山本周五郎賞 やまもとしゅうごろうしょう
第5回(1992年)
大衆文学時代小説
受賞者
4名船戸与一『砂のクロニクル』は、イラン革命後の中東とクルド人の闘争を背景に、二人の日本人の運命を交差させる大河冒険小説。国家、民族、信仰、裏切りが重なり、乾いた土地に人間の執念が刻まれる。
中東の砂塵の中で、理想と暴力が人間の生を押し流す。
586ページ
中東クルド人革命冒険小説
高村薫『神の火』は、日本海沿岸の原子力施設をめぐるサスペンス。原発という現代の火に挑む男たちの企てを、硬質な描写と緊張感で追い、初期高村作品らしい社会性を際立たせる。
プロメテウスの火をめぐり、男たちの孤独な企てが始まる。
525ページ
原子力サスペンス社会派テロリズム
伊集院静『海峡』は、瀬戸内の港町で育つ少年の時間を描く自伝的長篇三部作の第一部。幼年期の記憶、家族、土地の匂いが、海峡を挟む風景とともに抒情的に立ち上がる。
海を隔てる町で、幼い日々の哀切とぬくもりが息づく。
365ページ
自伝的長篇幼年期瀬戸内家族
地蔵記
中村隆資『地蔵記』は、大水を前にした村へ迷い込んだ僧をめぐる物語。降り続く雨と苛立つ村人たちの中で、人柱にされかけた男の必死の振る舞いが、寓話的な緊張を生む。
降りやまぬ雨の村で、ひとりの僧が生き残る道を探る。
328ページ
村落雨人柱寓話