日本の文学賞

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パンと野いちご: 戦下のセルビア、食物の記憶

紫式部文学賞

パンと野いちご: 戦下のセルビア、食物の記憶

山崎佳代子

セルビアに暮らす著者が、戦争と難民化の記憶を食卓から聞き書きした記録文学。料理やレシピを入口に、個人の生の記憶とバルカンの歴史が重ねられる。

セルビア戦争記憶食文化聞き書き

作品情報

食べ物の記憶から、戦火を生きた人びとの声がよみがえる。

勁草書房刊。第一次・第二次大戦、ユーゴスラビア内戦、コソボ紛争を背景に、食と記憶を通して人びとの体験を記録する。

レビュー要約

  • 料理の具体性から戦争の記憶をたどる構成が評価されている。重い題材を、生活の手触りを失わずに描く点が印象に残る。

書籍情報

出版社
勁草書房
発売日
2018-05-15
ページ数
320ページ
言語
日本語
サイズ
13.5 x 2.1 x 19.4 cm
ISBN-13
9784326851942
ISBN-10
4326851945
価格
3520 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/エッセー・随筆

戦時下で、難民状況の中で、人びとは何を食べていたのか。セルビアに住む著者が友から聞きとった食べ物と戦争の記憶。レシピつき。 卵と生クリームなしのマーブル戦争ケーキ。停電で溶けだした冷凍庫の肉で銃弾に怯えながら催すバーベキュー大会。第一次、第二次大戦、ユーゴスラビア内戦、コソボ紛争……戦争の絶えないバルカン半島に長年住む著者が戦下のレシピを集めた。食べ物とは思い出のこと。そして甦りのこと。繰り返される歴史のなかの、繰り返しのない一人ひとりの人生の記憶と記録。 2019年9月 第29回紫式部文学賞受賞 【目次】 はじめに 小さな歴史手帖 語りの声に耳をすますまえに ジェネリカの青い実 I 第二次世界大戦の子供たち パンの話─ユディッタ・ティモティエビッチ 僕はスマートだった─ゴイコ・スボティッチ トランク一つの旅─アレクサンドラ=セーカ・ミトロビッチ 橋と子供─ラドミラ II 料理とは、甦りのこと ジャガイモと薬─ドラゴスラバ・ラタイ 母の手紙─ブラード・オバド 魚と野獣─ダルコ・ラドゥーロビッチ パンと牛乳─リュビツァ・ミリチェビッチ III 嵐の記憶 私は市場に─ゴルダナ・ボギーチェビッチ 僕は元気だ─スラビツァ・ブルダシュ 小鳥が木の実をついばむように─ゴルダナ=ゴガ・ケツマノビッチ マルメロとイラクサ─ベリスラブ・ブラゴエビッチ IV 馬の涙 コソボ・メトヒヤの女声たち 五月のある晴れた日に 小さな家、大きな食卓─ドゥシカ・ヤーショビッチ 火酒とピストル─ラトカ 逃げていく日─ミーラ、リーリャ、ビリャナ、ドゥシカ 赤く染めた卵─スターナ 雨、雨、雨だった─ふたたび、リーリャ パンを焼く、生きていく─スラビツァ 魂の香り─コソボ・メトヒヤの女声たち 人生でいちばん大切なこと─ふたたびコソボ・メトヒヤの女声たち 右の手、左の手─ミルカ、スラビツァ、スネジャナ V 野いちごの森へ 梨と猫 時刻表にない列車─ソフィア・ヤクシッチ 山羊と子供─ペタル・マラビッチ チーズとジャガイモ─デサンカ・ラブナイッチ 見えないパン─ナランチャ・マラビッチ 朝の牛乳─スミリャ・エデル ああ、あの子たち─イェレナ・スタルツ=ヤンチッチ 手紙を書いてくれ─シェキッチ村ピオニールの少年たち パルチザン第七病院─ペタル・ラドイチッチ 大きな胡桃の木の下で─ミルカ・ラドゥーロビッチ 花と爆弾─スルジャン・ブケリッチ サンドイッチと空き瓶─ジュルジッツァ・オストイッチ 雪と少年─シーモ・トミッチ VI 飢餓ゆえの戦争、戦争ゆえの飢餓 小さなパン─バネ・カラノビッチ 鳩と白い花─ドラガナ・ゴレタ 食べ物という喜び─ベドラ・アルシッチ VII 小さな料理手帖 グーラッシュ 玉ねぎしきつめ肉団子 イラクサのスープ 肉詰めパプリカ ジャガイモ詰めパプリカ 豆スープ 肉のサルマ セルビア・サラダ バニラ・クッキー マーブル戦争ケーキ ラミザ風ユーロクリーム セルビア料理の道具 結びにかえて 旅は終わらない

山崎佳代子(やまさき かよこ) 詩人・翻訳家. 1956年生まれ, 静岡市育ち. 北海道大学露文科卒業後, サラエボ大学文学部, リュブリャナ民謡研究所留学を経て, 1981年, ベオグラードに移り住む. ベオグラード大学文学部にて博士号取得(アバンギャルド詩, 比較文学). 詩集に『みをはやみ』など, 翻訳書にダニロ・キシュ『若き日の哀しみ』など, エッセイ集に『ベオグラード日誌』など.

レビュー

  • 戦争は権力者だけが甘い汁をすすり、庶民は痛い目に遭うだけ。

    それでも食事が大切という、やなせたかし先生が言っていることがよく分かる。 レシピも掲載していて、作りたくなります。 日本でも、レシピ通りの食材を入手するのは、手間がかかりますが…。

  • 民族間戦争の悲惨さを訴える

    山崎佳代子著「パンと野いちご」を読んだ。著者のインタビューを受けたユーゴ人の真摯な戦争体験談には涙が出た。そこには戦争を生き抜いた人々のみが語れる生々しい声がある。戦争の悲惨さを通して、戦争及び人種間の怨恨による殺戮があってはならないことを同書は読者に強く訴えている。

  • 民族主義とは

    昨日まで平和に共存していた民族同士が突然の内戦勃発で悲惨な民族浄化が進んでしまった旧ユーゴ。 外見だけでは互いの見分けが付かないので名前がセルビア人風だからとかそんな決めつけだけで民族主義者は迫害をしたりするというなんとも乱暴な話です。 他民族の武装勢力は憎いけど、それでもお隣の家の他民族の住人は個人としては親切な人ばかりという例ばかり。いかに一部の過激な民族主義者が憎悪をあおってるという事がわかります。 それぞれの難民はこんな苦難の中でも食べ物が支えてくれたということで様々な思いでを語ってくれます。 ただ、著者がセルビア在住のためこの本はほぼセルビア人難民のみの聞き取りのためセルビア人だけが内戦の一方的な被害者と錯覚してしまいかねない点が注意点です。この内戦ではクロアチア人、ムスリム人、アルバニア人なども同様に他民族の武装勢力による迫害を受けているはずなのでそちらの難民からの話も聞けるとなお良かったです。

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