日本芸術院賞 にほん げいじゅついん しょう
第47回(1991年)
受賞者
12名『月影の道』は稗田一穂の日本画。月明かりを思わせる静けさのなかに、道の奥行きと自然の気配を重ねる。
月影の静けさと道の奥行きが、自然へ向かう視線を穏やかに導く。
國領經郎の《呼》は、日展出品作として評価された洋画作品である。砂丘や海辺を思わせる静かな空間に人間の孤独と祈りを重ねる、作家晩年の主題が凝縮された一作として位置づけられる。
砂の風景を通して、静けさの奥にある人間の声を響かせる洋画作品。
長江録弥の《砂丘》は、第22回日展に出品された彫塑作品として日本芸術院賞を受けた。人体や自然の量感を彫刻の構造へ移し、静かな緊張をたたえた造形として位置づけられる。
砂丘という自然のかたちを、彫塑の量感と静けさへ変換した作品。
青木龍山の《胡沙の舞》は、第22回日展に出品された陶芸作品として日本芸術院賞を受けた。磁器の造形と焼成による深い色調を生かし、器物を越えた彫刻的な気配を帯びる。
陶の肌と色の奥行きで、砂漠的な動勢を器形に宿した作品。
近藤摂南の《薛濤詩》は、唐代の詩人・薛濤に取材した書作品である。第22回改組日展の出品作として制作され、詩文の気品と筆勢を一体化した書の成果として日本芸術院賞を受けた。
詩の気品と筆の動きを重ね、古典への敬意を現代の書へ結晶させた作品。
中村昌生の白鳥公園《清羽亭》は、名古屋市の白鳥庭園内に建てられた公共茶室である。数寄屋建築の研究と設計経験を背景に、茶の湯の空間を現代の公共空間へ開いた建築として評価された。
数寄屋建築の知見を公共茶室に結び、庭園の中に茶の湯の時間を生み出した建築。
佐藤朔は、評論と翻訳を通じてフランス文学を日本の読者へ紹介し続けた業績により恩賜賞・日本芸術院賞を受けた。作品単体ではなく、研究、批評、翻訳を横断する長年の仕事が対象である。
フランス文学の批評と翻訳を通じ、日本語の読書文化に深く寄与した業績。
東敦子は、声楽家としての国際的な活動により日本芸術院賞を受けた。オペラ歌手として欧米の舞台で培った表現力を、日本の声楽界に還元した歩みが評価されている。
国際舞台で磨かれた声楽表現を、日本のオペラ文化へつないだ活動。
青木鈴慕は、琴古流尺八の演奏家として優れた演奏活動により日本芸術院賞を受けた。古典本曲の精神性と舞台での音色を結び、尺八音楽の存在感を高めた。
尺八の古典を深い息と音色で現代の舞台に響かせた演奏活動。
清元榮三郎は、清元節三味線方としての長年の業績により日本芸術院賞を受けた。歌舞伎舞踊を支える清元の音楽性を、舞台の呼吸に沿って磨き上げた演奏家である。
清元節の三味線で、歌舞伎舞踊の情緒と速度を支えた演奏活動。
坂東三津五郎は、歌舞伎の演技と振付で第47回日本芸術院賞を受けた。古典の型を保ちながら、舞踊性と役の心理を結びつける舞台表現が評価対象となっている。
歌舞伎の型と身体表現を結び、古典演目に鮮やかな生命を与えた舞台芸術。
西川扇藏は、日本舞踊西川流の宗家として長く舞踊界を支えた業績により日本芸術院賞を受けた。古典舞踊の継承と公演活動を通じ、流派を越えた舞踊文化の発展に寄与した人物である。
西川流の伝統を背負い、古典舞踊の継承と発展に尽くした舞踊家の業績。