作品情報
紀州の土地と血の重さを刻み、戦後文学に新しい地平を開いた芥川賞受賞作。
文春文庫版で確認できる中上健次の芥川賞受賞作で、戦後日本文学において被差別部落、血縁、土地の呪力を正面から扱った重要作である。文藝春秋公式で ISBN を確認し、ISBN-10 を ASIN として補完した。
レビュー要約
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濃密な文体と土地に根差した人物造形が強く読者を引き込む。閉ざされた共同体の息苦しさと生命力が同時に迫る点が高く評価されている。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 1978-12-01
- ページ数
- 272ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784167207014
- ISBN-10
- 416720701X
- 価格
- 759 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
この作家の郷里である紀州を舞台にのがれがたい血の宿命の中に閉じこめめれた、一青年の渇望と愛憎を、鮮烈な文体で描き出し、広く感動を呼んだ第74回芥川賞受賞作。 この小説は、著者独自の哀切な旋律を始めて文学として定着させた記念碑的作品とされ、広く感動を呼んだ。この作品では多くの登場人物が出てくるが、その多くは血縁関係のある人物であり、複雑に混ざり合った男女の性交の結果である。主人公はその複雑な血縁関係を恨み、父親を恨み、報復してやるのだと向かったのは妹の元であった。その憎たらしい父親の血は確かに自分の中に塊として存在していた・・・。表題作のほか、「火宅」「浄徳寺ツアー」など初期の力作三篇も収めている。
レビュー
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時間を忘れて読んでしまう
文体のクセは強いのに読みやすく、一気に引き込まれてしまいました。 地の文が素晴らしく、人や物語が常に動いているおかげで情景がありありと目に浮かびます。 どの作品も色欲が付き纏い、汗や泥のにおいのする人間が強烈に描かれています。 全て読みやすく、場面描写が強く印象に残る味わい深い作品ばかりでした。 小説のスジそのものよりも、主人公の目を通して見ている場面の映像がとても力強いのです。 「浄徳寺ツアー」のババアたちと話しているシーンや白痴の子が鳩に餌をやるシーンなど強烈に印象に残ります。 「火宅」では火をつけるシーンよりも賭け事に熱中しているシーンのほうがのめりこみました。 中でも初めに収録された「黄金比の朝」は不条理モノを読んでいるような不思議な気分になり かなり気に入りましたが、やはり一番は「岬」で人間が複雑に入り組んだ話を濃密に書き上げたさまは圧巻でした。 読んでいるうちに、気づくと胸が騒めき、後に尾を引くような作品ばかりでした。
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人間先ず、生きること!
「岬」を読んで、心が森と、文字通り静まり返った。「後記」にある著者の「読んで下さる方に、声は、届くだろうか?」に、『おぉ、届いている、届いている』と、声を返したくなった。主人公「秋幸、24歳」は、著者自身であろう。その青年にも、声を掛けたくなった。心患うことなど何もない。「人間というのは、死んだらあかん。死んだら、終わりや。皆んなみてみい。皆んな生きとるのに(256頁)」、正に君の母の言う通り、これです。この小説は、簡潔な表現が小気味よく、激しもせずに綴られて、内容は重いにしても、決してジメついた小説にしたくない、その著者の意思が明確に表れている筆致で、成功している。 著者の作品、ずうっと気になって来た。著者と結び付けて語られる「血」、この言葉が煩わしくて、これまで手にしなかったが、そう何時までも置いておけない、それで思い切った。人間、先ず生きることがあって、後はどう生きるか、どう生きたか、その結果をどう引き取るか、これに尽きると思って来た。「血」が先にあるのではなく、生きた結果としてある。それは誰しもにであって、著者の考えとそう外れてはいないだろう。その著者の生き方が直に感じられて、読んで良かった、の思いに今は充たされている。
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よかった
あ
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素晴らしい...。。。
最も小説というものを読んでいた時に、純文学というものを見知って、大江健三郎など今の時代からいえば、本当に時代錯誤かとも言えるようなものを数々見ていました...。。。 その時から中上健次という名は僕の中で重々しい響きを持っていましたが、それはその田舎で描かれる家族の話という純文学らしき読みづらさ、重さ、を感じすぎることからの敬遠でした...。。。 時が経って、僕は父親と完全に仲違いし、血縁、肉親、両親をも酷く憎むようになりました。その時に知ったのが、そして友人を介して思い返したのが(友人が中上健次の岬の話をしたため)、この小説です。 僕にはすんなりと入り込んできました。そして、あの時にはない重さを理解する能力が既に備わっていました。 僕には、この小説は金字塔と呼べる作品になるかもしれません。それは僕の中だけでもなく、そしてあなた、読者の、親を憎んだことのある読者には恐らくそうなのでしょうね...。。。 ノーベル賞受賞は彼にすべきだったという意見がありますが、本当にその通りです、これは世界中の各世代に、読み継がれてゆくべき作品であり、なおかつこの日本にだけ納まるべき作品でもありません...。。。
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現代の常民の文学
ある地方都市に生きる人々の日常生活を物語にしてみせた初めての本格的な文学作品である。
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もっと早く読めばよかった
心を掴まれ、立て続けに著者の作品を買っています。 登場人物だけでなく、歴史や風土など全てにおいて素晴らしい。
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恐ろしいのではあるけれど、確かな自己存在理由
中上さんの小説を読むのは2冊め。 心に体に、響く。 実の父母、義理の父、異父兄弟、その周囲の人々。 所収のいずれの作品も(たぶん)ご自身の体験・体感をベースに書かれていて、もうそれだけでドロドロ感満載なのだけれど、短文/長文、会話/地の文がグサッとくる按配で並べられて、読む者の心にじわじわとずかずかと踏み込んでくる。 と感じるのは、ある一定の年代以上の人だけかな。 いくら理屈を言い、どれだけ夢を描いても、そこから逃れらないのかなという、血。 遺伝形質とかDNAとかといった言葉を使えばなんとなく諦められる/割り切られるような気もするけど、血、と言うと自分ではどうしようもなくこれから先ずっと付いてまわる、そんな恐ろしさ。 恐ろしいのではあるけれど、確かな自己存在理由。 こういった感覚というのはずいぶん昔に感じたことはあるけれど、最近はトンと無くなっていて、あるいはずっとそれを無意識に遠ざけようとしていて、もう考えたくなかったのにそれを考えさせる、うん、中上さんってスゲエなと思う、のであった。
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重い絆。
絆(きずな)という言葉の使い方は、以前と今とでは少し異なっているのではないかと感じています。 どちらかというと解けない関係、業のような人間関係(特に血縁関係)を指していたのではないかと思うのです。 今では、家族の関係が希薄になったためか、絆というものが良い人間同士の結びつきを表すのに使われています。 この本は、昔の意味といいますか、重苦しい血の問題をテーマにしています。 面白い物語ではないのですが、このテーマで読ませるのは、著者の並々ならぬ力量のなせる技でしょう。 確かに、鮮やかな比喩が散りばめられていて文章の魅力を追うという一面があります。 それと血の問題は性の問題でもあります。 物語の反面として、人間とはどうあるべきなのかということを考えさせられます。