作品情報
老いの時間と故郷の風景が、亀の存在を通じて静かにほどける。
川端康成文学賞受賞作「給水塔と亀」は、津村記久子の短編集『浮遊霊ブラジル』に収録されている。短編集は文藝春秋から刊行され、日常のずれとユーモアを含む全七作を収める。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 2016-10-24
- ページ数
- 180ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784163905426
- ISBN-10
- 4163905421
- 価格
- 490 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
初の海外旅行を前に死んでしまった私。幽霊となって念願の地を目指すが、なぜかブラジルに到着し……。川端賞受賞作「給水塔と亀」を含む、会心の短篇集! 【収録作】 「給水塔と亀」…定年を迎え製麺所と海のある故郷に帰った男。静謐で新しい人生が始まる。〈2013年川端康成文学賞受賞作〉 「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」…静けさのないうどん屋での、とある光景。 「アイトール・ベラスコの新しい妻」…ウルグアイ人サッカー選手の再婚の思わぬ波紋。 「地獄」…「物語消費しすぎ地獄」に落ちた女性小説家を待つ、世にも恐ろしい試練とは。 「運命」…どんなに落ち込んでいても外国でも、必ず道を尋ねられてしまうのはなぜ? 「個性」…もの静かな友人が突然、ドクロ侍のパーカーやトラ柄で夏期講習に現われて… 「浮遊霊ブラジル」…海外旅行を前に急逝した私。幽霊となって念願の地をめざすが。
レビュー
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津村さん、私のフェイバリット作家にいれるよ!
初の津村記久子。あらなんだかすごく具合よくしっくりくる、もっと早く出会いたかった。 奇想天外なシチュエーションとモノローグのくどくど考えることが普通に共感できる絶妙なヘン。 そうそうそうなのよ。 こだわりはあるけど執着は無い、概ね幸せなので恨みや妬みや報復など重くて湿ってる感情はない。 友達に勧めたらやっぱり面白い!と喜ばれた。 さくさく読めるんだが、再読しても言葉の選び方がじんわりと味わえる。 そして 表題作のラスト1ページはうっかり泣きそうになってしまった。ほんとよかったよ。私もそうありたい。
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とてもユニークです
はっきりしたオチもなく淡々と進みます。 それぞれのシチュエーションがあり、クスッとするものや、あー、こういうのアルアルみたいな感じで読めますし、発想がかなりユニークで楽しめます。 長い小説の合間などに読むのがいいかもですね。
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安心して読めます。
津村記久子さんの小説では、主人公は、腕まくりして頑張っていたり、あるいは理不尽なことに怒っていたりしても、どこか力の抜きどころをわかっていて、肩の力を抜いて自分流に世の中を受け入れていく。 この短編集では「給水塔と亀」が、主人公はおじさんなのに、爽やかで、自転車の流れに従って視界が開けていき、新しいことを学習するのを嫌がらず面白がっているところが、好感が持てます。
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上手く感想を言えない作家
津村記久子の本の感想を書くのは難しい、といつも思う。 読んでいて把握できたこと以上の何かが書いてありそうで、でもなさそうな顔をしていて(またそういう顔が上手い)、ちゃんと摑めなくて、ただ読後に、「…………」と思う。もちろん「何か」は書かれているのである。 あらすじを説明すると、だから何だ、という話であり、でも、だから何だという話をべらぼうに面白く書く作家なんだよなあ。 具体的な感想を書こうとすると、「地獄」のジダンのくだりは、一人の部屋なのに居酒屋にいるみたいな笑い声が出ました、みたいなことしか書けない。 でも自分にとって、存命の作家でここ十年常に三指に入る作家です。
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津村さんの語り口が好き
なのですが、短編集なので、するするとあっという間に読み終わってしまい、少し残念。 この中では、私も「運命」が一番好きです。 どこでも、人に道を聞かれる人っているよね。 そしてこの人は飲食業界における「福の神」なんだと思う。 ものすごいエリートなのに、自分ではそう述べない主人公の ちょっとまぬけな感じがいいですね。 「アイトール・ベラスコの新しい妻」も興味深かった。 (↓ここから少しネタバレ注意) いじめとかスクールカーストがテーマで 三人の小学校の同級生の少女のその後の人生が 二つの視点で語られていて面白い。 今、いじめに会っている人には励みになるかも。 「地獄」と「浮遊霊ブラジル」はバカバカしいような設定だけど やはり、作者らしい明るさ、清々しさがありますね。 「給水塔と亀」は私にはあまり面白さがわからなかったけど 静謐な感じがしました。
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オモシロイ。きちんと読めてるかはわからないけれど。
知人に勧められて読了。 気楽に、短時間で、クスリとしながら読める短編集。 普段文学作品を読まないので、何をどう評価していいか正直言ってわからないのだが、そんな人にでも読める作風。 読解力次第では違った景色が見えるんだろうな。
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とても愉快だ
ツボにはまった。とても愉快だ。寓意なんかどうでも良い。楽しく読んだ。 特にお気に入りは「地獄」。どんなトコ行っても、何とかなっちゃうもんさ。って感じで。 「運命」の「アジア人丸出しの私に道を訊くんだ」に大笑った。「この状況で何故自分を選ぶ?」の感じが分かりすぎて。 訊かれた瞬間、つい周囲を見渡して「あっちにもこっちにも『現地人』らしき人は溢れてるのにあえて何故自分?」。そう、しかも「知らないけど、知ってる」を駆使してしまう。 ついでに「私でいいはずがない」も。「ちょっとこれ、間違っちゃったんじゃないの?うあー、アタシ空気読めずに1等賞とっちゃったよ」みたいな。確かに特別不幸ではないけど、明らかに「スカ」だという自覚あるんだけど、いいの?的な。 楽しみました。
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新時代の純文学
志賀直哉や川端康成が呻吟しながら命を削って書いた小説を、この人はちょいと気楽げに書く。未明に呻き、歯ぎしりした痕跡が薄らいでいる(もちろんあるのだろうけれど)。これは、川上弘美の延長上にある女性文学の最先端ではなかろうか。 面白いんだ。そしてやや軽薄なんだ。で、読後感を人に語りたくなるんだ。軽快で、俗っぽく、そして明らかに作りものだ。例えば絵画がどこからどう見ても作り物なのに真実を描いているかと見えるように、本作は明らかな作為によって物語られているにもかかわらず、何かを象徴し、寓意しているようにしか受け取れないのだ。 面白い。映画化は無理。
関連する文学賞
- 川端康成文学賞 第39回(2013年) ・受賞
- 紫式部文学賞 第27回(2017年) ・受賞