日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
神前酔狂宴

野間文芸新人賞

神前酔狂宴

古谷田奈月

『神前酔狂宴』は、神社の披露宴会場で働く配膳スタッフたちを通じて、結婚式、金、愛、国家、神を絡める長篇小説。祝祭の茶番を演じる労働の場から、明治の軍神を祀る神社の歴史が浮かび上がる。

結婚式神社労働国家祝祭

作品情報

披露宴の華やかさの裏で、労働と信仰と国家の物語が騒がしく絡み合う。

河出書房新社公式ページでISBN、ページ数、発売日、受賞情報を確認した。第41回野間文芸新人賞受賞作。

レビュー要約

  • 祝祭の明るさと不穏な歴史意識を同時に走らせる勢いが評価されている。会話と場面の熱量が強く、過剰さを魅力と感じる読者が多い。

書籍情報

出版社
河出書房新社
発売日
2019-07-11
ページ数
240ページ
言語
日本語
サイズ
13.8 x 2.3 x 19.6 cm
ISBN-13
9784309028088
ISBN-10
430902808X
価格
1760 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

新世代超弩級の才能が放つ鮮烈のパーティー文学が、明治151年の呪縛を切り裂く! 第41回野間文芸新人賞受賞作。 「ブーケトス一万、キャンドルサービス十万、完全に狂ってる! なんでみんな、結婚を披露するの」? 神社の披露宴会場で働く、浜野、梶、倉地ーー配膳スタッフとして日々披露宴の「茶番」を演じるうちに、 神社の祀る神が明治日本の軍神であることを知り……。 結婚、家族、日本という壮大な茶番を切り裂く、圧巻の衝撃作。 金と愛と日本と神が交わる、狂乱のパーティーがいま始まる! 「今月のプラチナ本」(「ダ・ヴィンチ」2019年11月号)他、各紙誌話題沸騰。絶賛の声、続々。 ■今年屈指の傑作ーー鴻巣友季子(「小説トリッパー」2019年秋季号) ■近代以降の日本がなだれ込んでいるーー栗原裕一郎(「週刊新潮」2019年6月6日号) ■読み応えたっぷりのお仕事小説ーー日経新聞(2019年8月24日) ■この圧倒的喜劇を読んでいると安心する。あまりにも簡単に人の愛とやらを煽り立てる「祝祭」とその感動という幻影が、 見事な手捌きで「虚」の引き出しにしまわれていくさまがひたすらに正確で痛烈で滑稽で、快哉を叫びたくなる。ーー鳥飼茜 ■なぜ人は自分の言葉や虚構に飲み込まれていくのか。その歓喜と狂気を描いた傑作。ーー中島岳志 ■披露宴会場の仕事の細部を本物の現場感覚で見事に描きだし、結婚とは何かという普遍的な事柄とともに、 神社や宗教を絡めてテーマを広げ、全部をうまく溶け込ませている。 橋本治『草薙の剣』とも共通する、時代との独特の接し方。ーー佐伯一麦(「群像」創作合評) ■立ち位置なんて、決めたくない! 強い意志をもつ主人公浜野。相棒は、熱血青年の梶。 正義を背負って参戦する、神道女子の倉地。登場人物の葛藤が、なんともチャーミングな痛快作。 古谷田奈月さんは、華燭の典の楽屋の壮絶な闘いをすべて書きつくされた。ーー石田千(「群像」創作合評) ■従来の結婚式小説とは違い、神道それ自体を描き出し相当奥行きのある作品に仕上がっている。 震災やオリンピック会場の建設などの時事的な事柄をも主人公の経験に沿って語る、 一種の平成史小説。ーー陣野俊史(「群像」創作合評) ■軽妙な語り口ですがすがしい読み心地。 神社政治のメカニズムの扱いにも慣れた彼が、ライバル関係をうまくやり過ごし実現させるのは、全く新しいお一人様での結婚式。 荒唐無稽のようでいて、意外と切なく、締まった結末。ーー阿部公彦(「共同通信」) ■軍神も神社も架空のものだが、いかにもなリアリティがあり、ワリの良い仕事だからと軽い気持ちで働き始めた主人公を通して、 読者は「天皇制」の「日本」の「社会」と「家族」の不可思議に対峙させられる。力作である。ーー佐々木敦(「東京新聞」) ■右寄りの思想の空無な状態を戯画化し、それだけでなく、彼らの寄る辺なさに哀切を漂わせている。 さらに現代の婚礼における差別主義をも暴く射程の広い物語。紛れもなく著者の代表作。ーー長瀬海(「週刊読書人」)

著者略歴 1981年千葉県我孫子市生まれ。2013年「今年の贈り物」で第25回日本ファンタジーノベル大賞を受賞(選考委員=荒俣宏、小谷真理、椎名誠、鈴木光司、萩尾望都)。同年同作を『星の民のクリスマス』と改題し刊行。17年、『リリース』で第30回三島由紀夫賞候補、第34回織田作之助賞受賞。18年「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞受賞。同年「風下の朱」で第159回芥川龍之介賞候補。『無限の玄/風下の朱』で第40回野間文芸新人賞候補、『望むのは』で第17回センス・オブ・ジェンダー賞大賞受賞。

レビュー

  • 文体がシッカリした骨太の小説

    神前式結婚式場を舞台にしたユーモア小説です。 文体がシッカリした骨格の太い小説です。 全編、ほとんど空白がありません。 密度が濃いです。 プロットが明確なので、読みやすく、物語に引き込まれてゆきます。 満足な読後感です。

  • 社会の詐術に目を走らせ、金魚すくいするかのような

    以前に、女子野球を扱った作品を読んだことがあります。 純粋すぎて社会とのズレを解消できない登場人物が印象的でした。 側から見ると過剰で滑稽で、でも、真剣な生き方に、 笑飛ばしてすむことはできない居心地の悪さを突きつけられた気がしました。 読んでいるうちに思わず日常を忘れ楽しい時間が過ごせる、という小説ではないですが、 作者と視点を共有することで、ある種の、ガス抜きのような、 共犯性の確認のような、そういう機能があるのかなと思います。

  • 圧倒的

    あとでゆっくり読もうと思い、とりあえず最初の方をちょっとだけ見ようとしたら、 気づいたら、もう50ページ! どんどん引き込まれてゆく圧倒的な文章力です。 読み終わって最後のページまで来た時には もう終わりか、終わってほしくなかった気持ちでいっぱいでした。 最初に設定が載っているので、そのページを見返しながら読み始めました。 この作品は「段落分け」がきっちりしているようですが、 一段落が多行であっても、流れるような文章なのでその段落が一気に読み終わります。 セリフの出てくるタイミングがいいし、 長いセリフでもリズムもテンポもよく、読みやすい セリフに臨場感があり、読者は自分がその場に居るかのよう 場面が急展開するところでも、新しい人物が初登場する時も、 そこが絶好のタイミング 一気に読んでいけるし、歴史の勉強もできます。

  • 神前披露宴

    神道系の結婚式のバックヤードを描いた小説です。舞台設定が、奇抜でそれだけでも興味を魅き、成功していると思います。興味を魅き、成功していると思います。 披露宴会場の舞台裏の戦場のような現場をとてもリアルに描いていて、面白かったです。 また、神社や神道といったものを信奉する人たちの高貴さというものを感じました。 終盤では、同性愛の結婚式といった今風なテーマに踏み込んでいきます。そして、さらに凄いと思ったのは、一人の結婚式といったブッ飛んだ話にまで進んでいます。作家の想像力の大きさを感じる作品で、とても面白かったです。 ラストがやや尻切れトンボな感じでした。最後は、もう少しまとまりをつけてくれたらなあと思いました。 評価は、星4つと致しました。

  • 途中で飽きてしまいました

    未校正の本を頂いたので、読み始めてみましたが、どうにも冗長な感じで、読んでいて面白くなくて、途中で断念してしまいました。 具体的な描写など、いいじゃないかと思って読み始めたのですが、だんだん飽きてきました。 もっと読み進めば面白いところも出てくるかもしれませんが、50ページくらいで、断念してしまいました。 面白い本だと、最初からぐいぐい引き付けて、気が付いたら読み終わっていたってのが多いですが、これは、そうではありませんでした。 年齢のせいかもしれませんが、60過ぎのおじさんが読む本としては、面白くなかったです。 もうちょっと時間が出来たら、おちついて読み返してみようと思います。 そしたら、追加レビューします。

  • 微妙な現代小説で、ファンタジーじゃないけど神社はマジックリアリズム

    タイトルから想像するような、ファンタジーっぽい作品ではなく、神社の結婚式場を舞台にした、青春小説、というイメージで考えてください。 とはいえ、神社という場所で、神道の信者でもないのに結婚式をあげること、そこにお金をかけること、そもそも使える神様が新郎新婦であること、なのに、結婚は家どうしのイベントになっていること。不思議なことがたくさんあって、そこでいちいち納得させられていくっていうのは、日本という国に残ったマジックリアリズム的な世界なのかな、とも思います。 そうした中、男女にとらわれない結婚式を打ち出し、それがどんな形になっていくのか、後半の関心につながっていきます。 でも、かなり地味な小説で、派手なロマンスも事件もなく、主人公は派遣社員のまま現場を任されるようになっていく。このあたりも、現代の矛盾みたいなところが、底流として流れているのかもしれません。 はっきり語られていないけど、そうした批評性くらいはあるよ、と。そんな小説です。

  • 残念ながら

    朝日の書評で斎藤美奈子が「今年の3点」の一つに挙げていたので読んだ。 「虚飾と茶番に満ちた宴会場」が描かれ、改元、桜の宴に揺れた年にふさわしいと。 だが残念ながら、期待はずれ。 てっきり神道信仰と人間の営為との乖離が滑稽に、深みを伴って展開されるもの、と思っていた。 だがひたすら皮肉っぽく、浅薄だった。 結婚式ではなく披露宴を、しかも披露宴会場の働き手を中心に物語は展開する。 そして対となる別の神社との絡みで主舞台の神道信仰の「虚飾」が描かれる。 しかし相対する神社について教条的なことしか語られないので「虚飾」は薄味となる。 披露宴会場の裏方の描写はリアリティがある。 だが秒刻みの進行の大変さを真面目に描くのであれば、 それを破るもっとドラマチックな展開がなければ披露宴は「茶番」とは感じられなくなる。 ”祀られている本人が神とされることを望んでいなかった。それゆえここに神はいない” という点が「茶番」のクライマックスなのだろう。 だが、凡そ神道の根幹には、畏敬の念を抱かせるものを何でも拝む性質を持っていることを知っているならば、 「言わずもがなのお約束」としか感じられない。 そして本作の最大のつまらなさは主人公の描写。 職場におけるスキルは上げるが、年齢が上がっても青臭いまま。なんとも浅い。 もっと考え、反応し、成長する姿を描き出して欲しかった。 ストーリーは平坦で、敵対関係となるヒロインの最後の一言まで期待外れだった。

  • 大きな子供の復讐

    ★勢いのある文章だが、面白くはなかった。 主人公は思想優等生であり、家にも会社にも国家にも帰属意識を持たず、結婚式・披露宴を茶番だと考え、友人と深く付き合うことは避け、自分のためだけに脚本を書く。 しかし、お金のために披露宴会場で働き、父親が送りつけてくる仕送りは拒まず、日本脱出は図らない。 理想と現実の不一致に苦しむ主人公は、上司と顧客(と父親)以外の人間に八つ当たりを繰り返す。 この小説は結婚式場・披露宴会場を舞台とした話なのだが、主人公が最初から最後まで文句ばっかり言っているので、読んでいて全然楽しくない。 ★キャプテンが女だった 登場人物の性別や外見を説明してくれないので読みにくかった。 ★すごい貯金術 主人公は、東京で一人暮らしをしており、時給1200円〜1800円でボーナス無しの仕事をやっていて、仕事の後に飲みに行く習慣があるにもかかわらず、十数年で700万円の貯金を作った。 これに加えて、父親からの月5万円の仕送りも別に貯めてある。 ★派遣の仕組みは? ある人物は30年間同じ職場に派遣されていて、訳あって首になった(別の職場に移った)。 主人公は同じ職場に10年以上派遣されている。 ★権力に従順な主人公 主人公は、同僚や昔の友人や遠くに住んでる姉には激しい口撃を仕掛けるが、職場の上司に対しては阿り諂うように話しかける。 また、仕送りを送り付けてくる父に対しては、特に文句は言わない。 ★大きな子供の復讐 二つの新権力、特殊な上司(宮司)と特殊な顧客(一人で結婚式)が登場し、結婚式・披露宴のやり方を変更する機会が訪れる。 従いたくもない形式に従わされてきた怨みを晴らす時が来た。

関連する文学賞