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夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) (創元推理文庫 M き 3-2)

日本推理作家協会賞

夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) (創元推理文庫 M き 3-2)

北村薫

『夜の蝉』は、北村薫の「円紫さんと私」シリーズに属する連作ミステリです。女子大学生の語り手が日常の中に潜む謎を見つめ、落語家・春桜亭円紫の洞察を通して、人の心の綾を静かに解きほぐします。

日常の謎成長落語記憶と感情

作品情報

日常の小さな違和感が、語り手の成長と人間理解につながっていきます。

大学生活の風景、読書、落語、家族や友人との会話が、ふとした謎を通じて別の意味を帯びていく。北村薫らしい端正な構成で、ミステリの論理と青春小説の感受性を重ねた一冊です。

レビュー要約

  • 穏やかな語り口と精密な謎解きが好まれ、事件の派手さよりも読後の余韻と人物の成長を評価する読者が多い作品です。

書籍情報

出版社
東京創元社
発売日
1996-02-17
ページ数
280ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784488413026
ISBN-10
4488413021
価格
682 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

【第44回日本推理作家協会賞受賞】 『空飛ぶ馬』につづいて女子大生の〈私〉と噺家の春桜亭円紫師匠が活躍する。鮮やかに紡ぎ出された人間模様に綾なす巧妙な伏線と、主人公の魅力あふれる語りが読後の爽快感を誘う。第44回日本推理作家協会賞を受賞し、覆面作家だった著者が素顔を公開する契機となった第2作品集。

レビュー

  • 表題作「夜の蝉」は女と姉妹を巡る素晴らしい話

    朧夜の底 「朧夜の底を行くなり雁の声」 この遥か天高くを行く雁のいる場所を、夜の底と表現することで、果てのないような高さというか空の広がりを感じさせる。そういう情景を映し出す。というなんというか本書からいただいた素敵なイメージ。またそのようなものが吟じられる詩吟という世界にも少しふれることが出来、とても知的な刺激となった短編でした。 作中でふれられたお茶の水あたりの水辺の樹々ってあそこらへんかな? なんとなく情景が浮かんで素敵でした。 「六月の花嫁」 珍しく名探偵ぶりを示す「わたし」 しかし、どうやら本当の謎は秘められていたようで。 円紫さんのスーパー探偵っぷりが味わえる一作。 「夜の蝉」 やはり姉妹の話はじんとします。 「スリッパの話」「夜の蝉の話」ともに、弟がいる自分にも身につまされるものがありました。 さり気ない「竹とんぼ」のシーンは雰囲気的にも鮮やかで、空高く飛ぶその青い空に和解への爽やかさがそよぎます。 どれも犯罪として立証しようとしたら無罪になりそうな、ささやかな悪や遊びだったりするのですが、人の心を時に傷つけ、時に凍り付かせ、時にほほえませる、そういう「日常の謎」の醍醐味が詰まった作品です。 時間がある時に、ゆったりとした気分のときに読むと良いと思います。 解説にあるように無理にミステリだからと構えずに、普通の文芸小説として楽しむ、というのがオススメの読み方かな?

  • なぜこの題名なのか知りたくて読んでみました

    日常の出来事に対してそういう受け止め方もあるかと楽しく読みました。夜の蝉は別の昆虫ですが自分自身も経験したことだったので、身につまされました。

  • 品質

    中古品を注文しましたが届いた本は新品並みで気持ちが良いです。

  • 心地よさを感じる作品

    おなじみの円紫シリーズ。江美ちゃんや正ちゃんとの友情や、「私」と姉との 間に流れる温かなつながりが描かれ、3編どれも味わいがあった。特に表題作 「夜の蝉」で語られる姉妹のエピソードは印象的だった。私にも妹がいて似た ような経験がある。姉妹だからこそ意地になってしまう。喧嘩してしまう。 そういうこともよくあった。今では笑い話だが。家族、友人、きょうだい・・・。 人と人とのつながりって大切なのだと、改めて思う。読んでいて心地よさを 感じる作品だった。

  • 再読しても魅力あまりある

    落語家の三三さんによる一人芝居を観て、再び読みました。 昔は同年代として読んでいたものが、今は軽く主人公の年を越えて いますが、再読してもなお、いろいろな思いが心にしみてきます。 やっぱり北村さんの中でも一押しかもしれないなぁと思いました。

  • 謎解きは決してメインテーマではない

    「空飛ぶ馬」以来本当に久方ぶりに北村薫を読む。「空飛ぶ馬」では日常生活に潜む小さな謎を 解いていく小気味よさが印象的であったし、こういう形の推理小説が出来るんだという驚きもあった。 そして、この短編集「夜の蝉」。ここに収められた3篇においても日常生活の中でのちょっと理解でき ない出来事が円紫師匠の推理によって解かれていくというパターンは守られているが、それは作品に おいては決してメインディッシュではない。特に表題作の「夜の蝉」では主人公「私」と5つ年上の美貌の 姉との関係が情感を持って描かれる。姉の失恋をめぐる謎解きで読者を惹きつけておいて、この姉妹の 幼児時代からの確執、女同士の葛藤的なもの、そしてそれらの氷解も軽いタッチで描いていく。筆者が 何を書きたいのかということをはっきりと分からせてくれるような運び方だ。3つの作品を通じて、 筆者の広い分野における博識も印象的である。筆者は多くの人が知るように男性ではあるが、 この作品、特に「夜の蝉」はきっと女性が書いた作品であると言われても私は信じる。男性が ここまで女性の世界が描くことが出来ることに私は驚く。

  • 鮮やかに描かれる「私」の内面

    落語家の円紫師匠が探偵役のシリーズで共通している事ですが、 作品を読むにあたって、あまり大きなエネルギーを必要とはしません。 それでいて、ライトノベルではなく、強固な骨格を有しています。 軽妙な文体に加えて、推理対象が他愛ないものだからかも知れません。 ある作品では、書店の本の中身が、故意に入れ替えられている理由を推理します。 また、一人称で語られる、学生である「私」は、前作「空飛ぶ馬」に比べて、内部から少し変化します。 つまり、この年齢の時期にありがちな、微妙な心理的な揺れが、鮮やかに描かれています。 この部分は、本書の、特筆すべき魅力の一つです。 著者の感性は独特です。 それは、常に心地良いばかりではありません。 しかし、本書を流れる空気は、総じて、心地良いです。

  • 八万三千八三六九三三四七一八ニ四五十三ニ四六百四億四六

    それにしても本格物と落語は相性がいい。 ホームズ役として登場する噺家の春桜亭円紫と、 ワトソン役の女子大生。 この2人が解決するのは殺人事件などではなく、 日常で起こる不可解な謎。 「なぜ本屋の本がいくつも逆さになっているのか? 」 「なぜチェスの駒が冷蔵庫に隠されたのか? 」 どの謎においても必ず落語のネタが土台になった上で、 人間の闇や情愛が鍵として描かれているので、 読後感がしみじみと味わい深いです。 さて、「八万三千八三六九三三四七一八ニ四五十三ニ四六百四億四六」が読めますか? こんな数字ばかりですが、短歌です。 真ん中の一八ニは「ひとつやに(一つ家に)」と読むのがヒント。 答えはこの本の150ページ。 日本文化って本当に面白いと唸ってしまいます。

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