日本の文学賞

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ネコババのいる町で

芥川龍之介賞

ネコババのいる町で

瀧澤美恵子

失語症の少女が、猫好きな隣人たちとの暮らしの中で少しずつ言葉を取り戻していく。やわらかな筆致で記憶と家族の断絶を描く。

少女失語家族記憶

作品情報

猫たちに囲まれた日々のなかで、少女は言葉を少しずつ取り戻す。

第102回芥川賞受賞作。文藝春秋から単行本として刊行され、のちに文春文庫でも読める。

書籍情報

出版社
文藝春秋
発売日
1990-03-01
ページ数
246ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784163117201
ISBN-10
4163117202
価格
1 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

第69回(1989年) 文學界新人賞受賞

レビュー

  • やるせない三作品

    芥川賞受賞作のタイトル作を含む短編集。 「ネコババのいる町で」 海外在住の母の身勝手で、幼い頃、祖母と叔母に預けられた帰国子女の成長過程がつづられた作品。日本語がままならない帰国子女の、おざなりの家族関係の中で生きねばならない状況が、淡々と描かれる。 彼女の唯一の心の拠り所が、ネコババと呼んでいるおばさんが住む隣家。ここに入り浸りながら主人公は多感な時期を過ごす。ネコババが、祖母、叔母といった肉親より、主人公の成長に大きく関わっているのだ。 行方が知れなかった父親と面会し傷ついたりと、主人公が自身の家族を持つまでに味わった出来事には、殊更に悲劇を強調するわけではないゆえに、かえってやるせなさを感じてしまう。 本作品は、さして仲の良くなかった叔母の死から始まる回想形式である。主人公は、過去を振り返り、結果として秘めたる様々なわだかまりに一つの区切りを見つけたように思う。 「神の落とし子」 零落した中年の男が、仕事先で元妻を見かけたのをきっかけに、幼馴染みであった二人の愛憎の日々を思い起こす…というお話し。 主人公が長年惚れぬいて結婚までこぎつけ、子供を授かった時に悲劇は起こる。そして、その顛末は…どんでん返しミステリの趣のある作品だ。 病のために老人のような風体になってしまった主人公。裕福な生活から一変し、一人老いていく切なさ。追い討ちをかける真相の暴露は、読後感悪し。 「リリスの長い髪」 再婚したものの元妻への想いに囚われている主人公。元妻を偶然見かけたことをきっかけに、二人の馴れ初めから別れまでを振り返る。 作中で、リリスはアダム(アダムとイブね)の最初の妻とのことで、元妻をリリスとなぞらえ男友達と彼女の噂話しをしている。現妻からすると何と厭な旦那であろうか。 主人公は、友人から元妻が同じ医大の同窓生を結婚したとの話を聞き、心穏やかではない。そして、ついつい現妻には、内緒の行動に出てしまう。 どうにも未練たらしいが、少なからず共感する部分もあるか…。

  • ネコババの存在感はそれほどでもない

    ネコババよりネコバンやネコババのおじさんとのやりとりの方が、存在感がある。 ネコババの存在感は薄く感じた。 この物語自体は、主人公と、冒頭で死んだと明言される叔母との関係を軸にしている。 それと、主人公を捨てた実の母、主人公が生まれる前に母と別れた実の父、その今現在の家庭にいる異母弟。様々な人間模様が描かれている。 新人賞受賞作ではあるが、すでに小説としてある完成を見せている、とは思う。 味わい深い。 でも、あまりに出来過ぎていて、少し通俗小説っぽい気もした。 この作品に導入されている人間関係の図式が、類型的なせいかも知れない。

  • 読後にジワジワ感動の波が

    タイトルに惹かれ手にした一冊。サラッと読めた後しばらくしてから、 じわじわと「あぁ、良い小説読んだなぁ」と余韻が拡がっていく不思議な空気が漂っている作品。 調べたら、それもそのはず!!芥川賞受賞の小説との事でした。 主人公の恵里子は、わずか三才にして、一人切り飛行機に乗せられロスから日本までやって来る。 奔放な母親がアメリカ人との夫の間に新たな子供を授かった為、 扱いにくい性格の娘を日本にいる自分の母親と姉に押し付けたのだ。 日本語が余り理解出来ない恵里子にも、どうやら祖母と叔母が、 自分の母親の悪口を言っているのだという事は察知出来る…。 遂にはプレッシャーから失語症になってしまった恵里子。 そんな恵里子の家庭が持つ緊張感と対比するような形で出てくるのが隣の家に住むネコババ。 近隣から猫好きの変なオバサンとして仇名で呼ばれている彼女。 ふらっと遊びに寄ったネコババの家で猫と同様、特に改まって扱われるわけでない、 全然構われないわけでもない接し方をされ、入り浸るようになる内、 実に呆気ないタイミングで恵里子の失語症は治ってしまう。この辺り凄い共感を覚えた。 子どもの頃って、隠れ家を探すもんだと思うのだけれど、 存分に気ままな時間を過ごさせてくれるネコババの家の心地良さこそが、 恵里子の場所だったのだろう。日常の中キラリと光る、救われる一瞬が描かれて居ます。 オススメです!!

  • くろ

    文章表現が素直でキレイ。語られているのはありがちな日常だけど、4K映像みたいに鮮やかに脳内映写機に映し出される感じ。

  • 処女作のみ読める

    瀧澤美恵子著『ネコババのいる町で』が好きです。どの世界にも、一発屋とか出落ちの方がいて、処女作だけが素晴らしいという場合があり、瀧澤美恵子は好例でしょう。表題作で文學界新人賞を受賞し芥川賞を受賞されました。がそれだけで、本書に収められている他二編は読む価値は乏しい。紛れ当たりのようなものですが、それはそれとしてネコババは、省筆を案じながら人物造形が確かだしほどよいユーモアやペーソスがあって、苦みはなくはないけれど気持よく読めます。三浦哲郎が芥川賞の選評のなかで、井伏鱒二の訳詩、サヨナラダケガ人生ダをひいてましたが、そういう味わいですね。もっとも井伏鱒二の訳詩は剽窃らしいですが。

  • 親に捨てられた、子供の目に映る人間模様とは。

    アメリカで奔放に生きる母親には、青い目の新しい夫と妊娠中の 子供がいる。三歳になったばかりの美恵子は一人飛行機に乗せられ、 言葉の通じない日本の祖母と伯母の元へ送られる。 娘の身勝手さにあきれながらも孫の世話をする祖母、姉のせいで 美恵子が自分の子ではないかと疑いをかけられる、男運の悪い伯母。 隣の新築の家にはネコババと呼ばれる、猫好きのおばさんがいて 美恵子は毎日あそびに行く。そこには猫番のネコバンもいる。 三歳の美恵子は、祖母、伯母と近所の人々に囲まれながら自分が 不幸とは思わずに成長してゆくのだが……。

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