日本の文学賞

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落ちる (創元推理文庫 M た 2-5)

宝石賞

落ちる (創元推理文庫 M た 2-5)

白家太郎

『落ちる』は、多岐川恭の初期推理小説を代表する短編です。自己破壊へ傾く男の危うい心理を軸に、犯罪へ向かう衝動とその皮肉な帰結を鋭く描いています。

推理小説心理犯罪衝動初期短編

作品情報

危うい心理の傾きが、取り返しのつかない一線へ主人公を押し出していく。

既存の受賞回データでは白家太郎名義の「落ちる」として登録されているが、同データの参照先は多岐川恭を指している。現在確認しやすい創元推理文庫『落ちる』は、表題作「落ちる」に加え「ある脅迫」「笑う男」など初期短編を収録し、ISBN 9784488429058 が確認できる。Amazon JP の検索導線、NDL 系情報、楽天ブックスの販売ページを確認し、紙書籍の ISBN-10 と ASIN は 448842905X で補完する。

書籍情報

出版社
東京創元社
発売日
2001-06-01
ページ数
384ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784488429058
ISBN-10
448842905X
価格
1045 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

自己破壊衝動に苛まれる男の物語「落ちる」、万年平行員のささやかな逆襲「ある脅迫」、完全犯罪かと思われた事件の皮肉な露顕「笑う男」――第四十回直木賞を受けた三編など、多彩な趣向に満ちた初期秀作十編を収める。収録作品 落ちる/猫/ヒーローの死/ある脅迫/笑う男/私は死んでいる/かわいい女/みかん山/黒い木の葉/二夜の女

レビュー

  • 「落ちる」他9編

    氏の作品を読むのは初めて。 読む前の印象は、おもに時代小説を書いた地味めの作家といったものだったが、大いなる誤解だった。 サスペンス、ユーモア、推理、独創性といった要素が作品に合わせてバランスよく配合されており、まさしく「才人」といった言葉がピッタリ。 各編はおおむね短編としても短めで、テンポよく簡潔にまとめるストーリ展開もグッド。 とても楽しめる短編集だった。 「落ちる」…自己破壊衝動に悩まされる主人公の心理描写に迫真性があり、サスペンスが横溢している。 結末はハッピーエンドなのかそうでないのか、単純に割り切れるものではなく、深い余韻が残る。 「猫」…比較的オーソドックスな本格物だが、いさかかトリックには無理がある。 謎解きよりも、ヒロインをつけまわす何を考えているかよく分からない刑事の造形が秀逸。 「ヒーローの死」…密室物だが、冒頭を読んだだけでトリックの見当はつく。 この作品も謎解きよりも、自己愛に溺れた被害者の行動原理が印象に残る。 「ある脅迫」…乱歩の解説通りで、プロットには多少の無理があるが、主人公が脅迫により得たい内容に妙味があり、不思議なユーモアを醸し出している。 「笑う男」…倒叙物のお手本のような作品で、主人公が次第に追いつめられる過程は緊張感十分。 また、完全犯罪が瓦解するきっかけとなる手がかりの隠し方が巧妙。 「私は死んでいる」…これはとても面白い。甥夫婦に監禁された老人がなんとか脱出を遂げようとする過程を老人の一人称で、ユーモアたっぷりに描いている。最後のセリフはさりげないが、シャレている。 「かわいい女」…ヒロインは貞淑な妻なのかそうでないのかという興味でストーリーを引っ張っていく。 「古風な義理堅さと、驚くべき身勝手さの混淆」を備えたヒロインの造形は秀逸。しかし、ストーリー運びに起承転結が乏しいのが残念。 「みかん山」…本格物。トリックは大胆だが、いささか無茶にも思える。 だが、その無茶さは、大人になりきれない未熟な学生たちを中心に据えることで多少は中和されている。 「黒い木の葉」…これもとても面白い。個人的ベスト。 登場人物の書き分けが上手く、複雑な思惑が絡み合って最後まで真相を見抜けないプロットの一級品のミステリ。また作品全体を覆う抒情性も良い。 「二夜の女」…プロットは今一つだが、ヒロインと主人公の関係性のロマンチックな一面が良い。 以上、十篇。純粋に楽しめた。お気に入りの作家をまた一人見つけたという嬉しさでいっぱいだ。

  • 第四十回直木賞受賞作

    第四十回直木賞を受賞した短編集『落ちる』(河出書房新社刊)に収録されていた全作(七編:くわしくいうと、このうち『落ちる』『ある脅迫』『笑う男』の三篇によって直木賞を受賞)に、デビュー作である『みかん山』他三編、あわせて十編を収めた作品集。 まず、その作風の豊かさに驚かされ魅せられます。トリックをメインに据えたオーソドックスなミステリ、抒情性豊かなもの、コミカルでユーモアあふれるもの、感傷的なもの、じわじわと増してくるサスペンスに手に汗握るものなどなど、バラエティに富んださまざまな形のミステリが楽しめます。しかも、どれもおもしろい。 こんなに優れた、しかも直木賞を受賞している作品が、長い間入手困難、なかなか読めなかったというのだから、情けないはなしです。いったいどういうことなのでしょう。本書、創元推理文庫版もすでに品切れ状態だし。月に何百点も新刊が出ているのに対して、過去の名作の扱い方といったら・・・。なんとも寒い時代ですねぇ。

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