日本の文学賞

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昭和が明るかった頃

講談社エッセイ賞

昭和が明るかった頃

関川夏央

昭和三十年代の映画と日活スターを手がかりに、高度経済成長前夜の日本社会の明るさと喪失を描く長編評論。石原裕次郎、吉永小百合らが映した時代精神を通して、戦後日本の変質を読み解く。

昭和三十年代映画日活高度経済成長戦後日本

作品情報

映画がまだ娯楽の王様だった時代に、人々はスクリーンの中の明日を見ていた。

文藝春秋刊の単行本。昭和三十年代の日本映画と日活を軸に、貧しさの中に希望があった時代の精神を描く。のち文春文庫版も刊行された。

レビュー要約

  • 映画スターと時代の空気を結びつけ、豊かさの前にあった希望と、その後に失われたものを考えさせる評論として読める。

書籍情報

出版社
文藝春秋
発売日
2002-11-01
ページ数
382ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784163591704
ISBN-10
4163591702
価格
2090 JPY
カテゴリ
本/エンターテイメント/映画/日本映画

第19回(2003年) 講談社エッセイ賞受賞

レビュー

  • 昭和を知る人も、知らない人も一読の価値あり。映画史としても秀逸。

    一読の価値あり

  • これは映画の本ではない。

    貧しいけれど、街には活気があふれ、明日は良くなるという希望があった昭和30年代。人々は銀幕とスターに夢を見ていた。著者は、そんな高度経済成長前夜の日本を、吉永小百合や石原裕次郎らを擁し、時代の雰囲気を象徴していた日活映画をテキストに検証する。明るい時代を表舞台から捉えているのに、印象は非常にクール。それは、やがて迎える斜陽の根を内包しながら活況を呈していた映画産業と、大量生産・大量消費の時代を並行させながら、物質的な豊かさを得た代償に、日本が何を喪失したのかを冷徹に見抜こうとしているからだ。特異な時代精神を読み解く洞察の深さは驚嘆に値する。

  • 昭和の伝道師

    昭和のことに興味のある人の入門書としても昭和をどっぷり経験した人も楽しまる一冊

  • 秀作

    「明るかった頃」の昭和とは、昭和30年代の昭和である。今から約半世紀余り前のこの時代は、日本の高度成長期の前半期にあたるわけだが、それは映画の隆盛期と衰退期とも重なる。昭和30年代は、人々の生活と行動様式が劇的に変化した空前絶後の10年間であったからだ。急速に変わる日常の中で、人々は自己の理想の未来を銀幕上のスターたちの生活様式や立ち振る舞いに仮託したのではなかったか。その意味で、当時のスターは紛れもなく庶民の「希望の星」であり、、それが昭和30年代の「明るさ」の象徴的側面であったように思われる。本書は、この時代を代表するスーパースターとして、前半では石原裕次郎を語り、後半では吉永小百合を語る。関川氏の著作を手に取るのは、本書で2冊目であるが、その秀抜な描写力、表現力には再び感服した。真の「サユリスト」とは、実は川端康成であり、石坂洋二郎であった、という解釈も秀逸である。ノーベル文学賞の栄誉に輝いた川端康成氏は、日本の高度成長期終了直後の1972年に謎の自殺を遂げられたが、この事件も典型的サユリスト・川端氏の特異な美学が背景にあったように思われる。

  • 日活映画を通して見た戦後

    吉永小百合の出る映画はなぜつまらないのか-。 サユリストを挑発する、そんな冒頭から一気に読ませる。 低迷する「日活」が、裕次郎や小百合を得て全盛期を迎えるところから テレビの台頭の中で衰退していくまでを描く。 さまざまな監督や俳優の名前、懐かしの映画名が出てくるが、 話の中心は、吉永小百合であり、次に裕次郎であり、彼らの出演した映 画である。 日活映画の中に現れた「戦後」の有り様を斬るところが秀逸。 映画好きや、「戦後」に関心を寄せる人にとって、読んで損のない好著。

  • 裕次郎と小百合で語ることに限界

    昭和30年代の日本を語る題材として映画を取り上げることにはそれなりに意味があると思うが、栃若もいれば長嶋も巨人・大鵬もいた。美空ひばりも三橋美智也もいた。60年安保もあれば高度成長もある。ごく限られたスターをきっかけに昭和30年代の日本全体の明るさを語ることにはおのずと限界がある。そのことを露呈した作品のように思う。

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