作品情報
生と死の境を越えて行き来する言葉を、短歌のかたちで受け止める。
書肆侃侃房の現代歌人シリーズとして刊行された歌集。母の最期の言葉や植物の名に象徴されるように、個人的な喪失と自然の記憶が交わる。
レビュー要約
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生活の細部から死者との距離や時間の厚みを感じさせる点が高く評価されている。感情を大きく煽らず、静かな言葉で読者の記憶を揺らす歌集として読まれている。
書籍情報
- 出版社
- 書肆侃侃房
- 発売日
- 2019-03-20
- ページ数
- 141ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784863853553
- ISBN-10
- 4863853556
- 価格
- 2200 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/詩歌/歌集
第70回 芸術選奨文部科学大臣賞 第31回 齋藤茂吉短歌文学賞 ダブル受賞! 初めのほうは見ていなかった船影が海の奥へと吸いこまれゆく その瞬間を、その感情を、わたしは確かに知っている。知っているからもう充分なのに、吉川さんの歌はバレンを何度も押し当てるがごとく、過去と未来の記憶を鮮明に浮き上がらせるのだ。 ――椰月美智子 母が亡くなる二日前の夕方、かすれた声で「アビカンス、アビカンス」と、繰り返しつぶやいていた。母が若かったときに見たこの石の花が、夢の中にあらわれてきたのかもしれない。 言葉は、生と死の境界をふっと超えて行き来することがある。短歌の言葉もそれに深く関わっているように思う。普通ならばすぐに消えてしまう声を、目に見えない遠いところへ届けようとする試みが、歌を作るということではないだろうか。(あとがきより)
吉川宏志(よしかわ・ひろし) 1969年宮崎県生まれ。京都大学文学部卒業。現在、京都市在住。 1995年、第1歌集『青蝉』を刊行。翌年、第40回現代歌人協会賞を受賞。 2016年刊行の第7歌集『鳥の見しもの』で、第21回若山牧水賞と第9回小野市詩歌文学賞を受賞している。 歌集には他に、『夜光』、『海雨』、『曳舟』、『燕麦』などがある。 評論集に『風景と実感』、『読みと他者』など。 塔短歌会主宰。京都新聞歌壇選者。
レビュー
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繊細で時に鋭い歌の数々
現代の有名歌人のなかで、端正な歌を作り続けている吉川宏志氏の第8歌集。 「母の死」が大きなテーマだが、成長した子供たちの活躍、デモに参加したときの歌など 幅広い活動が反映された歌集。 金網は海辺に立てり少しだけ基地の中へと指を入れたり もう君は知ってただろう世界とは残酷で歪つ飛ぼう泉へ(デヴィッド・ボウイ 物名歌) 水面に引き上げられて剛毛は金色に光りぬ朝市の蟹 アビカンス、アビカンスと母は呟けり検索すれば石蓮花のこと もう会えない、そのことがよく分からない 蝋の火のなか芯は曲がりて
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良い歌と、夏の朝
身に入れる薬剤の強さを我は知らず朱を曳きながら欅散りおりー吉川宏志ー 井上靖の欅の木が、好きな事 や、コロナ化と、最近の自分の仕事や生活状況を振り返り、この歌は今の自分にこれでいいんかな?と問い直す感があり、こころに響きます。とても好きな歌人さんのひとりです。ぜひご一読を!
関連する文学賞
- 齋藤茂吉短歌文学賞 第31回(2019年) ・受賞
- 迢空賞 第54回(2020年) ・候補