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メメントラブドール (単行本)

太宰治賞

メメントラブドール (単行本)

市街地ギャオ

新宿区に住む20代の男性・忠岡は、複数の顔を持ちながら生きている。昼はSIer企業の正社員、夜は新宿の「男の娘コンカフェ」でキャストの「うたちょ」として働き、マッチングアプリではノンケの男性を誘う「たいちょー」として裏アカウントを運営する。ネット用語やスラングが飛び交う現代の言語感覚で書かれた本作は、形のない「私」が令和の新宿で自分自身を問い続ける梅雨明けまでの一ヶ月を描く。第40回太宰治賞受賞作。

アイデンティティの複数性性的マイノリティ令和の孤独インターネット文化現代の若者自己表現

作品情報

形のない「私」を言葉で照らし出す著者の狂いのなさに、読む者は狂い出しそうになるだろう。事件は起こらない。しかしこの小説の誕生は事件だ。

帯文に金原ひとみが「形のない「私」を言葉で照らし出す著者の狂いのなさに、読む者は狂い出しそうになるだろう。事件は起こらない。しかしこの小説の誕生は事件だ」と書いたように、本作は圧倒的な言語感覚で「私」の輪郭を追い求める中編小説だ。選考委員の奥泉光は「特定のカルチャーを共有しない者を排除するかのごとき閉鎖的な言葉の使用と、案外と古典的な筋立ての落差にもアイロニーの作動があって、作者の企みは成功している」と評した。第46回野間文芸新人賞の候補作にもなり、デビュー作から注目を集めた。筑摩書房より2024年10月刊行。

レビュー要約

  • 賛否両論。独特のネットスラングと複数のペルソナが織りなす文体を評価する声がある一方、聞き慣れない造語の多さで物語が入ってこないと感じる読者も少なくない。明確なカタルシスよりも雰囲気や主人公の孤独感を楽しむ作品として受け取られている。

  • 概ね高い評価。テンポよく配置されたスラングと繊細な内面描写の落差に好感を持つ読者が多く、表面的な混沌の奥にある文学的誠実さが支持されている。

書籍情報

出版社
筑摩書房
発売日
2024-10-28
ページ数
144ページ
言語
日本語
サイズ
18.8 x 12.8 x 1.5 cm
ISBN-13
9784480805218
ISBN-10
4480805214
価格
1182 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

第40回太宰治賞受賞! 第46回野間文芸新人賞&第1回永井荷風文学賞候補作!! 新宿区在住♡20代♡裏アカ男子♂の令和五年 形のない「私」を言葉で照らし出す著者の狂いのなさに、 読む者は狂い出しそうになるだろう。 事件は起こらない。 しかしこの小説の誕生は事件だ。 ――金原ひとみ === なにもかも守れていないから 私のところに来るんじゃないの。 「私」にはいくつか顔がある。マッチングアプリでノンケの男を釣って喰っては「たいちょー」として行為シーンを裏アカに上げ、平日昼間はSIer企業の院卒若手正社員「忠岡」として労働しながら、新宿区住まいの家賃のために「うたちょ」の姿で男の娘コンカフェのキャストとして立つ元“高専の姫”ポジション――ペルソナたちがハレーションする、どうしようもない人間のどうしようもない梅雨明けまでの一ヶ月。

市街地 ギャオ(しがいち・ぎゃお):1993年、大阪府生まれ。大阪府在住。2024年、「メメントラブドール」で第40回太宰治賞受賞。

レビュー

  • もうちょっと読みたかった。

    センチメンタルでとても面白かったのだけど、もっと読みたかった。もっと読みたいというところで終わってしまったので不完全燃焼だった。

  • 疾走感ある物語が次回作を期待させる

    まず、物語の紹介文が良くないと思う。 物語を構成するワードではあるのだが、情報が偏り過ぎていて肝心の粗筋になっていない。まるで#を並べているようだ。 この本を手に取られる方には「惑わされるな」と言いたい。 さて、正直な感想を書こう。 全体的に非常に疾走感のある文体で書かれ、すらすらと読めてしまう(1時間程度だ)。 LGBTQ、マッチングアプリ、コロナ以降の在宅ワーク、ネットスラング等、我々の身近にある「それら」を巧みに使いながら、今時の状況をさらりと解説しているかのようだ。 主人公はゲイであるがノンケをひっかけてはちょっとした動画を裏垢であげている。世間に対して斜に構えているのに、承認欲求には逆らえない。 しかし、リアルな生活…会社員としての主人公は非常に淡白だ。 目立つことはしたくない、出世も興味がない、ただ生活費を稼ぐだけの場所でしかない。 副業であるコンカフェでも同様だ。 化粧っけがなく、やる気がないと見なされ常連客もいなければ同僚との仲も深くない。 それでも主人公は居場所の確保あるいは維持と孤独に苛まれている。 そんなある日、ひっかけたノンケとの動画がバズり始める。 SNSによってリアルな自分の足元がおぼつかなくなる様は実に現代的であり滑稽でもある。 誰にでも起こりうるネット世代の虚栄心・虚無感・喪失感が実にしっかりと描かれていた。そしてLGBTQは些細な設定に過ぎないことを表している。 これはただ一人の人間の物語なのだ。 そして静かに幕は下ろされていく。 物語のラストは喪失感に反して不思議と爽やかだ。 序盤に述べた疾走感のある文体がそう思わせるのだろう。 次回作も期待したい。

  • 暴走する承認欲求と歪んだ性癖、横溢する言葉による自傷行為。

    リアルとパーチャルの中を行き来する主人公。Ctrl+A Deleteで日々の憂さをリセットで際どい世界線を生きているが、次第にそのふたつの世界の境が決壊し、密結合し始める。自分の歪んだ承認欲求と性癖をみたすための「その日暮らし」と名付けられたバグだらけプログラムが引き起こす無限ループ。 いつか誰かがCtrl+cを押して強制終了してくれるか、自分の可処分時間というリソースが尽きてエラーを吐いて止まるか…。横溢する言葉による自傷行為に救いはあるのだろうか。

  • 買いです。

    会社員と男の娘と、「カズ」というノンケの童貞の大学生を口淫する動画の投稿者という3つのペルソナを持つ一人称が主人公の物語で、特に前半は聞いたこともないカタカナやアルファベットの名詞を携帯で検索する時間の方が、本文を読む時間より確実に長くなった作品です。 最初こそこの内容であれば小説ではなく、枠組としてはルポルタージュにうまく収まるのではと感じましたが、おそらく描かれている素材や事象自体はそこまで最先端ではなく評価が定まっているようであるし、何より読み終わったあとの余韻が文学でした。 そういった余韻の中では、巻末のプロフィールにあるペンネームがハンドルネームに、「会社員」という肩書きが何かの符牒のように見えました。

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