日本の文学賞

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愚者の毒 (祥伝社文庫)

日本推理作家協会賞

愚者の毒 (祥伝社文庫)

宇佐美まこと

上野の職安で出会った葉子と希美の友情が、旧家の不審死と筑豊の廃坑集落で起きた過去の事件へつながっていく長編ミステリ。貧困、罪、因縁を重ねながら、裁きと救済の形を問う。

社会派ミステリ貧困因縁裁き

作品情報

絶望が招いた罪は、長い時間を経て別の人生へ毒のように染み出していく。

祥伝社文庫の書き下ろし作品。Amazon JP、NDL/CiNii系書誌、書店系データで文庫のISBN 9784396342623 とISBN-10 4396342624を確認し、日本の紙書籍のためASINも同値で補完した。

レビュー要約

  • 人の弱さや暗い情念を掘り下げながら、単純な断罪ではなく救済の可能性まで描く点が支持されている。過去と現在が結びつく構成の巧さにも反応が集まる。

書籍情報

出版社
祥伝社
発売日
2016-11-11
ページ数
400ページ
言語
日本語
サイズ
10.6 x 1.6 x 15.2 cm
ISBN-13
9784396342623
ISBN-10
4396342624
価格
770 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

Amazon.co.jp: 愚者の毒 (祥伝社文庫) : 宇佐美 まこと: 本

レビュー

  • 尋常じゃないサスペンスに、くらくらきました。しびれました。

    倒叙ミステリの妙味もある、非常な(非情な?)サスペンスに満ちた作品。 第一章「武蔵野陰影」の81頁、《私たちは恐ろしい罪を犯した。一生許されることのない罪を。そのことを片時も忘れるわけにはいかない。私たちは、それを共有するために夫婦になった。》の文章を読んで以降、ずぶずぶと沼地に沈んでいくかのように、首までずっぽり浸かって、頁をめくっていきました。 アガサ・クリスティーのミステリに『ゼロ時間へ』て作品がありますが、取り返しのつかない、ある決定的なことが起きるポイントを〈ゼロ時間〉とするならば、本書の〈ゼロ時間〉は第一章のラストにあります。その辺りからはもう、ぞくぞく、ぞわぞわとした思いに掴まれながら読み進めていきましたよ。 若かりし頃、夢中になってあれこれ読んでいったウールリッチ(またの名を、ウィリアム・アイリッシュと言う)サスペンス作品に近い雰囲気もあったかなあ。とにかく、半端ないサスペンスの空気にしびれました。 杉江松恋の巻末解説文が、実に読みごたえのある充実したものです。読み出す前と読後の二回、解説文を読みましたが、舌を巻く出来栄えに唸りました。

  • 引き込まれました

    著者の作品は初めて読みましたが、読みごたえのある一冊でした。宮本輝に通じる様な、人間の業を見事に表現しており、引き込まれました。。。

  • 言葉が出てこない

    内容について語ろうと思わないくらい素晴らしい小説だった。序盤ではこんな話になるとは想像もつかない展開、内容の圧倒的な密度、物語の質。今年読んだ本の中で文句なしの傑作。

  • 巧妙な語り部手法構成

    先日「黒鳥の湖」をTVドラマで見て、初めて作者を知りました。上手く言い表せませんが、物語全体に肌になじんだ”昭和”の香りを感じて、サスペンスを楽しみながらどこか安心して最後まで視聴出来ました。 宇佐美氏のプロフィールを見ると私と同い年。感性が似ているかなと期待して、早速本作を買って読んで見ました。二日で一気読み、面白かったです(^^♪ 私としては初めて出会った斬新な語り部手法で驚かされました。ただ新鮮ではありましたがさすがに少し頭が混乱もしました。楽しませてはくれましたが、この手法、評価は分かれるのではないかとも思います。

  • ミステリと言うよりは「愚者」の凄まじい因果応報譚をクドクドと描いた凡作

    まず、題名の「愚者の毒」とは本作中のある人物が発する以下の言葉に由来する。「自分の考えに従って生きる愚者こそ、毒を有用なものに転じる事が出来る」。これが「愚者の毒」の意味だが、本作はミステリと言うよりは"有用なものに転じる事が出来なかった"「愚者」の凄まじい因果応報譚を描いた作品と言える。 まず、冒頭、伊豆の高級老人ホームで暮らす"わたし"の2015年の様子が描かれる。"わたし"の夫は週一回は"わたし"に面会に来ると言う。その後、2015~6年年と1985~6年をカットバックに妹の借財のために発達障害の甥の達也を抱えた香川葉子(結局、事情があって葉子は達也を手放してしまう)、葉子が家政婦として働く事になった難波家の跡取り息子の由紀夫(に葉子は恋心を抱く)、由紀夫と特別な関係にあるらしい石川希美、難波家の当主の"先生"の人間模様が描かれる(冒頭の言葉を発したのは"先生")。そして、高級老人ホームで暮らしているのは葉子らしく描かれているが、実は希美である事は直ぐに分かる。由紀夫は悪徳弁護士から自分達を守ろうとして、弁護士と共に誤って葉子を殺してしまう。更に、話は1985~6年の筑豊の炭鉱を舞台として、希美と由紀夫とがどんな悲惨な境遇に逢ったか、そして、親殺しという苛酷な共犯関係にあったかが昭和の高度成長時代との対比で描かれる(実はこの描写の中に後の悪徳弁護士が居て脅迫のネタとしていた)。希美と由紀夫とは裁かれ様として死を待っているのである。実は希美は癌で余命幾ばくも無い。そして、ラストは2016年に戻り、希美の眼前で由紀夫がボート中で死亡するが、その犯人は老人ホームの職員となっていた達也という絵に描いた様な因果応報譚。 人間ドラマとしては良く描けているが、ミステリとしては寂しい出来。読者にとって分り切っている事をクドクドと描いた凡作としか映らなかった。

  • 人間の本質に迫る1作

    この作者の作品は、「入らずの森」が最初でした。 新作は出ないのかなあ、と思っていた所、思いがけなく 書店に本作品が!いつでも読めるKindle版を購入しました。 過去作とは違い、SFでもホラーでもなく、現代のミステリーものです。 バブル期から、ゆっくりとストーリーは始まり、 激しい過去の出来事、現代を行き来して、静かに終わりを迎えます。 作品名通り、人の愚かな部分の描写が抜群で、それでいて切ない。 主人公よりは若い私ですが、何か、過去を見てきたような錯覚が残っています。 宇佐美まこと、という作家を知る人は少ないかもしれないけど、 この1作で、この方は素晴らしい足跡を残したと思います。 誰とも似ていない、この作風。次回作が楽しみでなりません。

  • 面白いけど切ない

    大変よくできた小説で面白いことも間違いないですが、読んでいるとだいぶ切なくもなります。解説に書かれていた、優れた犯罪小説が読む人の闇を思い出させる・・というのがよくわかります。 これも解説の通り、その中で、スラムダンクの藤原先生を思い出させる、難波先生の存在が救いとなってます。 良い小説でした。

  • 丁寧に丁寧に描かれていました

    3つの時代を丁寧に描き、 張り巡らせた伏線も順序よくわかりやすく回収し、 とてもしっかりと練られた内容でした。 丁寧に描かれてたからこそ、もうちょっとスピード感が欲しかった。 それぞれ描きすぎに感じることが多かったため、 「読む手が止まらない」ことにはならず、読むのが面倒くさくなる場面も。 でも「人生の帳尻」についても考えさせられた良い作品でした。

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