楽なのだと思う。 読んで何か問題が解決したりする小説ではないのだろう。もっとも、文学から来る解放感なぞだいたい一時のことだ。敵が死んだところで、主人公が別世界を目指すところで、解放はないのだ。徐々に衰微し、死に向かうなかで、わずかでも渋くても人生の実感を味わう。そういう一種のハードボイルドな感じの味わえる作品だと思う。

  • 今さらながら

    面白かった。 読みたいと思いながらなぜか未読だったのだが、こういう話だとも思ってなかった。 とても特殊な「双子」の話で、まず設定が強烈なのだがそれだけじゃない。 種明かしともなるような、「父のからだ」のエピソード。最初は ん? と思ったのだが、後になってわかったときの爽快さ。 ちょこっと前のヨーロッパという舞台もとても鮮やかだし、後半の地もまた愉しい。 バルタザール氏にとっては相当ハードな土地ともなるが、彼の不運をうっかり愉しまされてしまった。 読後10年経っても絶対に忘れない小説なのは 間違いない。

  • 期待しすぎた

    評判を見るかぎり完璧に面白い小説ということで、書店で手にとって読んでみた。 たしかに、グイグイと引き込まれる。夢中になってページを捲った。 ただ、この作品はサスペンスでもSFでもない。 私のように何か「鮮やかな大仕掛け」を期待して読むと後味の悪さが残る。 どんでん返し、意外な真実、そういうものは無いと思ったほうがいい。 所詮素人の私が理解できる小説ではなかったのが残念。

  • 第3回(1991年)日本ファンタジーノベル大賞作

    ハプスブルク家の傍系子孫貴族、ヴィスコフスキ・エネスコ家の当主が主人公の物語。 エネスコ家は代々カスパール・メルヒオール・バルタザールの3つ、何れかのファーストネームを名付ける事が語られ、父カスパールは、主人公の双子2人に何故か1つのファーストネームしか授けなかった事で不都合が生じたように語られる。 この説明で筆者は頭が混乱した。 どうやら周りの人間には一人に見えているのに、双子なのか?それが名前を一つしか付けなかった事により生じた不都合なのか? 単純に、主人公が双子ではなく多重人格なのだろうか? それとも双子なのに名前が一つしか無いので周りの人間には一人として認識されている不思議な現象なのか? 主人公の状況の詳細が語られない状況なので、頭の中の???が解決されないまま話が進んでいく。 時代は第一次世界大戦と第二次世界大戦の狭間の時代の欧州。 アドルフ・ヒトラー率いるナチスがドイツに暗い影を落とし始めた頃です。 貴族制度が崩壊して、主人公の家も没落貴族として時代に取り残される様子が語られ、そんな中でも、欧州各地での人との交流、一族との交流、また父の若い後妻(義母)との不義などが語られるが、ここまでは筆者の読書力が拙いからだと思われるが、他のレビュアーさんが高評価している作者の純文学のような文体、と言うのが自分には合わないのだろうか?と感じた。 正直、内容が頭に入って来なくて読むのが苦痛に感じていました。 振り返って、もうちょっと自分なりに読むのが苦痛だった原因を考えたところ、多分、主人公の双子が置かれている特殊な状況があるからだと思いますが、主人公が内証?内省?を語ったり、二人の考えの違いを語ったりと、とにかく心の中の語りが多い。 また純文学的に物事の説明をされるのが、状況把握を難解にしているように感じました。 それらが多すぎて、双子の周りで起こっている出来事が頭に入って来ないような印象を受けて、ただただ文章を読んでいる感じでした。 この頃までは、もう読むのを止めて脱落しようか?と思っていたのですが、私はファンタジーノベル大賞(正確には第一回受賞作の後宮小説)が好きなので、その受賞作であるこの作品も最後までは読もうと思いました。 それが、この双子の不思議な状況が、特殊な体質だからと言うことが語られ、段々と二人の特殊な状況が真相が解って来た辺りで面白く成ってきます。 そして、この特殊な体質は、父からの遺伝かも?という事が匂わされた辺りで、文体も気にならなくなってきて(内面を語る場面も少なくなってきた気がします)、双子が周りで起こる出来事に巻き込まれて行き、次はどうなるの?次はどうなるの?と、続きが気になり引き込まれて行きます。 私は上記しましたが、ファンタジーノベル大賞が好きで購入しました。 「バルタザールの遍歴」という西洋を思わせるタイトルにファンタジー的な要素を感じてタイトル買いでしたが、内容としては、一般的なイメージのファンタジーではなく、ジャンルで言うとサスペンス小説だと思います。 途中から、これはサスペンス小説だと認識できてからは、どこへ向かうか解らない暗闇の中から、進む道を示されたようで面白くなりました。 難解だと思って頭から煙を出しながら読んでいた部分に伏線が巡らされていたり、膝を叩いて得心できたりしたのも良かったです。

  • 処女作にしてこのクオリティ!

    嵌りました。 翻訳物では、この言葉の選び方、遊び方はできないと思います。 主人公のグダグダさ加減と、いい男ぶりが目に浮かびます。 ヨーロッパの香りと不思議さを堪能しました。 ストーリーと文章も楽しめて、なんと贅沢な1冊でしょう。

  • 良さがわからない

    レビューの評価が高く賞も取っているようですが、私には合いませんでした。文体も世界観も。好きな人は好きなんでしょうか。こんなに絶賛されるのが不思議です。

  • 高尚な文体で書かれた漫画である。いい意味で。

    第二次世界大戦前のウィーンで貴族として生まれた「私たち」によって語りはじめられる物語。主人公は一つの体を共有する「メルヒオール」と「バルタザール」という双子。シャム双生児でも二重人格でもない。非物質的実体としての二人が物質的実体としての一つの肉体に宿っている。二重人格ではないので二人は会話をしなければお互いの考えが分からないほど独立した存在である。このオリジナリティ溢れるキャラクターによって物語は否が上にも独創的となる。さらにナチスの足音と共に不穏になってゆく社会情勢、没落していく貴族の退廃と耽美を緻密に描くことによって、まるで海外小説の邦訳を読んでいるような気分にさせる。格調高い文体、聞き慣れない外国人名等によって前半は読み進めるのに苦労するだろう。しかし後半に行くに従って物語は躍動的な冒険小説に変貌していく。そして実はこの小説は重厚な衣を纏った漫画であるということに気が付く。格式あるオペラハウスで演じられるモダンなエンターテイメントと同じく、漫画であることは劣ってることを意味しない。楽しく読めることは小説の美徳である。だが度が過ぎたサービス精神が気になる部分もある。例えば後半の重要人物にナチスのSS将校エックハルトとその部下ハンスとグスタフが出てくるが、ちびでハンサムな金髪で残酷だが臆病な親分と力持ちだが間が抜けている子分という図式はハリーポッターで言うところのドラコ・マルフォイに対するクラップとゴイルに同じだ(尤も制作年から考えて真似をしたとすればJ.K.ローリングの方だが)。また退廃的な話の筈なのにむしろ爽やかな気分で読めてしまうのは、リアルな不条理感を欠いたご都合の良いストーリー展開のせいだ。だからこそむしろ第3回日本ファンタジーノベル大賞に相応しい。これは思想や哲学を伝える小説ではない。純粋に楽しむために読むエンターテイメントなのだから。

  • 傑作だが誤植が…

    デビュー時から特徴的な名文は変わらない。登場人物の底意地の悪さも。 ただ、Kindle版の誤植の多さはどうにかならないか…

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