作品情報
虹へ向かう旅は、戦いと平和をめぐる心の旅でもある。
芝田勝茂のドーム郡シリーズに連なる作品で、旧題『虹へのさすらいの旅』として児童文芸新人賞を受けた。改題版の書誌が確認できるため、その識別子を採用する。
書籍情報
- 出版社
- 小峰書店
- 発売日
- 2004-01-01
- ページ数
- 438ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784338193023
- ISBN-10
- 4338193026
- 価格
- 2200 JPY
- カテゴリ
- 本/絵本・児童書/読み物/童話・文学
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レビュー
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「虹へのさすらいの旅」から「虹への旅」へ。タイトルが変わったのは
作者である芝田勝茂先生の「良心」だと思います。 これは、単に「埋もれていた物語を復活させた」だけじゃない。物語の「意味」を作り直したんだ、ということを、読者に誠実に示してくれたんだと思います。 物語の「筋」そのものは、最初に書かれた「虹へのさすらいの旅」と同じです。主人公のマリオとノームが立ち向かう運命も、ふたりが選ぶ「未来」も、変えられてはいない。ただ、物語の終わりで、ふたりの前に現れる一団の旅人たちが歌っている「歌」が、違うのです。 「虹への旅」では、その人たちが歌っている歌は、 「今はまだ旅の途中だけど そしてまだ知らないことも多いけど このはるかな空のむこうに きっとあなたが待っている……」 なのですが、この歌を見て私は、何か違う気がする、と思いました。 私が高校生の時に初めて読んだ「虹へのさすらいの旅」では、この旅人たちの歌は、違う歌だった気がする。 幸い、確認することができました。 「虹へのさすらいの旅」では、旅人たちの歌は、 「道のほこり 過ぎ去りし日々 ふるさとの 緑にもえる山や川……」そして「虹への こころの さすらいの旅」という言葉で結ばれる歌でした。 物語の途中で、ドーム郡の若者たちが、マリオとノームの旅立ちを祝福し、自分たちも彼らを追って旅立つことを約束して歌う歌です。この歌が「虹へのさすらいの旅」では、物語の終わりでもう一度現れて、若者たちが再会の約束を果たしたことをマリオとノームに、そして読者たちに伝えます。 でも「虹への旅」では、物語の終わりの歌は「今はまだ旅の途中だけど」に替わっている。 この歌は、「ドーム郡ものがたり」の中で、クミルが歌った歌です。 森の民の王ヌバヨを探しに行く旅の途中で、未知なる前途への不安を感じながらも、それでも希望を信じようとする歌です。 その歌が、マリオとノームの旅の終わりに反復される。 この意味は何だろう。 私は考えました。 たぶん、これは、 「物語が、ここから行く先が変わった」ということを示すために、あえて歌が替えられたのだと思います。 この物語は、最初は1983年に「虹へのさすらいの旅」として送り出され、そのあと絶版となり、久しく眠っていたものです。そうであれば、子どもだった時にこの物語に触れた多くの読者たちは、この物語はこれで終わったものだと、自然に思っていただろうと思います。私もそうです。 ですが、21年の時が過ぎて2004年に、この物語は復刊されました。そして2005年には、続編(完結編)となる「真実の種、うその種」が発行されたことを考えると、この物語が「虹へのさすらいの旅」から「虹への旅」へとタイトルが変わり、そして物語の終わりの歌が替わったのは、 「新たに書き始められる物語へと、つなぐ道筋をつくるため」だったのだろうと思います。 それと同時に、 「21年前に置いてきたこの物語が、その時すでに完結したと、今まで信じてきた読者たちの思い」 これが存在することも、芝田勝茂先生は作者として分かってくれて、真剣に考えてくれたんだと思います。 だから、 物語の「行く先」を「ふたつ」に分けてくれたんじゃないか。 どっちも間違ってない。どっちも本当。そういうことじゃないかと思います。 だから私は「虹への旅」を読んでよかったと思う。芝田勝茂先生が、新たに始めた物語の旅を「たのしい日々でありますよう」と見送ります。 そして私自身は、先生が作者としての、たぶん責任感とやさしさで残してくれた《もうひとつの虹への道》を、これからも大切に歩いてゆきます。
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誰もが。
オオカミ少年だったマリオが、自分の人生を変えるために、「森の民」になって生きていこうと決心する。 ところが、その森でいくさを始めた者たちがいた。 見ているうちに気分が悪くなり、いくさをやめさせるためについてしまったとっさの嘘が、 多くの人々を巻き込み、マリオ自身も窮地に立たされてしまう。 「いのりの民」の忘れ形見、ラクチューナム・レイを連れて、マリオはアイザリアに戻ることができるのか? 登場人物の中で、誰がラクチューナム・レイなのかすぐに予想はついてしまうが、 旅を続けていくうちに成長を遂げるマリオの姿は、とても凛々しかった。 平和のためにいくさをすると言う矛盾に立ち向かったドーム郡の人々の心の葛藤も、しっかりと書き込んである。 誰もが希い続けているテーマを描いた、現代への寓話である。 …それにしてもこの本、高価すぎやしませんか?
関連する文学賞
- 児童文芸新人賞 第13回(1984年) ・受賞