日本の文学賞

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書籍情報

出版社
河出書房新社
発売日
2003-11-22
ページ数
164ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784309015903
ISBN-10
4309015905
価格
800 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

第40回(2003年) 文藝賞受賞

レビュー

  • 小ネタが良くない。

    全部書かないのが文学だと勘違いしているきらいがあって、それは未熟だからいいのだが、気になるのは小ネタの使い方である。世界一のベストセラーは聖書だとか、「ロングバケーション」とか(ドラマかと思った)、題名が「オアシス」とかいう歌手からとっていたりして、その辺があやうい。世間には「オアシス」なんて知らない人もいるのだがそれが分かっているのかというあたりが気になる。

  • アンバランスなバランスの中で

    つい最近読んだアンソロジーの中に特に健康に害も無さそうなのにほぼ毎日ずっと床についているおばあさんが出てくる話があったが、このお話の中で独特のオーラを放つお母さんは、おのおばあさんのパラレル未来の姿なのかもしれない。昔は普通に出来なかった。理由なくサボるということが…… ピアノのレッスンや学習塾を理由なく(いや、行きたくないと云う明快な理由はあるのだが……)サボったときの罪悪感たらハンパなかった。今は普通に2ちゃんねるをしているニートが大勢いる。そういう意味では暮らし易い世の中になったのかもしれない。それでも家族の視線は責め立てる。世間の常識論が攻めに来る。世間に存在する個人個人は赤の他人になどまったく関心がないというのに…… そして日常はダラダラと続く。自分から何とかしようとしなければ、いつまでも悠久にダラダラと続いて閉塞する。偶然の事故で死ぬことができれば一時の安息が得られるかもしれないが、事故になんて普通は遭わない。遭っても簡単に死んだりしない。だからアノ曰く付きの自転車なのだろう。別にバイクでも軽自動車でも構わないが、初期設定上、これはやっぱり自転車なのだ。普通の世界では死者は甦らない。確かに想いは彷徨うが、生き残った者たちに物理的に残されるのは遺品のみだ。見て見ぬ振りなんて哀れな正直者には出来そうもない。だから、たとえ虚しく思っても我を通そうとするのだろう。そんなアンバランスなバランスを保ちつつヨロヨロと生きる市井の人々の姿を作者はとても優しく描く。表現の魔法でイタさをオカシさに変換する。解説者の解釈が大元の部分で○○だったのが笑えた。

  • 日常

    自転車を盗まれた主人公の日常が綴られている。 何もしなくなってしまった母親がいる以外はつりわけ特別さはない生活。 同居する姉、近所に住むおじ、そして連絡もよこさない単身赴任の父親。 家族というしがらみの下で、お互いを尊重して触れないようにする気持ちと、 相手に干渉してしまおうとする気持ちが交錯する。 人は誰でも悲劇の主人公になり得る。 誰もが自分こそはこんなにひどい運命を背負っていると考えることがある。 でも本当は気付いている。自分はまだましな方だと。 だからめったに行動を起こさない。しらずしらず不幸な道を選んでいたとしても。 めったに起こさないはずの行動を起こす人がいる。他人に迷惑をかけたとしても。 文句を言う権利は誰にでもある。しかし、自由に生きる権利も生まれながらにして万民に与えられている。 それを否定するのは、あるべきものがあり続けると思っている人間の甘えに過ぎない。

  • 中途半端な内容・・・。

    最初無くした自転車についてだらだら書かれて、途中から家族の話になって、最後にお母さんはどうなったの??思いつくままダラダラ書かれたのとちがうのかと思います。なにもおもしろくもなく中途半端な小説です。わざわざ買って読むと後悔します。

  • なんとなく、って感想。

    どうなんだろーなー。なにも起きない家族小説って最近多いですけど、彼女もその類。文藝に二作目の「タイムカプセル」がもう発表されて、もうすぐ単行本になるみたいだけど、なんだかヒット感ないなー。デビューさせた文藝の思惑が分からない。同時期に「黒冷水」と「魔女の息子」がでたけど、あれはどっちも購買層がいる。でも彼女の場合は、あれを買うというところまでさせるような魅力がたりない。このところ二十歳前後の作家が目立つけど、色がないという意味では島本リオに近いのかなー。でも彼女は野間とってるからなー。生田さんにも次の章をとらせるよう、河出の編集部もはっぱをかけるべき。でないとすぐ消えちゃうよ。

  • 説明のつかないほのぼの話

    冒頭で盗まれた青色の自転車。芽衣子があくまでこの自転車にこだわる理由は、最後に説明されているようで、全然説明になっていない。だいたい、チェーンもかけたその自転車が、なぜ自転車置場にずらりと並んだ自転車の中から盗みの対象に選ばれたのか、それもわからない。 理屈を言えばそうなのだが、そんな首尾一貫性などどうでもいいといったところが持ち味の小説なのだろう。娘たちから「粗大ゴミ」と言われる母親にしても、そうなってしまった理由もあいまいだし、最後の意外な行動の理由も不明である。それより、この母親の粗大ゴミぶりがおもしろい。 確かにどうということのない日常の会話が続くだけなのだが、ラスト・シーンはほのぼのしてなんだかよかった。姉が芽衣子を「メー子さん」と呼ぶのは、少々気になったが。

  • 買いです。

    文藝賞受賞作ということで購入したものの、長らく書棚の肥やしになっていましたが、書店で文庫になっているのを見て思い出し、読みました。母親にパラサイトされている姉妹の、主に妹の視点から描いている物語ですが、盗まれた自転車を探すことがストーリーの縦軸になっています。そのあたりについてあんまり触れると、読む楽しみを大きく削いでしまうので、これくらいにしておきます。それはさておき、妹のセリフと地の文とが地続きのようになっている文体が、本作の特徴としてまず挙げられると思いますが、渾然とはしておらず、知的、戦略的にコントロールされた印象の、そのあたりを楽しめるか否かも、本作の評価を左右すると思われます。僕は個人的には楽しめました。最後の落とし方もさりげなく、それでいて鮮やかで、次の作品を読みたくなる類いの佳作です。

  • はっとする表現の散らばるデビュー作

    『コイノカオリ』アンソロジーでもいい味を出していた生田さん。デビュー作でも、女の子の心情描写にはっとするような表現がちりばめられてます。いつもの自転車置き場に、とめたはずのあ愛用の自転車が見つからない、という場面からはじまるのですが、あるはずのものがないその唖然としたような気持ちがとても上手に表現されていて、引き込まれました。鬱か更年期のためにすっかり何もしなくなった母親を、そのままほっぽいている姉妹の姿や、そうした母と同居する妹を見かねた姉を「パラサイトさせられている」と表現するところなど、作者的にも主人公的にも考え方や言葉遣いに幼いところを感じる部分もありますが、まさにそういう年代の女の子が自分自身を描いた作品なのでしょう。これからの成長が期待できる、追いかけていきたい作家さんです。

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