日本の文学賞

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彼女は頭が悪いから

柴田錬三郎賞

彼女は頭が悪いから

姫野カオルコ

姫野カオルコの社会派小説。現実の事件を題材に、学歴、性差、階層、加害と傍観の構造を、被害者と加害者側の背景を交差させながら描く。

社会派小説ジェンダー学歴差別性暴力現代日本

作品情報

事件の周囲にある無自覚な優越感と差別を、読者自身へ問い返す。

文藝春秋から刊行された長編小説。東大生による集団わいせつ事件を想起させる題材を通じて、被害者がさらに叩かれる社会の構図を問い直す。文春文庫版も刊行。

レビュー要約

  • 事件の表面だけでなく、加害を可能にする社会の空気や読者自身の無自覚を突きつける点が強く評価されている。重い題材だが、怒りと検証の力で読ませる作品である。

書籍情報

出版社
文藝春秋
発売日
2018-07-20
ページ数
473ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784163908724
ISBN-10
4163908722
価格
1925 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

私は東大生の将来をダメにした勘違い女なの? 深夜のマンションで起こった東大生5人による強制わいせつ事件。非難されたのはなぜか被害者の女子大生だった。 現実に起こった事件に着想を得た衝撃の書き下ろし「非さわやか100%青春小説」! 横浜市郊外のごくふつうの家庭で育った神立美咲は女子大に進学する。渋谷区広尾の申し分のない環境で育った竹内つばさは、東京大学理科1類に進学した。横浜のオクフェスの夜、ふたりが出会い、ひと目で恋に落ちたはずだった。しかし、人々の妬み、劣等感、格差意識が交錯し、東大生5人によるおぞましい事件につながってゆく。 被害者の美咲がなぜ、「前途ある東大生より、バカ大学のおまえが逮捕されたほうが日本に有益」「この女、被害者がじゃなくて、自称被害者です。尻軽の勘違い女です」とまで、ネットで叩かれなければならなかったのか。 「わいせつ事件」の背景に隠された、学歴格差、スクールカースト、男女のコンプレックス、理系VS文系……。内なる日本人の差別意識をえぐり、とことん切なくて胸が苦しくなる「事実を越えた真実」。すべての東大関係者と、東大生や東大OBOGによって嫌な思いをした人々に。娘や息子を悲惨な事件から守りたいすべての保護者に。スクールカーストに苦しんだことがある人に。恋人ができなくて悩む女性と男性に。 この作品は彼女と彼らの物語であると同時に、私たちの物語です。

レビュー

  • 強姦目的ですらなかった、という衝撃

    こんな東大生ばかりではない、という反論は全く的外れである。文庫版の著者あとがきにも、実名だが「象徴的」に使っているとある。それを読まずとも、5人の東大生それぞれの成育歴が、祖父母、両親、兄弟姉妹の学歴にまで詳細に及んでいるのは、エリート、ハイソサエティという階層を読み手に強力に印象付ける意図であり、そのような階層の生み出す青年を「東大生」的人物として描いていることを読み取る必要がある。 もうずいぶん前に、湯浅誠氏が格差を論じる著書の中で、ゼミで議論をするときに、書物を引き合いに出すのではなく、「先週末の我が家のホームパーティーでアーチストの〇〇さんが言ってたんですが」といった類の話しかたをする学生が東大には少なくなくて、地方から受験勉強だけを頑張ってその場にたどり着いた者には立ち打ち出来ないバックグラウンドに圧倒されると述べていた。 そういう階層の男子学生のエリート意識が「頭の悪い」女子を、性的ですらなくモノとして痛ぶったことに罪悪感を全く感じないという人間が現実として存在することをあぶり出した小説だ。公判から明らかになったのが、罪状は女性を裸にして蹴ったり叩いたり、熱いラーメンをかけたりという暴行であり、性的欲望の対象ですらなかったというのは衝撃で、いっそう絶望した。 現在、イスラエルのユダヤ人が、「ガザのアラブ人は人ではなくヒューマンアニマルだから虐殺しても良心は痛まない」と発言しているのと通じる。イスラエルの人々が代々受け継いできた選民意識と、ホロコーストを過大解釈して我々には特権があると国が国民に教育してきたの結果だ。 個人的な話をする。私の妹は地方の短大を出て東京で暮らしているが、色々と屈辱感を味わったらしい。子どもの成人後、離婚し再婚した。認知症が始まっていた両親にその報告をするために帰省したが、再婚相手のことを、両親が忘れてしまうからと残していったメモに、相手の名前、年齢、そして東大卒、勤務先の有名大企業名だけが書かれていた事を思い出した。

  • 知らないわからない

    人を蔑むことというのはどういうことなのか。 酷い主人公だと思いながらも、どこか共感できてしまうところが恐ろしく、 自分も知らぬうちにやっているのではないのかと不安になりました。 結末がちゃんとないところも怖いです。

  • しんどい

    朝の通勤中に読んでいましたが、心がどんよりして、職場で明るく同僚に挨拶するのが少し大変でした。 誰の中にもあるけれど、できれば見たくない感情を真正面から描いていて、読む手が止まりませんでした。 女性にとって、「性的に見られること」で傷つくこともあれば、「性的に見られないこと」で傷つくこともある。その両方が丁寧に描かれていて、無理に強がり、装い、やがて自滅してしまうまでの過程がとてもリアルで共感できました。

  • 社会の全部を決めつける気はないが、間違いなく実在する人間の話

    この本を読んだだけで何もかもわかった気になるのも、だからエリートはどうのこうのと決めつける気もないけど、実際に昭和生まれ高卒の私が20年働きながら事故のごとく経験し血を吐きながら乗り越えてきたセクハラ、モラハラ、パワハラの数々を思い出しながら非常に嫌な気分で読み終えました。かなり生々しい気持ちになれます。こういう加害者たちは間違いなく実在します。

  • 表現の浅さは元の事件の軽視につながる。悪役令嬢転生モノのテンプレモブみたいな東大生にしては脳の足りない加害者。

    ★3つにしましたが、感じていることは★2つとか1つのレビューの方たちと似ています。 作者が東大嫌いで、ルサンチマン感じてるんだなということがわかります。 東大男も、東大女も、その周辺大学生たち男も女も色々とグラデーションですよ。そんな金太郎あめ切ったみたいな加害者を何人も出されても。 エリートは、効率的にいろいろなことを切り捨ててきたから、人格的に欠けているところがある。 ヒロインは、身も心も処女で(だっさい表現ですが、作中に描かれている)、純粋な恋心をもてあそばれたのだから、かばわれて当然の可哀そうな少女(大学生やぞ?)。 婚約破棄モノか悪役令嬢モノの無料漫画じゃないんだから、そこは文学の体をとるならちゃんと書きましょうよ。書けないならせめて、判で押したようなキャラを無駄に増やすのやめましょうよ。 それで、この点は私の中にある加害性だと思いますが、やられたことが、アレってねぇ笑 ごめん、笑ってしまいます。 ネタばれ避けておきますけど、ねぇ。 性加害を描いたと言ってて、アレじゃ、元ネタにしたと言われている事件をはじめ、報道に現れる性加害の軽視につながりませんかね。「女さんのいう被害ってこんなショボいのかよ」と思われかねない。という意味で、作者なり出版社なり帯コピーなり書評なりが主張している、社会問題への一石みたいなのは失敗していると思います。 ページ数に対して、起きることも出てくるキャラもしょうもなさすぎるんで、肩透かし―肩透かしーからの肝心の事件。さすがにここまで、平凡でだらだらした日常っぽい描き方をしたんだから、クライマックスの事件は相当ひどいことが描写されるんだろうなと楽しみに(失礼)思ってたら、その程度かーーまあわいせつ系事件の裁判をポルノ的に消費するような読者を排除するためにはそうした方がよかったのかもしれないけど……ともやもやもやもやです。 要するにエンタメにもなってないし、じゃあ社会風刺的な文学になってるかというとなってない。

  • いい

    他人の心の機微を読むとかエリートはしないよね。だからこそエリートなんだけど。

  • 頭に一撃を加えられる物語

    読み終えた後、思わず感じたことをノートに書き留めなければと焦ってしまうほど、考えさせられる物語。個人的には山岸遥という登場人物がとても好きだった。彼女は、登場人物の形をとった作者なのではと考えたりした。

  • 東大生≠人格者

    男社会、学歴社会が根強い我が国では共感されにくいかもしれないが、作者の問題提起の一つには「知能指数で人格を見極めることはできない」が含まれると思う。 長い競争社会を勝ち抜いた東大生が優秀であるならば、彼らが牛耳るこの国はもうとっくに幸せな国になっているはずなのに、未だに男尊女卑も汚職も格差も無くならない。 つまり、国を導くような立派な人格を持つリーダーを見極めるためには、知能指数ではない別のベクトルが必要だということに、もう良い加減気付いても良い頃合いではないだろうか。

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