書籍情報
- 出版社
- 筑摩書房
- 発売日
- 2009-05-11
- ページ数
- 256ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.7 x 1.1 x 14.8 cm
- ISBN-13
- 9784480426123
- ISBN-10
- 4480426124
- 価格
- 682 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 待望の映画化!2021年9月17日より全国ロードショー ◎芥川賞作家・津村記久子作品、初の映画化◎ 主人公・堀貝佐世(ホリガイ サヨ)役:佐久間由衣 猪乃木楠子(イノギ クスコ)役:奈緒 監督・脚本:吉野竜平 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ だるい日常その裏に潜む悪意―― 大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。 ある意味、手持ちぶさたな日々を送る主人公ホリガイは、身長175センチ、22歳、処女。 バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。 そして、ふとした拍子に、そんな日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。 第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。 この作品を初めて読んだ際の、大きな驚きと喜びを私は忘れることができない。 これほど明確な問題意識と倫理観に貫かれていて、 しかもその表現方法が生硬でもなければ野暮ったくもなくユーモアに満ち、 やわらかな肌触りの下にどくどくと脈打つ血の熱さをも感じさせる小説を読むのは、 随分久しぶりだという気がした。 松浦理英子(解説「魂が潰されないために」より)
1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で太宰治賞を受賞してデビュー。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、2013年「給水塔と亀」で川端康成文学賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞、2020年「給水塔と亀(The Water Tower and the Turtle)」(ポリー・バートン訳)でPEN/ロバート・J・ダウ新人作家短編小説賞を受賞。他に『サキの忘れ物』『とにかくうちに帰ります』『まともな家の子どもはいない』『アレグリアとは仕事はできない』などの著書がある。
レビュー
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こういう物語を読みたかった
タイトルや最初のくだりで想像してしまった結末はとてもいい意味で裏切られました。子供が大学を卒業する年頃となった私には、懐かしいと思えるような時代が違っても変わらない大学生の感じや、ちょっと理解しにくい今どきの事情も、楽しめました。 要領の良くない悩める若者たち、みんながんばれー!
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津村記久子のデビュー作にして出世作
デビュー作には、その作家のエッセンスが詰まっているとは、よく言われるが、本当にそう。彼女の特徴が、あちこちに凝縮されている。ゆるーいユーモア、仕事に対する誠実さ、ぐだぐだムダ話できる友人、固有名詞にカタカナ多用、などなど。 主人公のホリガイは、大学4年生で、就職も決まり、ホッとしてバイトに精を出す日々。彼女は、子どもの時TV番組で、子どもの行方不明事件が多発している事を知り、将来、児童福祉に関する仕事をしようと決意した。 大学入学時から、食品工場で働き始め、せっせとお金を稼ぎ、公務員試験向けの専門学校にも通い、みごと地元の役所に職を得る。 この「君は永遠にそいつらより若い」という変わったタイトルは、ホリガイが、虐待されている子どもたちに対して「君たちは、そいつら・虐待している大人たちより、永遠に若いんだ。だから、なんとか生き延びろ」というメッセージ。 最初は「マン・イーター」というタイトルだった。これはこれで、とっても怖いね。
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面白い、それだけ。
グイグイ読ませる文章。 ペシミスティックな感傷もないが、それがいい。 女の童貞の表現は笑う。 作者の他の本も買ってしまった。 君は永遠にそいつらより若い。
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津村記久子は津村節子の夢を見るか?
どこに連れて行かれるかわからない辺りは田中慎弥に似ているが、途中で先が読めてしまうし、各エピソード間の関係(象徴性)も緩いし、絶望的な突き放しもない。その分、希望はあるのだが、それがあまりにも曖昧だ。そういった小説らしい作為を感じさせない、まるで実体験から取材したかのような構築性が作者最大のテクニックなのかもしれない。けれども各エピソードが無駄に長いのが残念だ。枚数を稼いでいるように感じられたから…… しかし作者の「ああ、小説を書きたい」感は良く伝わる。その意味で、とても清々しい読後感はある。タイプは違うが作者と同じ苗字を持つ津村節子もそうだった。もちろんストーリィテラーである彼女は自伝的作品以外に、そんな匂いはさせなかったが…… 例えば、計算し切ってテーマをとことんまで簡素化する絲山秋子タイプとも、とにかく一点を見据えてただ突き進む朝倉かすみタイプとも、父親の亡霊を振り払うかのように暗い心の奥の想いを炙り出す井上荒野タイプとも違う、泥臭さが、この作者の持ち味なのかもしれない。
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よかったです。
新聞の書評を見て買いました。主人公の心の声みたいなものがずっと書いてあるので、読み始めは何が言いたいのかよくわからなかったのですが、読み進むにつれ、ああ、この人(主人公のこと)ってそうなんだなと、じんわり心に響くものがありました。優しさ、思いやりみたいなものが心でわかって、読後、すっきり温かい気持ちになりました。
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君は永遠にそいつらより若い
登場人物の気持ちに、すごく入りやすかった。 それは私が女だからだろうな、と思いました。どうしようもなく女だからです。 主人公ホリガイの、焦っているような、落ち着いているような考え方、衝動的になるタイミング。 他の登場人物も、どこかで見た誰かのような、ある要素を抜き出して作られた人格では、というような。 なんだか懐かしいものを読むように、すらすら読めました。水が合ったのだと思います。 「人と人のつながり」と一言で言ってしまえば滑稽だけれど、 小説は誰かの人生を追体験するようなもので、 そのなかで本当の人生へのヒントというか啓示があるのかなと思います。 ホリガイの人生には共通点が有り過ぎて、なんだか人ごとではなかったです。 外せないのが、作中のベッドシーン。ある意味予想外だけど、納得できる相手でした。 静謐さ、ひとの体の神々しさ、陽の光に相手の体が照らされる様子は、 宗教画のように慈しみのある描写で、今もふと目に浮かびます。 このシーンのためだけに読んでも良いくらいだと思います。
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途中で投げなくて良かった!
冒頭の数ページの緊張感から一転して、その後は話が(不穏な空気を漂わせながらも)タラタラしていて、著者の『ポトスライムの舟』『ポースケ』に比べてつまらんなあと半分寝ながらダラダラ読んでいた。そうしたら最後の1/5か1/6のあたりからいきなり暴風雨! という感じでそこからは一気読み。そして最後に晴れ間が見える。こういうのはやはり小説を読む醍醐味なのだろう。 ホリガイの小学校時代の記憶を聞いたイノギが「そこにおれんかったことが、悔しいわ」と言う。またホリガイもイノギについて「彼女を1人にしてはいけない」と思う。これは「共に苦しむ」こと、あるいはそれができないことに関する物語なのだと思う。 ついでながら、チャン・イーモウとアン・リーが出てきたのも嬉しい。イーモウ「初恋のきた道」、リー「恋人たちの食卓」を観たくなってきた。
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それぞれの苦しみ 分かり合えなさ
主人公のホリガイは他人の気持ちに鈍く、苦しみに気づけない。未経験は、その象徴として書かれているんだと思う。 それなのに、ホリガイはテレビの中の行方不明児にひきつけられ、虐待を受けた子どもと接する児童福祉司を目指している。 そのとんちんかんさに、ホリガイ自身が気付いている。それがホリガイの苦しみなんだろう。 ホリガイが、君は永遠にそいつらより若いと言ったとき、イノギさんがその気持ちだけで十分だと思う、と応えたとき。 人と人が完全に分かり合うのは難しいけど、君を思っていると伝えること、君が思われていると感じること。それはできる、それだけで大丈夫だと言ってくれているように思えた。 イノギさんがホリガイと寝たのは、君は魅力的だよと伝えたいためかと思った。でも違う気もする。 ただ、処女は未熟さの象徴として強調されるようなものではない(それはそう、してもしなくてもいい)とか、レイプや自殺などがある意味キャッチーに詰め込まれているように見えるとか、ホリガイが人間的に浅い(本当だから刺さる。私自身も同じだ)とか、そうした批判も理解できる。 そうした批判も頭に入れつつ、何度も読み返したいと思う本でした。映画もとても良い仕上がりでした。
関連する文学賞
- 太宰治賞 第21回(2005年) ・受賞