山本健吉文学賞 やまもとけんきちぶんがくしょう
第3回(2003年)
受賞者
8名『四時抄』は、山上樹実雄の第五句集。水原秋櫻子・山口草堂の流れを受ける清冽な叙情を保ちながら、四季の移ろいと老いの時間を、軽みと陰影のある俳句として結晶させている。
透明な季語の奥に、生きることへの渇望と静かな翳りが息づく句集。
『花晨』は、きくちつねこの句集。梅里俳句選書・平成の風韻の一冊として、日々の景と季節の気配を丁寧にすくい、穏やかな言葉の中に芯のある感受性を映している。
朝の花のような清新さで、暮らしの時間を季語へ結び直す句集。
『燠火』は、大島史洋の歌集。仕事や暮らしの只中にある感情の昂ぶりを、抑制された定型の中に置き、静かな表面の下で燃え続ける意思を描く。
鎮めようとしてなお噴き上がる思いを、定型の低い熱として残す歌集。
『流離伝』は、成瀬有の歌集。流れ移る人生の感覚を題に据え、個人の記憶と時代の気配を、端正な短歌の連なりとして描き出す。
流離の感覚を抱えながら、記憶と風景を短歌の秩序へ移す。
『世界中年会議』は、四元康祐の詩集。移動するビジネスパーソンの感覚、都市、メディア、家族、世界情勢を詩の素材に取り込み、中年という地点から世界全体を見渡す。
生活と世界情勢のただ中から、現代詩の冒険を立ち上げる。
『近世中期の上方俳壇』は、深沢了子による俳文学研究。芭蕉没後から蕉風中興へ向かう時期の京・大坂俳壇を、松木淡々らの動向と俳風の変化から読み解く。
江戸の洒落風が上方で変容する過程を、京と大坂の俳壇から照らす。
『俳句のモダン』は、仁平勝の俳句評論。近現代俳句の表現に起きた変化を、モダニズムの感覚と定型の緊張関係から読み、俳句が現代性を獲得する過程を考える。
俳句表現に何が起きたのかを、モダンという視点から問い直す評論集。
「島人ぬ宝」は、BEGINの楽曲。石垣島の中学生が書いた島への思いをもとに生まれ、島で育つ者が土地の歌や言葉、記憶をどれほど知っているのかを問いかける。
ふるさとの歌を知りたいという問いを、島の未来へ手渡す代表曲。