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構造素子

ハヤカワSFコンテスト

構造素子

樋口恭介

売れないSF作家だった父ダニエルの死後、息子エドガーは残された草稿を通じて、人工意識エドガー001と向き合う。物語が物語を生み出す構造のなかで、親子の記憶と現代SFの系譜を重ねる長編。

人工意識草稿親子自己増殖SF史SF

作品情報

未完の草稿が、親子の記憶とSFの歴史をつなぐ。

第5回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。SF作家だった父ダニエルの死後、エドガーは母ラブレスから未完の草稿を受け取る。物語の内側では人工意識エドガー001が生み出され、その増殖する物語と、読む側の記憶が重なり合いながら、現代SF100年の歴史を総括するような構造が立ち上がる。

書籍情報

出版社
早川書房
発売日
2017-11-21
ページ数
408ページ
言語
日本語
サイズ
13.9 x 2.7 x 19.3 cm
ISBN-13
9784152097279
ISBN-10
4152097272
価格
2159 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

【第5回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作】 エドガー・ロパティンの父ダニエルは、H・G・ウェルズやジュール・ヴェルヌに私淑する売れないSF作家だった。彼の死後、母ラブレスから渡された未完の草稿のタイトルは、『エドガー曰く、世界は』。その物語内で、人工意識の研究者だったダニエルとラブレスは、子をもうけることなく、代わりにオートリックス・ポイント・システムと呼ばれる人工意識、エドガー001を構築した。自己増殖するエドガー001は新たな物語を生み出し、草稿を読み進めるエドガーもまた、父ダニエルとの思い出をそこに重ね書きしていく――。SF作家になりきれなかった男の未完の草稿にして、現代SF100年の類い稀なる総括。

樋口恭介(ひぐち・きょうすけ) 1989年生まれ。岐阜県出身、愛知県在住。早稲田大学文学部卒、現在会社員。『構造素子』で第5回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞してデビュー。

レビュー

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  • ハヤカワSFコンテストは第五回も豊作

    第五回ハヤカワSFコンテスト大賞。今年も豊作。大傑作である。 難解な文章に時々現れる美しい文章が切ない。 情熱と絶望の物語。 SFマニアによるSFマニアのための物語。 独創性もあり、知的でもある。 これは超おすすめだ。必読だとすでに断言できる。 東浩紀の「クォンタムファミリーズ」と円城塔の「エピローグ」に類する小説。 <極北>に挑んだ小説のひとつだと思う。

  • 抽象絵画のような、しかし妙に心を騒がせる小説

    小説そのもの、SFというジャンルそのものを小説の形で描く、という、見るからに失敗しそうな、はなはだ無茶な話。恐ろしいことに、その蛮勇はかなり成功している。 単著を一冊も出せないまま亡くなった英国SF作家ダニエルの遺稿から始まり、派手な展開もあるが、雰囲気は終始、静かで哀切。会話文にカギ括弧を使わない独特の表記が密度を高めている。そのムードを打ち破る、ライジーアの反逆とスチームパンク・ユートピアのビジョン。ロバート・オーウェンには興味を引かれた。 結局どういう話だったのかはよく判らなかったけれど、意外なほど面白く読めた。「ティプトリーの話」は読みたかったかな。

  • SF好きでなくともお勧めできる一冊

    本作を読んで、東浩紀や柄谷行人などをパラパラとめくっていた大学時代を思い出しました。 物語(宇宙)の階層構造をサーバーの物理マシン/仮想マシンの構造に擬える発想や、 あり得たかもしれない世界(宇宙)、の数を単に増やすのではなくそれらの世界に再帰を含む発想に驚嘆しました。 物語のラストにある『それでも、あなたに出会えてよかったと、最後のときにわたしは思う。』の一節が印象深く残りました。 久しぶりに小説を読みふけるという興奮を思い出しました。大変素晴らしい作品を読ませて頂き、ありがとうございます。

  • 言葉達による、感情に溢れたパラフィクション

    第5回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。 敷居こそとんでもなく高そうに見えるが、実際に跨いでしまえば非常に分りやすく出来ている構成となっている。 亡くなった父親の書いた未完のSF小説を中心とし、自己と「書くこと」についての記述が全編に渡って展開される。 作中の語りはある一定のポイントから「群体小説」とでもいうべきか、語ろうとする存在がそれこそ複数おり、それらは与えられた材料を咀嚼し、入れ替え、主題の変奏を繰り返す。H・G・ウェルズ『宇宙戦争』、ウィリアム・ギブソン『ディファレンス・エンジン』といったSF小説からの要素、ジャック・デリダ、ジル・ドゥルーズ等の哲学の要素、父と母、そして子の重ねてきた挿話と共に、当地となったイギリスの歴史と共に解体され、アトランダムな組み換えと置換を経て、複数の語り手によって「語り直されて」いく。パズルの組み換えのように、思考実験のように。 もちろんこの分野には偉大な先駆者として円城塔の諸作があるわけだが、あちらが遊び心とユーモアに満ちた脱線と緩急で出来ているとするならば、こちらの語り手達には余裕がない。何故か? この作中の「群体達」は語ること、語り直し「検証すること」、それ自体が生きる目的であり、すなわち自らの存在理由だからである。懸命に語り続けるその姿勢はシステムにエラーが起こってもなお続き、7章『Engines』においては正常な語りはなく、まるでウィリアム・バロウズのカットアップにも似た手法で進められていく。今までに言及した事柄が、それらが積み重ねてきた歴史さえもが磁力を失いバラバラになっていく最中、本来の意味が失われた記述になってもなお忠実に語ろうとしていく姿勢に胸を打たれた。なんと血の通った『記述』であり『記述者達』であろうか。 惜しむらくは既に円城塔がこの『パラフィクション』という概念を創ってしまった後に発表されたことであろうが、もっとも、そちらの影響抜きには成し得なかった試みであろうから致し方ない。人情味と言おうか、親子の間の愛情をこのジャンルと結びつけた点はあっぱれだと思う。 是非とも次作が読みたい。

  • 難解な文章に陶酔したい方向け

    テーマへの取り組み上必要とはいえ、さすがに読み辛いにも程がある。そもそもテーマ自体そこまで目新しいものでもないので、頑張って読み解いてこれか、という感もある。私の読解が足りないだけかもしれないが。本文後の”参考”で言い訳から始まるのも気分が悪い。 これがSF大賞は流石に時代錯誤が過ぎる。古の翻訳SFではあるまいし、難読文であればそれ相応の内容が伴ってほしい。

  • この小説はミホノブルボン的である

    ハイレベルだったらしい第5回ハヤカワSFコンテストの大賞受賞作というだけでそのヤバさはヤバく、まずは論理構築の凄まじさに圧倒される。しかし読み進めるとその要塞のように聳え立つ論理のなかから、作者の温かな愛が溢れ出してくるではないか!哲学的問いも随所に散りばめられており、それぞれについて作者の考え抜いた痕跡がみられグイグイ読ませる。これは極上のSFでありエンターテインメントであり哲学書である。このような作品を可能にしたのは恐らく作者の鍛え抜かれた強靭な頭脳であり、作中にみられるあらゆる徹底が読者に感動を呼び起こさずにいない。そうした意味で、この小説はミホノブルボン的である。いや、ミホノブルボンそのものである。

  • 「コルヌトピア」を読んだので次はこちらも。

    円城塔+神林長平的な気がした。 面白かったが、自分の好みからちょっとずれているような気がしたが、 ラスト近くで好みの方に寄ってきて面白かった。 神林長平的な気がするけれどもな。

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