作品情報
短篇小説との不思議な出会いを、読みの技術と愛着から語る。
2003年7月に研究社から刊行。英米短篇をめぐる講義として構成され、読売文学賞随筆・紀行賞を受賞した。
レビュー要約
-
アンソロジーを編むように短篇を選び、作品の魅力へ読者を導く姿勢が特徴である。研究書でありながら、読書案内としても機能する親しみやすさがある。
書籍情報
- 出版社
- 研究社
- 発売日
- 2003-07-11
- ページ数
- 253ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784327376901
- ISBN-10
- 4327376906
- 価格
- 1760 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/英米文学
短篇小説との不思議な出会い 著者のコメントより:そんな人種がいるかどうかは知らないが、わたしは短篇小説のコレクターを自認している。雑誌などから短篇を切り抜いて集め、作家別に簡易製本するのが趣味なのだ。だから短篇のアンソロジーを作るのも趣味で、これまで私家版のテキストを何冊もこしらえた。今回まとめた『乱視読者の英米短篇講義』も、やはり私流のささやかなアンソロジーのつもりである。読んで気に入ったものが何本かあれば、著者兼編者としてはとても嬉しい。
1952年、京都市生まれ。英米文学専攻。1975年、京都大学理学部卒業。1980年、同文学部卒業。1982年、同大学院文学研究科修士課程修了。現在、京都大学大学院文学研究科教授。 著書に、『盤上のパラダイス』 (三一書房、1988年) 、『乱視読者の冒険』 (自由国民社、1993年) 、『盤上のファンタジア』 (河出書房新社、2001年) 、『乱視読者の帰還』 (みすず書房、2001年) など、訳書に『幻想と文学』 (東京創元社、1989年) 、『ゴースト・ストーリー』 (ハヤカワ文庫、1994年) 、『完全チェス読本』1・3 (毎日コミュニケーションズ、1998年) 、『告発者』 (早川書房、1999年) 、『アラビアン・ナイトメア』 (国書刊行会、1999年) 、『ディフェンス』 (河出書房新社、1999年) 、『ガラティア2.2』 (みすず書房、2001年) などがある。 また、チェス・プロブレムにおいては、国際チェス連盟からインターナショナル・マスター (解答競技) の称号を授与されている。
レビュー
-
小説への深い愛
ロリータの訳者として知られる若島先生の,小説への深い愛が伝わってくるエッセイ集。 他のレビュアーの方も言及されていますが,以下の一節が最高です。(小説内に登場する女性に向けた手紙という体の文章) 「はっきりと告白しておきますが、わたしは一冊の小説の世界以上に、わたしが生きている現実の世界を面白いと思ったことがありません。例えばあなたという虚構の女性を理解したいと思う以上に、現実の存在する生身の女性を理解したいと思ったことがありません。」 前半はかっこよさに痺れ,後半は少し笑みがこぼれてしまう、この一節だけでこの本を買う価値があります。
-
惹かれた小説はなかった
三宅香帆による言及本。 筆者の専門と思われる作品群が、連想ゲームのように述べられる。 その主張の射程は狭く、外の世界へ開かれることはなかった。 ナボコフのロリータだけでも読むか。
-
買いです。
2003年に発売された、初めて読んだ著者の本で、基本的に読み終わった本は実家の書庫に入れてしまうのですが、本書は何冊かある例外の一冊です。個人的な話で恐縮ですが、田舎の片隅の高校で四半世紀国語に携わっていて、たまに本好きな生徒から「お薦めの一冊」を尋ねられたりします。いまの高校生は、おそらくうすうす気づかれている方も多いと思いますが、世間で喧しく言われるほど本離れ活字離れしてはおらず、自分なりに「お気に入りの作家」などがいて、しっかりフォローしていたりします。ただ、エンタメ系やライトノベルに偏っている嫌いは否定できず、ましていわゆる世界文学を読んでいる生徒など、かなりの読書家のなかにさえ皆無です。それで、そういった生徒に、その時々思いつくまま紹介などしているわけですが、本書は読後、「シャーリー・ジャクソンの本、なにか持ってますか。」とか「『アメリカの息子』は、先生は読みましたか。」とか言われることが多く、進路を人文や文学部に変更した生徒すらいるほどです。表紙のイラストや、「文学研究ではなく、文学にまつわる話」ということも少なからず影響しているのかもしれません。ただ、何年経っても、自分自身の未読のものも残っていることもあり、定期的に読み直してしまう一冊です。
-
小説に対する想いにあふれてます
短編小説を対象にしていますが、語られるのは小説とそれをめぐる筆者の読書体験です。 私は、筆者に比べて読んでる量も少なく、読み込みの深さも足りないかも知れませんが、いち読書人として、筆者の読書に対する思い入れに共感できる部分が多くありました。 英米文学に関心がある人だけでなく、もっと広い範囲の読書好きにアピールできる内容ではないでしょうか。
-
英米短篇まったく読まない人の感想
読まないっすね。英米小説はまったく。シェイクスピアさえ読んだことないよ、ぼくは。ぼくにとって小説とは単なる(でも結構好きな)ヒマ潰しであり、日本のものしか読まない。 そんなぼくにとっては、なんというか、ナボコフ作品はじめ小説に溺れて過ごす喜びを知ってる著者が妬ましいとこもあるし、「そんなに溺れていいのかよ、もっと「冷静」な分析をしてくれよな~。「講義」なんだから」とか、しらじらしく思う瞬間もないわけじゃない。正直に言うとね。 英米小説に全く知識がないし、小説に対するスタンスが著者とは全く異なるんだけれど、本著は非常に楽しめた。どこで共感できたかというと、海外旅行に行っても本屋を回ってしまうという、読書好きの点になんだと思う。自分の読書体験を通じている話は、小説を読まないぼくにもとても共感できるものだったんですよ。小説ではないけれど、同じようなことはいろんな本を読んでいてぼくも体験することだから。 ラストのジョイス『ユリシーズ』の回が秀逸。最初の一文だけで、これだけいろいろ言えるなんて。しかも、マニア的にならないというか、小さい「解釈」に固執するのではないところがいい。くやしいけれど、英米短篇原書で読んでみようって気にさせる。
関連する文学賞
- 読売文学賞 第55回(2003年) ・受賞