日本の文学賞

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蝉かえる (ミステリ・フロンティア)

日本推理作家協会賞

蝉かえる (ミステリ・フロンティア)

櫻田智也

昆虫好きの青年探偵・魞沢泉が、旅先で出会う小さな違和感から人の心の傷や優しさをたどっていく連作短編集。表題作「蟬かえる」や「コマチグモ」を含む5編を収録し、静かな切なさと謎解きの手応えが同居する。

連作ミステリ昆虫探偵人間ドラマ喪失と再生

作品情報

昆虫好きの青年探偵・魞沢泉が、静かな謎の奥にある人の思いへ手を伸ばす。

東京創元社のミステリ・フロンティアから2020年7月に刊行された櫻田智也の連作短編集。昆虫への関心を手がかりに、事件の真相だけでなく、登場人物たちが抱える悲しみや優しさを掬い上げる。のちに文庫化もされ、日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を受賞した。

書籍情報

出版社
東京創元社
発売日
2020-07-13
ページ数
256ページ
言語
日本語
サイズ
13.4 x 2 x 19.2 cm
ISBN-13
9784488020095
ISBN-10
4488020097
価格
380 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

○第74回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門受賞 ○第21回本格ミステリ大賞受賞小説部門受賞 法月綸太郎、絶賛! 「ホワットダニット(What done it)ってどんなミステリ?その答えは本書を読めばわかります」 ブラウン神父、亜愛一郎に続く、名探偵・魞沢泉の鮮やかな推理! ミステリーズ!新人賞作家が贈る『サーチライトと誘蛾灯』に連なる第2弾 ブラウン神父、亜愛一郎に続く、"とぼけた切れ者"名探偵である、昆虫好きの青年・エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。彼が解く事件の真相は、いつだって人間の悲しみや愛おしさを秘めていたーー。 16年前、災害ボランティア中の青年が目撃した、神域とされる森に現れた少女の幽霊。その不思議な出来事に対し、エリ沢が語った意外な真相とは(表題作)。交差点での交通事故と団地で起きた負傷事件の謎を解く、「コマチグモ」など5編を収録。注目の若手実力派・ミステリーズ! 新人賞作家が贈る、ミステリ連作集。 ■目次 「蝉かえる」 「コマチグモ」 「彼方の甲虫」 「[ホタル計画」 「サブサハラの蠅」

レビュー

  • 表題作の伏線回収が見事

    これは面白い。 主人公の魞沢泉のとぼけた味わいと周りの人々(ミステリーなのになぜかいい人ばかり)との軽妙なかけあいが面白くて、どんどんと読み進めてしまう。 ミステリーとしては、途中で仕掛けに気づいてしまうところもあるのだけれど、とにかく魞沢泉のキャラクターが魅力的過ぎて、読み終わるのがもったいない気分。 ちなみに表題作の伏線の回収は見事。 「えっ、そこまで」というところまでピタリとはまってしまう。

  • 昆虫たちがもたらす一瞬の叙情

    「蝉かえる サーチライトと誘蛾灯」(櫻田智也 東京創元社)を読みました。探偵役・魞沢泉を主人公にした連作短編集。5つの短編が収録されています。 (1)蟬かえる・・・・・山形。御隠の森。伝奇ものかと思いましたが、そうではなく、地方に今なお残るタブー、地震、奇妙な体験。そして、セミ供養。物語は、巧緻に反転し、その終盤、切れのある驚きをもたらします。 (2)コマチグモ・・・・交錯する事件。出動した救急車が、もうひとつの事故に遭遇します。子グモと母グモ。少女だけが隠し持つある烈しさ。これもまた間然するところのない短編だと思います。 (3)彼方の甲虫・・・・奥羽山脈北部の山。ミスディレクションを決めてみせて、”スカラベ”の反転を誘います。動機が少し弱いと感じました。「明日がくることと、ぼくに明日があることは、同じではない」 (4)ホタル計画・・・・消えたサイエンス・ライターを探して、雑誌編集長・斎藤が北海道に向かいます。発光するホタル。何があったのか?少しパセティックですが、傑作だと思います。シリーズ中、一回しか使えないサプライズ。舞台監督・蜷川幸雄が言うところの「一瞬の叙情」が流れ、巧緻で、物語がうねりながらエンディングを迎えます。 (5)サブサハラの蠅・・・アフリカから持ち帰った蠅のさなぎ。この短編集の中では、一番インパクトが弱い。 民俗学、母親と少女、人種と悪意、遺伝子組み換え、そしてアフリカの病というメイン・テーマに生物学と昆虫学を駆使した探偵・魞沢がそれぞれのミステリを解き明かします。魞沢を語ろうとすると、その手品を解き明かすことになりそうなのでやめておきましょう(笑)

  • ほどよい長さとどんでん返し

    面白い! どんでん返しにこじつけ感がなく、1話ごとに膝を打つ感覚がある。 こういうミステリいいですよね。

  • 「こういうのでいいんだよ!」という粒ぞろいの傑作短編集

    昆虫好きの青年が謎を解くミステリ短編集。 前作は実のところ、よくできてはいるもののそこまでハマり切れなかった印象だったのだけど、本作で一気に覆った感じ。その最たる要因は、これまで探偵装置でしかなかった主人公・魞沢泉のキャラクターを掘り下げ、彼の人物像をくっきりさせることに大成功したからだと思う。各短編すべてがハイレベルで、これだけの分量の中にキレのあるロジックと盲点を突くどんでん返しと真相がしっかり備えられていて、本当にいいものを読んだなあ、という満足感がある。 妙な設定に頼らず、コンパクトにまとめ、その上で「そうそう、こういうのでいいんだよ!」という読後感を抱かせる、本当に難しい仕事がしっかりと成し遂げられていて、とても嬉しくなった。傑作という言葉で形容することに、なんら躊躇いを抱かせない作品だと思う。

  • 昆虫からのぞく、人生、社会、環境…

    どの短編も昆虫が絡んでくることによって、季節感とそこから滲みだす詩情が、作品に独特の味わいを与えている。また、そんな風趣をもった背景から立ちあがった事件であればこそ、事件の関係者たちの人生の機微や、そこにある社会問題・環境問題などが、より複雑な陰影をもって伝わってきて、謎解きの面白さだけにとどまらない内容の豊かさを感じさせてくれる。いろんなミステリのベストテンで、高評価を受けているのも肯ける短編集である。 唯一やや物足りなさを感じたのは、泡坂妻夫氏の亜愛一郎シリーズへのリスペクトから創作された作品であるなら、ワンパターンの面白さがもっとある作品であったらと思ったこと。謎解きのポイントに気づいた瞬間、亜愛一郎が白目を出したり、三角形の顔をした洋装の老婦人が必ずどこかに登場したりと、ワンパターンの楽しさにあふれている泡坂作品。それは、ポパイのホウレン草が毎回どんなシチュエーションで飛び出すか、子供のころ胸おどらせてテレビアニメを見た楽しさなどから構想されたとか。そうしたワンパターンの趣向がよく生かされた作品になっていたら、本作の名探偵クンも、さらに魅力的なキャラ立ちを得たのではないかと思った。名探偵というヒーローものの楽しさの一つは、ワンパターンの面白さだ。黄門様の印籠とか、「月に代わっておしおきよ!」とか、「ジッチャンの名にかけて」…いや、これは無断でパクったらしいから、ちょっと…。

  • 傑作!

    前編の『サーチライトと誘蛾灯』もハイクオリティな短編集だったが、続編ではそれを軽々とうわまわってきた印象。 二つの事件のつながりが見事な『コマチグモ』に加え、意外性と悲しさ・切なさがきれいに共存している『彼方の甲虫』と『ホタル計画』は、控えめにいって傑作だと思う。 次はどんな作品を読めるのか今から楽しみだ。

  • 間違いなく今年のこのミス、本ミスに入るでしょう

    良いですね。粒ぞろいの短編集です。中でも表題作の蝉かえる、そして彼方の甲虫が個人的にはとても良かった。 前作も面白かったですが、やや地味でしたし、探偵役も虫好きという個性しかありませんでした。今作はこの探偵役の人間性が格段に深まっています。 独断ですが、今年のこのミステリーが凄い、本格ミステリベスト10の10位以内に間違いなく入ると思います。本ミスはひょっとしたら1位も…。

  • 情景が目に浮かびやすく読み応えあり

    1文が長くなく端的で理解しやすく物語のなかにす~っと入っていきやすい。昆虫のこと、生態系のことを知らなくてもそれがもたらすミステリーにどんどん引き込まれていく文体がよかったです。

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