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人間の大地 上 (プラムディヤ選集 2)

読売文学賞

人間の大地 上 (プラムディヤ選集 2)

押川典昭

プラムディヤ・アナンタ・トゥールの長編を押川典昭が日本語に移した翻訳作品です。植民地期インドネシアの青年を軸に、社会の矛盾、抵抗、近代への目覚めが大きな物語として展開します。

翻訳文学植民地社会近代

作品情報

人間の大地は、押川典昭が翻訳小説として形にした受賞作です。

プラムディヤ・アナンタ・トゥールの長編を押川典昭が日本語に移した翻訳作品です。植民地期インドネシアの青年を軸に、社会の矛盾、抵抗、近代への目覚めが大きな物語として展開します。 受賞作として、作者の関心と表現の特徴が読み取れる一作です。

レビュー要約

  • 読者や選考上の反応は、題材への切り込み方と文章の手触りに注目している。作品の形式に応じて受け止め方は分かれるが、受賞歴が示す通り強い印象を残した。

書籍情報

出版社
めこん
発売日
1986-01-01
ページ数
326ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784839600273
ISBN-10
4839600279
価格
1980 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

『人間の大地』は、1969年から10年間流刑地ブル島に勾留され、表現手段を奪われたプラムディヤが、同房の政治犯にそのストーリを日夜語って聞かせたという、途方もないスケールの4部策の第1部である。舞台は1898年から1918年にかけてのオランダ領東インドで、インドネシア民族が覚醒し、自己を確立していく長い闘いを描いた、これはいわばインドネシア近代史再構成の物語といえよう。 1980年、同書が発行されると、インドネシアの人々は熱狂してこれをたたえ、初版1万部が12日間で売れるという空前の評判を呼んだ。当時の副大統領アダム・マリクは、彼らの親や祖父たちがいかに植民地主義に敢然と立ち向かったかを理解するために、この『人間の大地』を読むよう若い世代に奨励すべきである、との推薦の辞をよせ、またある評者は、この本はこれまでに出たすべての歴史書の存在を無意味にしてしまうとまで激賞した。 余りの影響力に驚いたインドネシア政府は本書『人間の大地』第2部『すべての民族の子』第3部『足跡』を発禁処分とし、現在もその処分は解けていない。しかし、海外での評価は高まるばかりで、世界各国で翻訳発行されており、昨年1998年もノーベル賞候補に挙がっている。

プラムディヤ・アナンタ・トゥール(一九二五年生まれ)は、インドネシアが生んだ最高の作家であり、世界的にもっとも名を知られたアジアの文学者である。その七十五年の人生、そして半世紀におよぶ作家活動は、現代インドネシアの国家と国民がたどってきた激動の歴史と重なり合う。彼がしばしば「民族の語り部」と称されるのは、そうしたインドネシアの歴史の細かな襞の一枚一枚をめくるようにして小説を書いてきたからである。 * プラムディヤは、一九四五年八月からのインドネシア独立革命のさなか、非合法活動のかどでオランダ軍に逮捕、勾留された獄中で創作を始めた。二年半におよぶ勾留生活で、彼は独房の白い壁を見つめながら、オランダ植民地時代や日本軍政期、また独立革命中のインドネシア国民の体験を、低い目線で描きだした。ジャカルタのブキドゥリ刑務所で書き上げた、二十四歳のときの長編小説「ゲリラの家族」(一九五〇年)は、そうした初期の代表作である。再植民地化をねらうオランダに対する激しい戦いがつづく首都ジャカルタ。地下のゲリラ組織に身を投じた息子たち。オランダ軍に加わって革命…

レビュー

  • 素晴らしい作品だが、読書バリアフリーのために高齢読書人はKindle化を望みます

    ブル島四部作は素晴らしい。 作者が長生きすればノーベル文学賞が与えられたでしょう。 高齢読書人は若いときに『人間の大地』を読みましたが、第二部以降は未読です。 高齢になると、字が小さくて、本が重くて、つらいです。 読書バリアフリーのためのぜひKindle化してください。

  • アジア人必読の書

    ノーベル賞の呼び声も高い、プラムディヤ・アナンタ・トゥールの最高傑作。4部作の第一部の上巻。押川先生の訳は名訳でとても読みやすい。我々アジア人がいかにヨーロッパ列強の植民地政策に蹂躙されていたかを知る絶好の資料であり、物語としても劇的な話の展開の速さに惹き込まれること必至。主な登場人物が別紙に纏められているのもユーザーフレンドリー。

  • アジアの中の日本人として思うこと

    今からたかだか100年ほど前、インドネシアがオランダ領だった時代の物語。 最初は何の物語だかよく分からなかったが、読む進むうちにごく自然に、植民地で生まれ生きることの理不尽さが心に染み込んでくる。 そういうことを、若い青年の目線で淡々と描いている。 最高の教養を身に着け、資産を築き上げようとも、下等で無教養で人間以下としか見なされない。 主人公の青年も、先生からつけられたニックネームが屈辱的な意味なのでは、と何年も経ってから気づく。 この上巻で「裁判」というキーワードが出てくるので、きっと下巻は主人公が裁判で闘う展開になるのだろう。 翻って我が国、日本。 明治維新以後、短期間で欧米列強に劣らない国力を備え、欧米にならって植民地を持とうとした。 同じアジア人が宗主国になってしまったばかりに、歴史問題が今になってこんなにこじれるのではないかと思えてくる。 今、インド人が巨大IT企業のCEOになり、アジア諸国の方が列強という言葉に相応しい存在となり、反対に欧米諸国が落日の如く自壊していく。 世界史は現在ヨーロッパ中心主義だが、あと100年くらいしたらアジア中心になり、「かつて欧米は栄えた時代があった」と記されるかも知れない。 日本はどちら側として書かれるだろうか。 日本の首相がアジア外交に注力するのは大切なことだと思うが、ゆめゆめ、上から目線にならないようにと、願うばかりである。

  • 植民地時代のプリブミの気持ちが分かる本

    一言で言うと、オランダに負けたインドネシアの知識人の気持ちがとてもよく分かる本です。スラバヤの高等学校の生徒でブタウィ(現ジャカルタ)知事の息子ミンケが、オランダ人男性の現地妻(ニャイ)とその息子・娘と関わりを持ち、ニャイの知識と態度に敬服し、娘と恋に落ち、息子からは恨まれるという物語。ただ、面白いのはストーリーよりもミンケとフランス人画家・ジャン、父母、オランダ人副理事官の娘たちとのやりとり考え方です。例えば母親とはこんな会話が。 「・・・(前略)で、いったい何になるつもりです?それはもちろん、高等学校を出れば、何にでも好きなようになれるでしょうけれど」 「わたしくは、命令することもされることもない、自由な人間になりたいだけです、母上」 「え?そんな時代が来るのですか?初めて聞きましたよ、そんなこと」 上巻ではまだミンケは自分たちプリブミより西洋を上に見ているところがありますが、今後の展開がとても楽しみです。

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