作品情報
『母なるもの』は、言葉の密度と題材の力で読者を作品世界へ導く。
『母なるもの』は、高橋英夫の関心が凝縮された作品として読める。文学や表現をめぐる思考を、作家・作品・時代の関係から丁寧に読み解く評論。
レビュー要約
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題材への向き合い方と文章の手触りを評価する声があり、作品の余韻や構成に注目されている。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 2009-05-27
- ページ数
- 277ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784163714400
- ISBN-10
- 4163714405
- 価格
- 874 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
自らの母と妹との幼き日々を語りつつ、小林秀雄、内田百閒、中原中也など近代日本の作家を参照して、“女性的なるもの”を考究する
レビュー
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言い表しきれないもの
本格的な近代文学論でありつつ、著者自身の母への追想(昭和十年代のある家族の見事なスケッチにもなっている)が静かにせせらぎのような音をたてて流れている。次のような一節。「母なるものは言語化がむずかしい。個別的な思い出、人生論的感想としてなら、多すぎるほど書かれているが、文学言語に立っていえば、母というものは人間関係や生の時間の中で言葉にしにくい領域を占めている」。ここから著者は小林秀雄の『モーツアルト』に触れ、この本が実は小林の「母の悲しみ」(―母が悲しんでいる、母のことを悲しむ―)のぎりぎりの表現、「言語化」でもあったことを、小林自身のエピソード(「おつかさんは、今は蛍になってゐる」)を交えながら解明していく。その他、中也や大岡昇平など近代文学、戦後文学を「母なるもの」という観点から読み直した新鮮なエッセイである。
関連する文学賞
- 伊藤整文学賞 第21回(2010年) ・受賞