作品情報
病と創作のあいだで、長塚節の生涯が静かな緊張を帯びて描かれます。
文藝春秋から刊行された小説で、副題に「小説長塚節」を持ちます。藤沢周平の時代小説とは異なる評伝的な筆致で、近代文学者の内面と時代を描いています。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 1985-11-01
- ページ数
- 501ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784163087504
- ISBN-10
- 4163087508
- 価格
- 799 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
第20回(1986年) 吉川英治文学賞受賞
レビュー
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時代劇以外の藤沢周平も良い
藤沢周平作品の時代劇は全て読んでしまったので、今まで現代モノは敬遠していましたが、挑戦しました。 面白かった。長塚節と伊藤佐千夫の友情と嫉妬、反感、創作活動をする二人の弱い心と強い想いが、創作者である藤沢だからこと、肺病で苦しんだ経験を持つ藤沢だからこそ、微細に描けたような気がします。 長塚を描きつつ、私には、十分に伊藤が魅力的に映った。苦しい生活と俗物感は決して芸術に対する崇高な想いを汚してはいない。作中、長塚の短歌も初めて詠んだが、美しかった。
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きれいでした。
きれいでした。
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涙です。
さすが藤沢周平です。周平が好きな人、うたよみが好きな人、是非、お読みください。
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苦しむ!
「小節 長塚節」と副題にあり、長塚節の死をもって終わる小説だが、正岡子規から斎藤茂吉に至る歌論が基底にあり、その中に長塚節の歌と人生を、どう位置付けるかを探求した、と云えなくもない。従って歌について、ある程度の理解がないと、中々読み進められないのが、偽らざるところであろう。藤沢周平の本でなければ、中途で投げていた。
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なかなか評価がむずかしい…
評者は、この作品を、作家「藤沢周平」への興味、あるいは文学ジャンル「小説」への興味からではなく、歌人「長塚節」への興味から手にとり、読みました。 以前、長塚節[1879年(明12) - 1915年(大4)]の歌集を読んだとき、その歌は少しわかりにくい、というか、歌としての日本語の姿がときに万葉調をまじえるためかやや古めかしいという印象がありました。 が、徐々に読みなれてくると、そしてまた伊藤左千夫など同時代の歌人の作品を読みくらべていくなか、だんだんと節の歌のおもしろさなりその特徴がわかるようになりました。 本作品でも節の歌がたくさん引用されています。 芋の葉にこぼるる玉のこぼれこぼれ小芋は白く凝りつつあらむ この歌は、自然の通常は目には見えない細部にまで詩人の想像のまなざしがのびてゆく点でなんとなくイギリス・ロマン派詩人キーツの詩を思わせるものがあります(もちろんキーツの詩であれば、そうしたまなざしは可視可感の世界をこえて〈美〉の理念世界へとつながってゆくものであるのですが)。 あるいは本書のタイトルが由来するところの晩年の有名な一首、 白埴(しろはに)の瓶(かめ)こそよけれ霧ながら朝はつめたき水くみにけり まあでもやはり節は、日本近代短歌史上けっして大歌人とはいえません。 現在、齋藤茂吉の盛名のおかげでアララギ派はよく知られていますが、長塚節、そしてこの小説に登場してくる伊藤左千夫もそうですが、当時も、そしていまもどちらかといえばマイナー・ポエットの部類に入る歌人といわざるをえません。 そうした文学史的評価はともかく、作品としては冴え冴えとして感覚こまやかな自然写生の歌を詠んだこと、終生旅を愛し、人間関係において目立たず控えめに生きたこと、病気(結核)のため早世したこの歌人にはその病いゆえに結婚をめぐる悲恋のエピソードがあったこと、そんな歌人として、および人間として質朴にして清雅ながら悲運ともいえる生をおくった節に、同じ病いに苦しんだ藤沢周平はつよく惹かれたのかもしれません。 この小説は、長塚節の伝記小説ともいうべきものですが、その一生ではなく、歌を詠み始めて以後、その死にいたるまでの半生をほぼ時系列にそって描いています。 そこでは、おそらく節をめぐる膨大な資料と文献を読みこんだうえで、長男として背に負わされた家業の立てなおしや自身の病気の進行など、節を襲う逃れがたい苦悩に寄りそいつつ、節の半生がこまやかな筆でたどられています。 ただ、その半生にはさほどまで劇的なものがないゆえもあり、小説家の筆はやや淡泊な運びで進んでいいきます。あえて申せば、節の生まれ育った村や旅した土地の自然や人びとの描写はそれなりに丹念に描かれているものの、清爽な風のような文体のせいか、めくるページから、節の小説『土』にみられるような自然の土くさい匂いがたちのぼってこないといううらみがややあります。 このあたりで、小説としての評価が分かれるような気がします。 ややうつむきかげんに、だがしっかり前を向き、質朴にしてすがしくかつ懸命に生きる人間を描いた小説世界、といえばいえるかもしれませんが、評者にはちょっと深みが欠けるような印象をもちました。 ところで、あたうかぎり資料や文献を博捜して基本的に事実のみが書かれることが原則の「評伝」あるいは「伝記」とはちがって、この『白き瓶』にみられるような、ひとりの文学者をめぐる「伝記小説」というジャンルがあるように思えます。これは「伝記」的事実にそいながらも、独自の推理をもとに結果的に虚構(になるかもしれないもの、とくに心理描写など)をもときに大胆にまじえた「小説」というものです。たとえばここで佐藤春夫の『小説 高村光太郎』がすぐ思い出されますが、この種のものでやはり記憶にのこる傑作は、日本近代最初の国語辞書『言海』を作った大槻文彦の生涯を描いた高田宏の『言葉の海へ』でしょうか。まるで見てきたかような臨場感あふれる筆致で、大槻文彦の幕末から明治期へといたる波瀾にとんだ人生がそこで小説ふうに描かれています。 この『白き瓶』では虚構はできるだけ排して、きちんと事実の裏付けがある記述のみが原則なされているとは思うのですが、ただ、評者とすれば、「小説」ふうの描写などがなく、資料の精査と考証にもとづき、基本的に事実だけ(もちろん資料の欠落があるばあいは推理にたよることがあるにせよ)がしるされた「評伝」のほうが読みがいがあるように思えます。 本書は、節がその35年の短い生涯にあって童貞のままであった(らしい)という内容の文で最後しめくくられています。 しかしそれがこの伝記小説をしめくくるのにふさわしい一行であったかどうか。なにか宮澤賢治にも似て、節を妙に聖人化してしまうようなことにならないかどうか。あるいはかえって俗っぽい関心をひきよせることになりはしないか。もとより節が童貞であったことがそれほど重要なことであるのかどうか、ちょっと気になりました。 日本各地をひんぱんに旅した経験のなかにあって、あるいは茨城の田舎にあっても、節が、当時の風習として花街や遊郭に遊びに行った可能性がないのかどうかということもありますし(齋藤茂吉などはかれが勤めていた巣鴨病院のちかくにあった白山の遊郭に遊びに行ったことが自身の歌や手紙などによってよく知られています)、小説のなかでは節が「のぞき」のようなこともやっていたことも描かれています(あわせていえば夏祭りのおりの、若い男女たちの夜這い・若衆宿ふうの風習もやや暗示的にではありますが描かれています)。 まあでも、いずれにせよ、評者には節が童貞であったかどうかはどうでもいいことのように思えます。童貞であった(らしい)とあえてつけくわえなくとも、あるいは逆にたとえ節が遊郭に遊んだことがあったとしても、本書をつうじてじゅうぶんに味わった、長塚節の質朴にして清雅な生涯とその歌にたいする感銘はなんら変わらず揺るがぬものだからです。 いっぽう、節の文学的盟友として(節のほうが年下ですがほとんど同等のつきあいをしていたようです)、小説前半にしばしば登場する伊藤左千夫。なんどか映画化されもしたあの『野菊の墓』の作者でもある伊藤左千夫。しかしあのような可憐な小説を書いたとも思えぬ、左千夫の実生活におけるとんでもない怪人ぶりをこの小説で知ることができたのはやはりよかったです。
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資料としても秀作
長塚節だけでなく、この時代のこと、周囲の人々についても書かれています。 正岡子規、夏目漱石、島崎藤村、伊藤左千夫、島木赤彦などなど。 明治後期の作家(小説、短歌、俳句)の経済事情、作家同士の交流、お互いの評価など、 知らないことだらけでした。 特に伊藤左千夫については、かなり詳しく書かれており、死亡するところまでは、伊藤 左千夫に関する本ではないかと勘違いするほどです。非常に興味深い作家だと思いま した。 当時の肺結核患者の状態も非常に勉強になりました。肺病ということで、宿から 追い出されたり・・・・・。 長塚節の短歌は、初期の作品はあまり気にいりませんでしたが、死亡直前の歌は、すばら しいです。 ”手を当てて鐘はたふとき冷たさに爪叩き聞く其のかそけきを” ひとつ興味を持ったのは、石川啄木です。嫌な人物として書かれていますが、短歌は、 素晴らしいです。石川啄木について次は勉強したいと思います。
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興味がない世界の内容は辛い
俳句や短歌などを題材にした長編で、全く興味がない世界なのでただただ読むのが辛い。 何度投げ出そうかと思った事か。 我慢して最後まで読みましたが、内容は殆ど記憶にないです。 読んだというよりは、ずーっと文字を見たという方が正しいのかもしれません。 私にとっては面白くも何ともなく、辛かっただけです。
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図書館が遠くて行けないけど、読みたい本がすぐ届く
アララギの黎明期の、歌人たちの苦悩、努力、世の中の情勢などがよく書かれていて、感動した。
関連する文学賞
- 吉川英治文学賞 第20回(1986年) ・受賞