日本の文学賞

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緑のさる

野間文芸新人賞

緑のさる

山下澄人

彼女と友人に裏切られたフリーターの「わたし」が海へ向かい、不思議な出来事に遭遇する。物語の決まりごとを意図的に揺さぶりながら、現実、記憶、身体感覚が混ざり合う、山下澄人の初単行本。

実験的な語り裏切り記憶

作品情報

裏切りのあとに向かった海で、語りは思いがけない形にほどけていく。

平凡社から2012年に刊行された山下澄人の初単行本。『群像』『文學界』で注目を集めた著者の小説表現が、短い分量のなかで大胆に展開される。第34回野間文芸新人賞受賞作。

レビュー要約

  • 荒々しさと切なさをあわせ持つ小説として受け止められ、既存の物語の型から外れる力が注目されている。読者には戸惑いを与えつつ、その奔放さが魅力にもなっている。

書籍情報

出版社
平凡社
発売日
2012-03-16
ページ数
144ページ
言語
日本語
サイズ
13.7 x 1.5 x 19.4 cm
ISBN-13
9784582835618
ISBN-10
4582835619
価格
508 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

『群像』『文學界』で鮮烈なデビューを果たした著者による初の単行本。彼女と友達に裏切られたフリーターの「わたし」は、海に行き不思議な出来事に遭遇する。小説の可能性を追求した意欲作。平成24年度・第34回野間文芸新人賞受賞作。

1966年兵庫県生まれ。富良野塾二期生。劇団FICTION主宰。2011年に小説『星になる』(群像)、『水の音しかしない』(文學界)を発表。同年、あらゆる垣根を外した活動をとYAMASHITASUMITO+59をスタートさせ、現在月に数度、札幌において『Lab』と名付けた演劇の集まりを開催中。

レビュー

  • 文学とは何か?

    ほとんど読むに耐えない昨今の日本の小説の群れにあって、この小説は「チャレンジング」であるから、 この作品のレビューを書くって事はとても緊張を強いる。 8章からなる作品だが、どこから読み始めても読み通せる。 それだけでなく、何度も読み返せる。 昨年2月に発表された芥川2作品は、いずれも書き出しから数十行の先を読む気にならなかった。 今年2月の芥川2作品の一つは論外だが、もう一方は理系の人間が作家であったと言う、ただその理由 で読んでみたけれど、この「緑のさる」はそれを遥かに遥かに越えたユニークな作品である。 この著者のデビュー作「星になる」にも驚いた。 作家・山下は純文学(という言い方は嫌いだけど) に大きな一石を今後も投じ続けると信じる。 老若男女、世代を問わず・・皆さん、一度読んでみてね!

  • わけがわからんなあ

    緑のサルが出てくるわけではなく、何やらとりとめのない話が延々と続くだけで、あいかわらず何がいいのか分からないが野間新人賞受賞作だ。

  • ぶっとんだ作品

    ぶっとんだ作品だと思った。 最初一人称の「わたし」で始まっているのだけど、 いつの間にか、「わたし」には見えるはずのない風景が、 見える描写、つまり「わたし視点」から「神様視点」に、 なったりならなかったり、それでも一人称で進む。 ところどころで出来事がシンクロして、なんなんだこれは、 と思うのだけど、中盤からああ、なるほど、 それならそういう視点になるかと、うっすら納得する。 だけど、最後になったらもう、さっき「なるほど」って 思ったのがちっぽけなことだったくらいヤバくなって、 視点の移動が空間にとどまらず、時間も越えて、 時空を超えた視点移動が繰り広げられておわる。 こんな小説があっていいのかと思った。 超おもしろい。

  • 衝撃でした★カオスなのに整然。非日常なのに妙にリアル。拮抗する世界観。

    まず、頭を柔らかくしすぎるくらいにしてこの作品に臨まなくてはいけません。 AならばB、CだからDなんだよと教わる成長過程の子どもを過ぎて、 AだからってBにはならないことだってあるんだ、 という世の中の理不尽さと人への寛容さを備えた人なら、 「なんやねん、これ〜」と関西人でなくても関西弁ツッコミを心の中でガンガン入れながら、 緩やかに、そして確実に、気付いたらすごい量のアドレナリンが出て読んでしまう作品です。 最初は、ポジティブでもネガティブでもない、不思議な世界観とバラバラしている感じに戸惑うけれど、 途中で、というかわりと初期の段階で常識的な感覚のタガをはずしたとたんに、 急に作品に統一感を感じだして、このいい意味での『なんかようわからんけど深く考えるのやめよー』 という開放感が気持ちよくなりそれがどんどん増してくる。 整体に行ってふにゃふにゃにされたあとに首をゴキって鳴らされた気分。 内容とは関係ないけど、装丁も素敵。ずっと持っていたい、本棚掃除のときでも残すと決めました。 ずっと持っていて、時々また読みたい作品です。 なんだか最近つまらんな〜と思っている方、自分に厳しすぎる方、他人に厳しすぎる方、 首をゴキってならされてすこし緩めてみてください。

  • 作家の奔放さ

    個人的には平易な文章で書きつつじわじわと来る感じが文学的でよかったです。たぶんこの作家がもつ本来のものがもともと文学と相性がよかったのだと思う。ただなんとなくビギナーズラック的な感もあります。これからもこの作風で一貫するのは難しいと思うし、第一この作風の作品は面白いと思っている人でも一作読めばもう満腹といった印象があるので、書き続けるなら今後が難しいと思います。是非そのハードルをこえてほしいという期待をこめて。

  • 傑作

    これはめちゃくちゃおもしろかった。 リリカルで軽やかで、ユーモアセンスもいい! しかし昔でいう「ポップ」とも違って読み応えがある。 ストーリーがあるようなないようなといった感じではあるのだが、 それにもかかわらず退屈しない。サービス精神がありかなり楽しい。 とはいえそれでいて緊張感があるので、集中して読む必要はある(そのほうが楽しめる)ので、 各章が15ページくらいの短いまとまりになっているのは、 ちょうど読みやすかった。 とりわけ後半の「ぎそくの夢」あたりは圧巻で引き込まれた。 文章の独特のリズムが何とも言えず美しい。 たとえばゴンブローヴィッチとかが好きな人が 読んだらかなりハマるんじゃないかと思う。

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