光射す海 (角川文庫)
記憶を失い妊娠した女性をめぐり、海辺から彼女の過去をたどるヒューマン・ミステリー。
作品情報
海岸で倒れていた女性は、誰なのか。言葉を失った彼女の記憶が少しずつ開いていく。
『ウォール・フルーツ』を改題した文庫版で、海をめぐるイメージと再生の感覚が重なる。
書籍情報
- 出版社
- KADOKAWA
- 発売日
- 2010-10-23
- ページ数
- 320ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.5 x 1.4 x 15 cm
- ISBN-13
- 9784041880142
- ISBN-10
- 4041880149
- 価格
- 902 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
理不尽な宿命、押し寄せる運命。行き着く先は? 海岸で倒れていた女性は、言葉と記憶を失っていた。しかも妊娠4ヶ月。彼女はいったい誰なのか? 精神科医の望月は、彼女の過去の物語のかけらを探し始めるが……!? 人間の宿命を問うヒューマンミステリ。
●鈴木 光司:1990年『楽園』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。91年『リング』シリーズでブレイク。
レビュー
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絶妙な変化球と不思議な読後感
主要な登場人物の半生が描かれるタイミングが、やや変則的な作品。 読み手の気持ちを柔らかくあいまいに煙に巻きながら、物語はどんどん展開して行きます。 前半の、一つ間違えば退屈ににりかねない描写を積み重ねた上での 後半のスピード感がたまりません。 詳しくは書けませんが、最後まで読み終わると、なぜ作者がこのような展開の仕方を 選んだのかがわかり、はっとさせられます。 カバーイラストも、作品を読む前と読んだ後では印象が全く異なり、とてもよく 作品とリンクしていると思います。大好きな一冊になりました。
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Goodミステリー
一見関係ない出来事がつながっていく。 ミステリによくある構造ですが、筋がきちんとしてないと こじつけ感がでて白けるものですが、 これはそんなことはありません。 上質のエンターテインメントです。
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悪くはないのだが・・・
入水自殺しようとした妊婦とマグロ漁船に乗っていた恋人. 妊婦の抱える運命とは? 妊婦の正体を探っていくところからストーリーは始まる. やがてその家系の持つ特殊な遺伝性疾患に行き当たり, 一方,その恋人は過去を捨てるためにマグロ漁船に乗り込み, 質の悪い乗組員に目をつけられてしまう. そのプロセスでの不安や恐怖,あるいは狂気の描き方は巧みで, 最終的に恋人が苦難を乗り越える姿には圧倒されるものがある. 一方で,結末にはやや不消化感も否めないところもある. また,実在の疾患をモデルにこのような描き方をするのはちと問題があるのではなかろうか?
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いろいろな要素の詰まった作品
黒い雲の切れ間から射し込む光のように、絶望的と思える運命にも光明が差すことがある。それがとても皮肉なものであったとしても、運命が切り開かれることに変わりはない。メディカル・サスペンスと海洋ロマンの味付けをした恋愛小説と言った作品です。
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考えすぎて煮詰まっちゃったような話
これを初めて読んだのは高校生の時。 当時「リング」「らせん」「ループ」の 三部作を通じて描かれた世界観に感動して、 氏の作品を読み漁っていました。 しかし、この作品は期待はずれで、 読んでる間がとっても退屈でつまらなかったです。 しかも、同作を途中まで読んでやめてしまった友人に あらすじを教えているうち まるでコントのネタ話のように思えてきて、 夕陽が差し込む放課後の教室で ゲラゲラ笑ってしまう有様でした。 あれから数年経った今になって思えば、 どうしてもこの状況下の恐怖が描きたくて 構想を練りに練って考えすぎた挙げ句、 煮詰まってしまったような印象を受けます。 この話でバカ笑いする私も私ですけどね(苦笑)
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少し展開が強引な気が・・・
登場人物の心理描写はすばらしいと思います。 1人の女性の行動を紐解いて行く展開はとても惹きこまれるものがありました。 おもしろい小説であるのは否定しません。 ただ展開が強引すぎないかなって思います。 また、序盤活躍してた登場人物が途中から消えてしまうのは悲しかったです。
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本能とは?
入水自殺をはかった妊娠中の女性と、それに関わる精神科医、彼女に好意を持った男性、お腹の子の父親を中心に展開して行く。 女性の心を閉ざした物はいったい何なのか・・・。 いろいろな感情の交錯。生まれ持った運命を背負って生きることの辛さ。愛とは何なのか、多くを考えさせられる一冊であった。死を目前に、生きることへの執念を燃やすこと。何年も苦しみつづけ、愛する人と共に死にたいと願うこと。果たしてどちらが人間の本能なのだろうか?
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海に重ねて
光射す。ように、絶望の奥にある希望という風に表現したのか。皮肉な運命。定められてしまったら逃げようのない。そういった絶望の表現が巧い。精神病というのをとりあげたのはそういう意図なのだろう。 主人公というのが誰なのか分かりにくいが、望月かな。だがこの望月が雰囲気の上げ下げもしている。言うならば部分的に不要なところまで書いていて蛇足である。だが、砂子健史を出したところで望月の存在はがらっと変わった。精神病者を好きになったとき。自分でもどうか考えさせられた。 うって変わって現実逃避して海に逃げた真木洋一。その真木洋一の海でのシーンの演出は秀逸だったように思う。鈴木光司は海が好きなのかよく作品にだしているが、心理描写に加えてその人の視点から見た!それぞれの海がある。それがリアルで、巧い。死にかける緊迫感、死を待つ絶望、死を逃れた希望。海と重ねた心理描写が自分は結構気に入っている。遠い海からだから改めて芽生える恋愛感情。どこにいても好きには変わらないというのには単純にいいなあって思う。
関連する文学賞
- 横溝正史ミステリ&ホラー大賞 第11回(1991年) ・候補
- 角川短歌賞 第66回(2020年) ・受賞