日本の文学賞

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アルタッドに捧ぐ

文藝賞

アルタッドに捧ぐ

金子薫

書籍情報

出版社
河出書房新社
発売日
2014-11-20
ページ数
144ページ
言語
日本語
サイズ
13.7 x 1.8 x 19.7 cm
ISBN-13
9784309023373
ISBN-10
4309023371
価格
1430 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

「本間は、作中で少年の死体が発見された今日この日まで、少年が死を選ぶなど、露ほども考えてはいなかった。」 大学院を目指すという名目のもと、亡き祖父の家で一人暮らしをしながら小説を書いている本間。ある日、その主人公であるモイパラシアが砂漠で死んだ――彼の意図しないところで。 原稿用紙の上に無造作に投げ出された少年の左腕。途方にくれながらも本間が、黒インクが血のように滴る左腕を原稿用紙に包み庭に埋めようとした時、そこから現れたのは少年が飼育していたトカゲの「アルタッド」だった……。 幻想的かつ圧倒的にリアルな手触りを持つシームレスな小説世界と、その独自の世界観を支える完成された文体、そして「書くこと」の根源に挑んだ蛮勇に選考委員が驚愕した「青春 小説」の傑作誕生! 第51 回文藝賞受賞作。 【文藝賞選考委員絶賛! 】 「何故虚構なのか」という原点を描かんとする強度ゆえの真摯さ。期待の受賞。 ――藤沢周氏 私はこれを圧倒的に推した。もう断然こういう小説が好きだ。アルタッドが出てくるところは何度読んでも楽しい。主人公が書く小説が主人公の生きる世界の完全に外側にある、それが非常に独特な感じをつくっているのも書き手としての大きな資質だ。こういう小説は前例がない。 ――保坂和志氏 ときおり顔をのぞかせる、作者の意図せざる無邪気さがこの書き手の魅力。大きな可能性を開花させてほしい。 ――星野智幸氏 すべての候補作品に登場する人間たちを差し置いて、アルタッドが一番キュートで魅力的。描写力のたまものだろう。 ――山田詠美氏

1990年、神奈川県生まれ。慶應大学文学部仏文学専攻卒業。同大学大学院文学研究科仏文学専攻に在籍。本作で第51回文藝賞を受賞。

レビュー

  • 純文学のようなSF

    第51回文藝賞作品。丁寧な描写で、不思議で優しい雰囲氣のある作品です。文体も面白く、純文学の趣を味わえる。純文学は、この雰囲気だけを楽しむことも大事。

  • いくらかの瑕疵はあるが、注目の作品(=新人)だと思う。

    著者と同じ1990年生まれということもあり、関心を持って読ませてもらった。 推薦文や煽り文句にもある通り、保坂和志に似た雰囲気の文体だ。 文章を綴ることへの気負いはないものの、要所要所の力の入った描写、言葉選びのセンスなどは目を見張るものがある。また人の意識や感覚が現実の描写を出入りし、侵食し、また流れるように戻ってくる――主人公・本間が執筆中の登場人物が思惑から外れ、不意に死んでしまったこと。その原稿より行き場を失った想像上のトカゲ、アルタッドが出現し、世話をするようになる――そんな筋書きからも、想像力と病理の隙間を縫うような独特の世界を垣間見ることが出来ることだろう。 静謐さと穏やかなモラトリアムを描いた「トカゲ萌え小説」と言ってもいい本作だが、欠点があるとすれば「物語がない」ことだろう。 物語の中絶に伴う思わぬ副産物(=アルタッド)を愛で、それを通じて「書くこと」――ひいてはその奥に潜む思想、思念、価値観など――について考え、回答を出す……言い換えると、物語はすべて「書くこと」、その根源に対し集約されているのだ。だが、主題に対する結論は本人の意識のみで終わってしまっている。そのアンサーは本間の創ろうとする小説でもって行われてこそ、人を……ひいては物語を描くことの本懐だと思うのだが、どうだろうか。まあ、読み手の需要の問題かもしれないが……。 終わり際のデッサンの描写は静かながらも熱量と美しさに溢れた指折りのシーンだ。全体のテーマこそ青臭い哲学をむき出しのまま扱ってしまっているが、処女作であればかえってその不器用さも好印象かもしれない。いろいろと難癖をつけてしまったけれど、より内省的な方向になるか、はたま幻想的な色彩を深めていくかはさておき、次作に期待したい。頑張れ!

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