作品情報
兄の政権に追い詰められた大海人皇子が、やがて古代日本を震わせる大乱へ踏み出していく。
社会派小説で知られた黒岩重吾が古代史に本格的に取り組んだ長編。上巻では、天智天皇の都で疎外されていく大海人皇子の屈折、額田王をめぐる情念、白村江敗戦後の対外関係が描かれる。下巻では、時を待った大海人皇子が挙兵し、東国から近江朝へ向かう軍勢と各地の戦いが、歴史学をふまえた群像劇として展開する。
レビュー要約
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古代史を扱う骨太な長編として、人物関係や政治状況を丁寧に追う読み応えが評価されている。大海人皇子の慎重さや挙兵までの緊張感に引き込まれる一方、歴史背景の密度を重く感じる読者もいる。
書籍情報
- 出版社
- 中央公論新社
- 発売日
- 1996-04-18
- ページ数
- 664ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784122025776
- ISBN-10
- 412202577X
- 価格
- 1017 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
第14回(1980年) 吉川英治文学賞受賞
レビュー
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日本人必読の書です。
戦国時代、幕末に負けず劣らず読みがいあり。時代の転換期に読むべき本。
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古代の歴史小説で、入鹿を誅した鎌足と大兄の皇子のあと
黒岩重吾が多分こうだったんじゃないかというフィクションで面白い。古き皇室をめぐる系図があると良い。
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壬申の乱を雄大に描き切った傑作
昔日本史で習った壬申の乱を、戦いで勝利した大海人皇子(後の天武天皇)の立場から描いた作品である。 物語は大化の改新の直後から始まる。兄の中大兄皇子(後の天智天皇)は中臣鎌足ら重臣と共に政敵となりそうな有馬皇子を殺害するなどして権力の座を固めて行く。大海人皇子はそんな兄を支え、兄からの信頼を勝ち得ているようにも見えたが、次第に宮廷の中で疎外されていく。そして、兄が息子の大友皇子を次期天皇に任命した段階で完全に邪魔ものなったことを悟り、自ら政治から身を引いて僧侶になることを選択する。 本書では当時の唐と高句麗・百済との争いといった国際政治に否応なしに日本も巻き込まれる大きな歴史のうねりの中で、国内では天智天皇の後継を巡る権力闘争が激化していく様子がダイナミックに描かれており、更には主人公の大海人皇子と彼を巡る女性たちの献身と葛藤や、彼を忠実に支える部下たちの関係も余すことなく描かれており、実に読み応えがある。 そして何と言っても一旦は権力の座から落とされ宮滝で出家生活を余儀なくされた大海人皇子が、密かに力を蓄えて近江王朝打倒に至る過程は本書のクライマックスであり、読み終えた後は壬申の乱を雄大に描き切った傑作だと思った。
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鸕野讃良の秘めた情念… 女って怖い。
大海人皇子を主人公に壬申の乱を描く長編小説の前半です。 この巻では658年の有馬皇子処刑から、天智天皇が亡くなる672年までの物語が語られます。 記紀や万葉集、藤原家伝を相当に読み込み、なおかつ独自の見解も含め、話を大きく盛り上げていきます。 当初は皇太弟として次期天皇の有力候補とされ、兄の中大兄皇子からも頼られる大海人ですが、百済や高句麗の撲滅や白村江の戦での倭国大敗、唐の進出といった韓土の状況、教養溢れる大友皇子の出現などによって、次第に政治から遠ざけられていきます。その間の大海人の心理を丹念に描き、とても面白く読めます。 そして、主人公以上に異彩を放つのが妻であり中大兄の娘である鸕野讃良。後に自分の直系を天皇にするために自ら持統天皇となった女性らしく、極めて強い気持ちを持った女として、大海人にも大きな影響を与えていきます。 さて、下巻はいよいよ壬申の乱。大津京に風雲が巻き起こります。
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批判的な目を保持しながら読んでほしい
この時代を舞台にした小説はほとんどないので、貴重なものとは思うのだが、 あちこちに欠陥が目について、白けてしまうことがしばしばある。 現代もののミステリーで、あれほどに完成度の高い構成力・文章力・表現力を見せてくれた同じ作家とは、ちょっと信じがたい。 文章や視点の混乱もかなり目立ち、本当に本人がすべて書いたのか、疑念が湧く。 そもそも、天武の時代を舞台にしているのに、現代用語がいきなり出てくるのは反則で、 さらに登場人物だけでは説明が不足すると、作者がいきなり登場する。 また、書き手の視点が、時には神の視点で、また時には主人公の視点で、そして便宜的に作者の視点にと、くるくる変わる。 まるで、素人が初めて書いた小説のようだ。 そもそも大海人皇子=天武天皇を採り上げるのに、道教・陰陽道は大前提であり、 多くの事績はこれを抜きにしては解釈も批判も不可能である。 歴史観の問題は、人それぞれでもあるのでさておくとして、不勉強のそしりは逃れないだろう。 これを「決定版」としないよう、今後の読者には警告しておきたい。 補助教材を読みこなすことと並行して、批判的な目線も保持しながら読んでいただきたい。 作者がすでに他界していることは、もはや修正が不能ということで、 貴重な力作であるがゆえに、まことに惜しまれる。
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西成の社会派小説の第一人者黒岩重吾が大転向した長編古代歴史小説
黒岩重吾さんは、戦後の西成などの言わば「裏の」大阪を舞台に夜の蝶たちがたくましく生きる様子を描くことが多い社会派作家で、作品は数多く読んでいるのですが、今回初めて黒岩重吾さんの「古代史」作品を読みました。 「わきがの匂い」とか書いていた小説と全く異なり、かなり本格的な歴史小説になっていて驚きました。読みやすい文章はたしかに黒岩さんのものですが、同じ作家が書いたとは思えないような大転向です。 物語は、大化の改新後、実権を握った中大兄皇子(天智天皇)が、その跡継ぎとして皆から認められていた実弟、天海人皇子のかわりに、息子の大友皇子をして次期天皇に任命したことから、天海人の周到な計画の後に、天智天皇の死後、ついに壬申の乱が発生、大友皇子を自害じ、天海人が天武天皇になったという史実を描いています。また、中大兄皇子が、百済に協力して朝鮮に大量の兵を動員し、大敗を期した白村江の戦いも描かれています。この敗戦が原因となり中大兄皇子は、唐の軍事力を恐れて都を近江に遷して二度と唐、朝鮮とは戦争はしないと決意することになります。 全般に、よくぞここまで調べたというほど細かく様々な人物の動きが描かれています。歴史小説の常で、創作が入っているのでどこまでが本当かわからないのはしかたがないですが、額田王の歌や日本書紀の記述などが記載されており、かなりの部分が史実に忠実なのではと思わせた。 難を言えば、近江宮のあたりから、あまりにも細かくなりすぎて読むのがしんどくなってくる。黒岩さんは長年にわたって調べた成果を伝えたいという気持ちがあるのだろうとは思うが、上巻の終盤から、下巻の大半が、天海人の忍従と戦への準備に当てられていて、正直半分くらいのボリュームに収めたほうがよかったのではないかと思います。
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上巻だけで660ページ、長かった。
壬申の乱の話と思って読み始めたが、時代は658年から壬申の乱前夜まで、前に読んだ「中大兄皇子伝」や「茜に燃ゆ」の下巻と同時代、天智天皇の晩年の話。天智天皇、無理な外征と子供の溺愛、孤独な独裁者、晩年の豊臣秀吉みたいです。
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小説か、解説か、歴史書か。
小説か、解説か、歴史書か、、。 小説文があり、突然解説や自説、異説が始まり、反対学説まで、、、また自分が何故その説を信じるかの解明等が小説の合間に続く。 小説は小説、歴史書は歴史書で分けて欲しかった。小説なんだから多少は造った部分あってもよし、いきなり現在は、という解説は覚める。 たくさんの文献を読んで、作者は必死になっているようで、あれも言いたいこれも、と必死に見える。 以前、著者の小説蘇我入鹿を読んで感銘を受けたので読んでみたが、最初の方の歴史小説なんだろうか、あまりに解説的すぎてしんどい。説明はいいからどんどん物語を進めて欲しかった… 入鹿の小説は説明文等なく、全身全霊小説の中に没頭させてしまうくらいに入鹿のキャラクターが良く書かれていて、面白かった。段々学んだのかしら。
関連する文学賞
- 吉川英治文学賞 第14回(1980年) ・受賞