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文藝賞

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坂本湾

宅配所で箱を仕分ける作業員・安が、ある箱の中身を覗き見たことから、次々と箱が消えていく。顔なき労働者たちの倦怠と衝動を描くベルトコンベア・サスペンス。「私」であることを求められない労働の中でいかに「私」を保つかを問い、時代の息苦しさを暴き出すデビュー作。

労働アイデンティティ疎外サスペンス現代社会

作品情報

テープを引き剝がし、蓋を開けて、覗き込みたい——その衝動が、静かに、確実に世界を歪めていく。

霧の立ち込める宅配所で、安は今日も流れてくる箱を黙々と仕分ける。「テープを引き剝がし、蓋を開けて、覗き込みたい」という欲望がじわじわと心を侵食し、ある夜ついに箱の中を覗き見る。その瞬間から、箱は一つ、また一つと消えていく。小川哲・角田光代・町田康・村田沙耶香が選考を務めた第62回文藝賞を受賞し、第174回芥川賞候補ともなったデビュー作。

レビュー要約

  • 高い評価。短い作品ながら密度が高く、終盤に向けて深まる不快感と閉塞感が印象的だという声が多い。

  • 賛否両論。現実と妄想の境界が曖昧になる閉塞した雰囲気と、4人の視点を移動させる語りの巧みさが評価される一方、感情移入しづらいという意見もある。

書籍情報

出版社
河出書房新社
発売日
2025-11-17
ページ数
120ページ
言語
日本語
サイズ
14 x 1.3 x 19.4 cm
ISBN-13
9784309032467
ISBN-10
430903246X
価格
1650 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

デビュー作にして第174回芥川賞候補作! 第62回文藝賞受賞作。 宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描き、新時代の〈労働〉を暴くベルトコンベア・サスペンス。 「私」であることを必要とされない労働において、「私」を保ち続けることはいかにして可能か?時代の閉塞感をこれでもかと執拗に抉りだす圧巻のデビュー作。 \\小川哲氏、角田光代氏、村田沙耶香氏、推薦!// こんなに不気味で心地の悪い小説は、高度な技術、強い決意、正確な批評眼がなければ書けない。とにかく周到でストイックな小説。 ――小川哲(文藝賞 選考委員) 共感も感情移入もさせず、4人は人間性をも感じさせず、現実か妄想かもはやわからないのに、それでも「読ませる」力のある小説だった。 ――角田光代(文藝賞 選考委員) 計算された不気味さの中を歩く仄暗い快楽の中にいつのまにか導かれていた。 次の作品世界を読みたいと感じる小説だった。 ――村田沙耶香(文藝賞 選考委員) 薄霧のたちこめる宅配所。粛々とはたらく作業員たちのあいだで、レーンに流れてくる無数の荷物を仕分ける安(あん)。一日中ほどんど誰とも口をきかず、箱の中身を妄想することで単調な労働をやり過ごすうちに、箱の中身と妄想の「答え合わせ」をしたいという欲望が安を蝕んでいく。あるとき思いもよらない理由から、決して開けることの許されない箱の中身を覗きみることに成功すると、たしかにあったはずの箱が次々と消えていくようになってーー。 装幀:川名潤 装画:杉野ギーノス

坂本 湾(さかもと・わん) 1999年、北海道生まれ、宮古島・福岡県育ち。『BOXBOXBOXBOX』で第62回文藝賞を受賞。

レビュー

  • 提示された断片を楽しもう。もちろん、そうしなくともよい。

    この本は曖昧な世界のお話です。 終始誰かの三人称で書かれた世界で、ストライキが発生して自分の苦しみから逃れるために職場が無くなる夢を見たり、それぞれの人物が他者から見ればハッピーに見えるオチを迎えます。 工場ライン、もう少し言えば、物流を担う企業に派遣やバイトとして勤め、担う仕事、見えている景色が全てが断片的で、何一つ流れや意味を見出出せない。 しかし、機械になりきれる人間はそう多くはない。これは、産業革命以降付き纏う職業人の悩みでもあるかもしれません。それを高いリアリティ、薄い膜のような階級差、現実世界から輸入してきた断片情報で書き上げています。 この本は全ての人にオススメできる本ではありません。 なぜなら、この本は作中世界の事実を充分に提示しておらず、どこまでが事実で、どこまでが虚構なのかを曖昧にしているからです。 フィクションの世界の、物語のルールのお話ではなく、100pの間紡がれてきたお話ですら、全てが意味を見出そうと断片を紡いできた空想に過ぎないお話の可能性があるからです。 せっかく読んできたのに、その楽しみが単なる嘘だった、というのは、もしかしたら期待を裏切ってしまうかも。 私個人の感想として、全員が作中で描写されているようになんか良い感じにハッピーエンドを迎えて、ついでに全体像の見えない苦痛は恒久的に取り除かれてほしい!と思いますし、そこで考えを止めることも出来ます。実際、そのように物語は進んで幕を降ろすからです。 同時に、何も物語にならないような、名前の無い労働者の空想…だが、提示されてきた作中のルールから外れた異質なルビを振られていたり、その労働者の日常や生活、来歴の断片を空想出来る僅かな余地がある。…ということも楽しめる両面性がこの小説にはあります。 再度言いますが、万人にはオススメできません。 ですが、私にはほんの100p、たった2時間の本にも関わらず、そして全てが曖昧で、手元には何も残らないはずなのに、こうやって長文を書きたくなるほどの熱を残してくれました。 えーと、でも私は他の人にもこの本を買ってほしいし、手に取って読んでほしいので、ブックカバーを開けると、まるでダンボール梱包箱のような色合いと、警告表示が書かれた凝った裏表紙も触ったり眺めるのもいいよ!と書いておきます!ぜひお手元に!

  • カフカ + プロレタリア文学 = 文藝賞受賞

    霧の立ち込める不気味な工場の中、 黙々と働く作業員達の様子など情景描写が素晴らしい。カフカみたいな不条理な世界なのかなぁと思いきや、そういう話ではない。 表紙の裏に書いてある 『決して開けることの許されない箱の中身を覗きみることに成功すると、たしかにあったはずの箱が次々と消えていくようになって--』 というのは正直ミスリードだ。 詳しくは本文を読んでほしいが、 ファンタジー的な展開は最後までない。 どちらかと言えば、プロレタリア文学的な展開になりそうな所を、無理やりハッピーエンドに収めた感じだ

  • 気味悪い世界だが、これって実世界を正確に猫写している

    気味悪い職場はデストピアかと思ったが、読んでいるうちに、これって現代の職場で感じるものそのものではないかと感じた。職場で何かあるとルールで縛られる閉塞感、正規と非正規の違い、仕事のやりがい、コミュニケーションがなくなっている現場。それによる孤立感、などなど。作品での描写は極端だけど、根底に流れているものを感じ取ると、自分が今置かれている状況とリンクする。ルールが作成されれば、現場では業務影響なければ許容する管理者も現実的で、これは閉塞感の中の救いみたいなものだろうか。

  • 面白い。

    面白かったです。 次の作品も楽しみです。

  • 期待しつつも

    安部公房的な観察眼と積み上げ方が面白くもあるかなと思ったが、もう少し端正さがほしい

  • 箱の中身は

    箱の中身はわかりきっている。それと同時に、あんまり大事なものを詰めないのも、想像したらわかる。 運ぶこと自体が尊いという態度は理解できる。が、最後にそのブラックボックスを知らないフリできるのは、箱を流通してるものだけだ。 要するにそのなかに、猫の人形があると言われればそれがあって、化粧品があると言われればそれがあって、みたいな。そういうことにしておこう、っていうのが正しい。 箱をわかるのは世界から嫌われやすい。だから、誰かのわかった態度を、それは違うよ、とやんわりと伝えるのが働いてる側の責務であって、言い分でもある。 それにうんざりしたとき、霧の中にいる感じになった。どうして箱の中身が温かいと勘違いしていたのか。この先を続けると、君の言葉はいつも透明になるのだが。

  • 難しかった

    最後のあたり、凡人の私には全くわかりませんでした。わかる人、解説してほしいです。

  • 霧は晴れません!

    amazon商品紹介より以下。 デビュー作にして第174回芥川賞候補作! 第62回文藝賞受賞作。 宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描き、新時代の〈労働〉を暴くベルトコンベア・サスペンス。 「私」であることを必要とされない労働において、「私」を保ち続けることはいかにして可能か? 時代の閉塞感をこれでもかと執拗に抉りだす圧巻のデビュー作。 \\小川哲氏、角田光代氏、村田沙耶香氏、推薦!// こんなに不気味で心地の悪い小説は、高度な技術、強い決意、正確な批評眼がなければ書けない。とにかく周到でストイックな小説。 ――小川哲(文藝賞 選考委員) 共感も感情移入もさせず、4人は人間性をも感じさせず、現実か妄想かもはやわからないのに、それでも「読ませる」力のある小説だった。 ――角田光代(文藝賞 選考委員) 計算された不気味さの中を歩く仄暗い快楽の中にいつのまにか導かれていた。 次の作品世界を読みたいと感じる小説だった。 ――村田沙耶香(文藝賞 選考委員) 薄霧のたちこめる宅配所。粛々とはたらく作業員たちのあいだで、レーンに流れてくる無数の荷物を仕分ける安(あん)。 一日中ほどんど誰とも口をきかず、箱の中身を妄想することで単調な労働をやり過ごすうちに、箱の中身と妄想の「答え合わせ」をしたいという欲望が安を蝕んでいく。 あるとき思いもよらない理由から、決して開けることの許されない箱の中身を覗きみることに成功すると、たしかにあったはずの箱が次々と消えていくようになってーー。 装幀:川名潤 装画:杉野ギーノス * 薄霧のたちこめる宅配所……ってところから「何だこの世界」の始まり。 コメディなのか、シリアスなのか。珍妙やなと読み始めた。 閉塞な環境下、ただ同じ作業を繰り返すだけの労働。 抑圧で衝動に駆られる。それは一人ではない、皆が狂っていく。 読んでて気味が悪いったらない、装画のように、意味のわからない抽象画を見たようだった。かといって、面白いんだよね。クセにもなりそうな。 闇ではなくて霧。読んでしまっても、晴れない。

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