オルガニスト
音楽大学の助教授テオドール・ヴェルナーは、南米ブエノスアイレスの教会に彗星のごとく現れた謎の天才オルガニスト「ハンス・ライニヒ」の演奏記録を入手する。その演奏は、9年前に自動車事故で右半身の自由を奪われたまま病院から姿を消した親友ヨーゼフ・リヒターを彷彿とさせた。ライニヒはヨーゼフなのか——。バッハのオルガン音楽を軸に、ミステリーからSF、ファンタジーへと鮮やかに変容するデビュー長編。音楽への純粋な狂熱と、人間の限界を超えようとする意志を描く。
作品情報
「ぼくは音楽になりたい」——その言葉が導いた、奇跡か悲劇か。
第10回日本ファンタジーノベル大賞受賞作にして、著者山之口洋のデビュー長編。舞台はドイツと南米、そして記憶と音楽が交差する見えない空間。音大助教授のテオが偶然手に入れた一枚の録音ディスクに、9年前に姿を消した親友の面影を感じるところから物語は動き出す。バッハのオルガン曲が通奏低音のように全編を貫き、ミステリー仕立ての謎解きからSF的飛躍を経て、最終的に純粋なファンタジーへと着地する。単行本刊行後、文庫化にあたり三人称から一人称へと大幅改稿が施された。NHK-FM「青春アドベンチャー」でラジオドラマ化もされている。
レビュー要約
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美しく読みやすい文章と緻密な構成が評価されている。特に音楽描写のリアリティへの称賛が多く、終盤のSF的展開を含めた予想外の急展開に強い印象を受けた読者も多い。一方、中盤で医学的説明が細かく続く点や、感情表現が理性に抑制されている筆致をやや距離感があると感じる声もある。
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前半の音楽青春小説としての読み心地が好評で、後半にかけてミステリー、SF、ファンタジーと次々にジャンルが転換する大胆な構成に驚く声が多い。音楽に憑かれた人物たちの業の深さが読後の余韻として残るという評が目立つ。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 1998-12-01
- ページ数
- 279ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784104270019
- ISBN-10
- 4104270016
- 価格
- 395 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
Amazon.co.jp: オルガニスト : 山之口 洋: 本
レビュー
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とてもおもしろかった
小説の舞台がドイツ・ニュルンベルクから始まる 昔1年半ほど滞在したアンベルグの近くで幾度となく行ったところ、 また、文中に出てくるヴァインガルテンのオルガンはその後出張の際に 実物をみているなど、親しみがあった。 小説自体は、オルガンの知識とオルガン曲の知識が多少あった方が 良いが、ミステリーとしても楽しく読めるのでとても良かった。 奇想天外のチョットSFみたいなところもあったがとても 面白く読めた
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バッハのフーガのような、巧妙かつ痛切な物語。
久しぶりに面白い小説を読んだので、初めてレビューを書こうと思う。 オルガンに対する蘊蓄やバッハの音楽に対する深い知識、 音楽作品は実際に聞かないと分からないが、作品に対する朗々とした表現、 音楽家の内面を吐露するような議論、 文章的表現も、詩的で深い響きを持っていて、美しい。 また、作中で出てくるいくつかの設定やギミックが、特に終盤であざやかに使われていく。とある有名な曲に着想を得たと思われる仕組みにより、音楽で会話をし始めるところなど、息を飲む。それこそフーガのように、非常に巧妙でトリッキーに書かれている。読んでいて思ったのだが、設定が良い、設定が生きると言うのは、ある設定が複数の目的に使われている、というのが一つの条件かなという理解を得た。 この小説は、音楽に対するあまりにも純粋な感情を書いたものだと思う。 音楽に限らず、科学、文学、芸術などの分野で、理想が高く純粋すぎる人間は観念的なものへの価値を重く置きすぎるがゆえに、しばしば現実世界を否定して極限まで理念化された透明な存在に、観念そのものになろうとする。その究極的な形のひとつだと思った。しかし純粋にであろうとすればするほど、逆にある意味では醜いものへと成り果ててしまう。 狂気にも映るその純粋さへの代償。 オルガンの深刻な音色が響き渡るような、痛切な終幕。 圧巻。素晴らしかった。
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細部は非常に面白いのだが・・・。
オルガンや音楽に関しての細部は非常におもしろいのだが、メインのストーリーはアマデウスの亜流を超えていないし、後半のマッドサイエンスティックな展開(またソ連かよ、この為にドイツが舞台なのね)には少し興ざめする。作品のメインテーマにしめる、音楽に対する偏愛と楽器への偏愛をここまでイコールでかたずけるはどんなもんだろう。映画好きは劇場主義者であり、フィルムを愛好せねばならず、文章好きは書籍その物を偏愛せねばないらない、このマニア特有の媒体偏愛ファシズムが感じられる。著明な作曲家や演奏家には楽器への愛着を示さない人種も非常に多いことを忘れてはなるまいて(作中で多大な尊厳がはらわれているバッハもそう)。以下は穿った考えだが、本小説の作者が音楽の世界に対して部!外者であるが故に、媒体をひっくるめたジャンル題材その物への盲目的なリスペクトを感じているのではないか。そしてその押し付けを感じて読者は息苦しさを感じるのだろう。後、どうでもいいが、ラインベルガーというネーミングはあまりに安易で芸がない。
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絶版が惜しくなる
1998年。第10回ファンタジーノベル大賞の大賞受賞作です。 豊富な音楽の情報に気を取られて、物語り世界にはいっていけなければ、どうしよう…… そう思っていましたが大丈夫でした。硬筆な文章で綴られる物語りは、後半はミステリー仕立てとなっています。 意外としっかりエンタメしています。新潮社から単行本。文庫本とでていたのですが今は絶版状態です。 ファンノベファンでしたら、見つけたら買いをおすすめします。但しファンノベの特性上、癖は強いです。
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パイプオルガンを好きになったきっかけ
僕はラジオドラマからこの「オルガニスト」という物語を知った。 今もお気に入りの物語である。 もし小説を読んで気に入った方がいるのであればラジオドラマも聴いてみて想像して欲しい。 出来れば舞台でも観てみたいなと思っている。
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音楽を本当に愛していた人。
音楽を、少し『歪んだ形』かもしれないが、本当に愛していた人の物語。 私自身音楽に携わる機会が多いのですが、ここまで音楽、というか、自らの奏でる楽器(オルガン)を愛している人は見た事がありません。 本当にここまで音楽が好きな人はいるのでしょうか。 少なくとも私は「ピアノが弾けないならこんな手はいらない」というようなことはきっと言えないと思う。 きっと、彼の人生自体には「オルガン」というものが、半分以上組み込まれていたのだろう。 話的にはそこまで・・・というものもあったのですが、音楽の細かい描写等にとても感心したので4つ星をつけました。 切ないまでに音楽を求めたヨーゼフと、主人公テオのヨーゼフに対する気持ちの変化なども私は好きでした。
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引き込まれました
久しぶりに、寝る間を惜しんで読みました。面白かったです。 クラシック音楽は気が遠くなるほど薀蓄にあふれた世界なので、難解すぎると挫折するのですが、杞憂に終わりました。 この作者はこれで3冊目、文体がとても読みやすくて好きです。天平時代の話・ビールを自作する話ときて、これは天才オルガニストと友人たちの話。どれも作者の膨大な知識をほどよく噛み砕いて書かれ、嫌味がありません。作中に出てくる曲は、すぐにでも聴きたくなります。音色を食べ物に例えて表現することもあるなど、興味深いです。 話が進むうちに、これはSFになってきたと言うか、近未来に必ず起こりそうな問題が出てきました。 オルガンの仕組みや演奏者の個性を聞き分ける事なと、この小説を読むまで無縁だった一般人には、明るい医学の進歩とでも言える技術が・・・。登場人物が稀有の才能を持ち、あるいは専門家の耳でそれを評価でき、芸術には無関係に音を冷徹に分析できる技術者である故に、魔物のふところに抱かれるような悲哀を感じました。アシモフのロボットが美しい木彫りを作る話がありますが、ふとその話を連想しました。 ある場所で、清楚なオルガンが煙水晶の目を見開いている。無人の聖堂でそれがつぶやき歌い出すなら、どんな音楽を奏でるだろうか。 そんな余韻を残す小説です。
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蘊蓄満載の素晴らしい音楽小説
人はどこまで音楽になれるのだろう。そんな哲学的な命題がどーんと据えられた重厚なそれこそパイプオルガンのような小説だ。舞台はドイツで登場人物のほとんどが白人なのだけれど、まったく違和感なく、すんなりと話に溶け込めるのはすごい。 読んでみて損はない。