日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
村の名前

芥川龍之介賞

村の名前

辻原登

中国奥地の村を訪れる日本人の視線を通して、場所の記憶、名づけること、異文化との距離を描く小説です。旅の具体的な手触りの奥に、言葉が土地や人間をどう捉えるのかという問いが置かれています。

土地の記憶異文化名づけ

作品情報

村の名を探す旅は、土地と記憶をめぐる静かな思索へ変わっていきます。

『村の名前』は辻原登の芥川賞受賞作です。文藝春秋から単行本が刊行され、紀行的な語りと小説的な寓意を重ねながら、見知らぬ土地を理解しようとする行為そのものを描きます。

書籍情報

出版社
文藝春秋
発売日
1990-08-01
ページ数
218ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784163120508
ISBN-10
4163120505
価格
1175 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

第103回(平成2年度上半期) 芥川賞受賞

レビュー

  • リアルで幻想的な世界

    芥川賞受賞作ということもあり、また個人的にも中国と関わる仕事をしている為、期待を持って読んだ。・・・筆者が中国関連貿易会社で働いていた経験があるからか、中国の風景描写はかなり細かくて、また登場する中国人達は一癖ある強烈な曲者揃いで、中国(それも内陸、奥地の田舎の方)に行けば本当に出会いそうなリアル感がある。物語の中身は桃源郷という名の村を中心としていて、幻想的で薄霧に包まれた様なミステリアスなストーリーだ。このリアル感と幻想感がミックスされて、独特の雰囲気を持つ内容に仕上がっている。これから中国で駐在して働く人、勉強する人、旅行する人などは持って行って、中国の雰囲気の中で読むと、よりこの独特の雰囲気を体感できると思う。

  • 揺蕩うというべきスッキリしない寸止め感が味わい

    商談で滞在した中国の田舎の村。その名は桃花源。幻想的な村の名前ではあるものの、主人公は行く先々で現実的な商売上のゴダゴタに巻き込まれる。かの国の人々と日本人の気質が良く著されている。 そんななか、ちょいちょい味わう不思議体験。夢か現か幻しか。ファンタジーとまでにいかず、教訓を示唆するものでもない。揺蕩うというべきスッキリしない寸止め感が本作品の味わいなのだろう。文学的に良くても小説として面白いかは別という典型的な作品。 同時収録、妻の怪し行動に妄想炸裂「犬かけて」はややこしさだけが印象に残った。【芥川賞】

  • あの頃の中国はそうでした‥‥

    レビューの感じ方がそれぞれなのは、中国体験の度合いによるのでしょう。私は中国のまさに内陸に10年住んでましたので、物語の空気感を細部に至るまで既視感をもって受け止めながら読みました。ただし、2017年現在の中国しかしらないかたには「小説」なのかもしれませんね。ちょっと前までの中国は真に魑魅魍魎の世界でした。これほどリアリズムのある中国モノはなかなかありません。

  • 読みづらかった。表題作のほうが面白く、桃源郷の中での想像とかけ離れた出来事や実情を描いていた。 ただ個人的に好きな内容じゃなかった、という話。

  • 新世代への過渡期的作品

    文学は、性とアイデンティティーを求めていた時代である。しかし、時代が若干問題意識のズレを露呈してもいた。次の時代の中心課題は、宗教とナショナリズムだろうと評論されていたように思う。 はっきりいって、この時期の純文学は力をなくしていた、いや、文学全体が力を失っていた。村上龍がわずかに異彩を放ち、よしもとばななとかとか村上春樹が溝を埋めてた。 だから、たしかにこの話は面白い。併録の「犬かけて」も、後半ぐいぐい面白い。だけど、どこか無理がある。次世代の課題に偶然近かった題材を取り上げた作品が、たまたま時流にあったのかな、と思わないではいられない。だから、どういう傾向の作品がどんなタイミングで芥川賞候補になるかという、情報としての価値もあるかもしれない。 少なくとも、一定時間の経過した今、作者から社会への挑発がない作品であったことだけは、はっきりしている。

関連する文学賞