読売文学賞 よみうりぶんがくしょう
第55回(2003年)
小説戯曲・シナリオ随筆・紀行評論・伝記詩歌・俳句研究・翻訳
受賞者
6名『博士の愛した数式』は、記憶が短い時間しか続かない老数学者と家政婦、その息子ルートの交流を描く小説。数式の美しさが、人と人の間に言葉とは別の信頼を生む。
数の秩序が、壊れやすい記憶と人の優しさを静かにつなぐ。
256ページ
記憶数学家族喪失やさしさ
『泥人魚』は、唐十郎の戯曲。諫早湾の干拓に追われた若者、詩人、海の記憶を帯びた女が出会い、失われる海と身体の記憶を幻想的に重ねる。
干拓で失われる海の記憶が、義眼と人魚の幻を通してよみがえる。
153ページ
戯曲諫早湾海記憶幻想
『乱視読者の英米短篇講義』は、若島正による英米短篇小説の読解集。短篇を収集し読み込む愉しみをもとに、作品との偶然の出会いと精密な読みを講義形式で示す。
短篇小説との不思議な出会いを、読みの技術と愛着から語る。
253ページ
英米文学短篇小説読書論精読
『ユートピア文学論』は、沼野充義によるロシア・東欧文学を中心とした評論。ユートピアへの夢とディストピアの悪夢の間で揺れる文学的想像力を、二十世紀文学の核心として論じる。
いま・ここにない場所を求める想像力の陶酔と恐怖を読む。
354ページ
ユートピアディストピアロシア文学東欧文学二十世紀
『夏のうしろ』は、栗木京子の第五歌集。社会的な出来事を日常の肌触りに溶け込ませ、知的で批評的な眼差しと柔らかな比喩を通して歌う。
社会と日常が、夏の背後にある気配として静かに重なり合う。
177ページ
短歌日常社会詠比喩批評性