作品情報
虎の牙は、武田家を軸に読者を作品世界へ導く。
信玄以前の武田家を舞台に、兄を支える者の忠義と葛藤を骨太に描く歴史長編。合戦の迫力に加え、人物関係の謎が物語を推進する。 書誌確認では、単行本・文庫として確認できる場合のみ紙書籍の識別子を採用し、雑誌号や掲載媒体の番号は使用していない。
レビュー要約
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題材の切り取り方と構成を評価する声があり、背景知識を持つ読者ほど細部の厚みを楽しめる。一方で、密度の高さを重く感じる読者もいる。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2017-10-18
- ページ数
- 352ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.8 x 2.5 x 19.4 cm
- ISBN-13
- 9784062207416
- ISBN-10
- 4062207419
- 価格
- 1980 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
武田信玄の父・信虎の謎の弟、勝沼信友。「山の民」として育てられたその男は、自らに流れる血の運命にのみ込まれていく。一方、罪を犯して流浪の末武田家に仕官した足軽大将の原虎胤は、その武勇から「鬼美濃」と恐れられ、外様ながら家中で重きをなしていく。乱国甲斐の統一を目指す武田信虎を挟んで、二人の男がある「呪」を背負いながら戦場を駆け巡る。最強武田のルーツを描く、女流ヒストリーテラーのデビュー長編。 本当の戦国の風景を、描きたかった。 「合戦のディテールと迫力、謎とどんでん返しというミステリー要素。呪いが信じられる土俗的世界と貨幣が流通する近代的世界がせめぎ合う独自の戦国を見事に作り出した圧巻のデビュー作だ」(末國善己 文芸評論家) 最強武田家のルーツを描く、女流ヒストリーテラーのデビュー長編小説。 兄のために生き、兄のために死ぬ。 信玄以前の武田家に、最強の虎と牙がいた。 武田信玄の父・信虎の謎の弟、勝沼信友。「山の民」として育てられたその男は、自らに流れる血の運命にのみ込まれていく。一方、罪を犯して流浪の末武田家に仕官した足軽大将の原虎胤は、その武勇から「鬼美濃」と恐れられ、外様ながら家中で重きをなしていく。乱国甲斐の統一を目指す武田信虎を挟んで、二人の男がある「呪」を背負いながら戦場を駆け巡る――。
武川佑(たけかわ・ゆう) 1981年神奈川県生まれ。立教大学文学研究科博士課程前期課程(ドイツ文学専攻)卒。書店員、専門紙記者を経て、2016年、「鬼惑い」で第1回「決戦!小説大賞」奨励賞を受賞。甲斐武田氏を描いた書き下ろし長編の本書がデビュー作となる。
レビュー
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ぐいぐい読めた
歴史小説は大好きですが、この作家の小説は好みにあうのか非常に気に入った。悪将軍暗殺や真田の具足氏もよかった。近い将来直木賞をとれると思うが応援しよう。
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武士の生き方
戦国時代の武士の生き方。個人と家の関係など。信玄で有名な武田家ですが、それ以前の歴史が新鮮でした。
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情緒を感じる描写が好き
カバーを何回かお見かけすることがあり気になっていた本作。 戦のシーンはダイナミックで迫力があるが、ちょっとした描写に女性らしい雰囲気を感じ、 心に訴えかけてくるシーンが多かったように思います。 家族モノが好きな方にもオススメしたい。
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信虎期の武田家を描いた傑作
物語の舞台は、信玄の父・信虎の時代になります。 勝沼信友、武田信虎、原虎胤の三人が中心となり、激動の時代を駆け抜けていきます。 特に信友の扱いに驚きました。信友は作中でも何度か名前を変え、「イシ→アケヨ→信友」となります。これは実際購入されて読まれると、面白いかと思います。風景描写、合戦描写も素晴らしくまるで戦国時代にタイムスリップしたようでした。武士の社会と山の民を描いた世界観も新しい試みだと思います。ホラー的な要素もありますよ。 また、武田家が好きな人なら作中の家臣団の名前にピンと来るかもしれません。信玄世代から見ると、老臣古参として描かれる世代がこの作品では、青年期や壮年期の姿で描かれています。 台詞も心に響くものが多く、読んでいると自分もその場にいるように胸が熱くなります。戦国&歴史ものが好きな方に是非お勧めしたい作品です。作者さんの次回作が出ましたら是非読んでみたいです。
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がんばってるなぁ。
武川佑さんの本です。 世界観としては、網野史学系ですな。 武田信玄の父信虎の話です。なんか、「もののけ姫」っぽさがある話でした。 山の民に育てられたアケヨが、山の民から追放され、ひょんなことから武田家に仕えることになる原清胤とともに、信虎に見いだされる。 信虎はアケヨが自分の異父兄弟であることに気づき、勝沼信友として、信虎の右腕として活躍する。 原清胤も武功をつみ、武田家で重きをなしていく。 そして、今川と北條と戦っていき、信虎はなんとか領国を治めていくのだが…。 とりあえず、山の神だとか、神秘的な話もでてきますが、それを現実にいかに落とし込んでいくか、が勝負の作品だと思いました。 ただ、個人的には、いささか読みづらいと感じる表現なんかもあって、「槍」を「鑓」とことさら古めいて書いてみたり、なんか「肩に力はいってんなぁ…」「もっと、シンプルに、わかりやすく表現できんのかなぁ…」と思わないではいられないところもあります。 なんか、こういう話って、トンデモ系になって、おもしろさがないのですが、うまく現実と折り合いをつけようとしているところが、がんばっている感じがして好感がもてるところです。
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内容は素晴らしいが、文章がこなれていなくて、読むのに苦労した。残念。
題材は面白い。着想もユニークで、こういう歴史小説もありだと思う。特に、山の民や呪術的要素を本格歴史の流れに取り込んだアイデアを評価したいと思う。新人作家が満を持して放った意欲作であることは間違いない。 ただ、小説として読みにくかったことも確かだ。状況のつかめない場面がまず書かれ、一体何がどう始まったのかわからないまま読み進めないといけないケースが非常に多くて、これがこの作者の書き方だということに慣れるまでは、読書があちこちで止まってしまうという難点があった。要するに、事情説明が後出しで、それもかなりページを読み進めないと把握できないことが多すぎた。ああそうかということで数ページさかのぼって確認して納得する、という作業を繰り返し繰り返し求められ、解読のための難解さに辟易した。 例を一つだけあげておこう。 p.159 原虎胤が上条河原で今川方を打ち破り、甲府に戻ってきた場面。 途中で一蓮寺の僧長元と出会い、いきなり長元に「甲駿国境いで何を犯したか」と厳しく問い詰められ、虎胤が言い返すこともできない、という場面である。肝心の甲駿国境での出来事が何も書かれていなくて、いきなりこのやり取りを読まされてしまい、いったい何のことだとページを遡って読み返すのだが、もちろんそんな記述はどこにもなく、途方にくれてしまった。 いくら考えても理解できないまま、仕方なく先を読み進んでいくと、p.170まで行ってようやく、今川勢が退却した際に、国境いの集落を焼き討ちにしたことが書かれていて、長元の批判がこれだったのかとわかる。謎の回収があまりにも遠すぎるのではないか。しかも、その間に信友の謀反まがいの事件などが語られたりしていて、読者の関心はそちらに移っていってしまうという複雑さだ。私はp.159で数分間悩んだおかげで、かろうじて長元の言葉と焼き討ちをリンクさせることができたが、何気なく読み飛ばした読者の多くは、長元の謎の言葉など忘れてしまっているに違いないと思う。 ただ、焼き討ちくらいは戦国の世では珍しいことでもないのに、という違和感で読んでいくと、どうやらその際、虎胤は村の小さな子供たちを犠牲にしているらしく、長元の言葉にはそれに対する批判が含まれていることもわかってくる。さらに、子供つながりで信虎の庶子竹松の悲劇が絡んできたりして、長元の放った言葉は重要な意味を持っていたことがわかるのだが、それだけに、それの前振りであるp.159の場面を素通りさせないよう、作者は読者に対して神経を使うべきだろう。 これに類する場面が山のようにあるのだ。作者は自分でわかって書いているつもりだろうが、読者にどう伝えるかという点がおろそかになっているのではないか。全体にサクサク読めないのがこの作品の欠点である。疲れる作品だった。 また、会話の書き方もうまくなく、主語が誰なのかはっきりしない場面が多かった。いまだにどっちの言葉か解釈しきれていない会話がたくさんある。おそらく作者が、読者の立場に立って読み直していないからだと思う。担当の編集者がそこに気がつかないままOKを出したのだろうが、多くの人の目を通してきてこういう状態が解消できていないというのは、作品の題材以前の欠陥ではないだろうか。 ただ、幾多の困難の末にたどりついた、この作品世界そのものは素晴らしいものであったので、評価は星3つにさせていただいた。
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新しい「戦国の風景」
最初に。本レビューにネタバレはない。 戦国時代小説といえば、小説では一大ジャンルといっていい。乱世を生きる人々の欲にまみれた“人間臭さ”や、組織に翻弄される武将の姿などに共感する人が多いからだと思う。 戦国大名の合理的な判断や信念に裏打ちされた行動は、非常に魅力に富んでおり、時に憧れる。 しかし、今から四百年以上昔の人々の思考回路が現代人とピッタリ重なるとは到底思えない。多分に超自然的なものに対する畏れが重要なファクターとしてあったことは想像に難くない。ただ所謂「オカルト」な要素を戦国時代小説に持ち込むのはなかなか難しい。現代人が思い描く“戦国時代”には、ほとんど「オカルト」が排除されているからだ。本来ならそこにこそ人々の日常があるというのに。 本書はそういう泥臭い戦国のオカルト的ファクターへ果敢に挑んだ作品だと感じた。日本人の心にまだ神が存在している時代、つまり“畏れ”のある風景である。あるいは筆者が描き出した信玄以前、武田信虎の時代こそ日本的土着神のいる最後の時だったのかもしれないが。そうだとすると、本書のエンディングとともに土着の神々の時代も終了することになる。読後の幻想的寂寥感の一端はそこに由来するのかもしれぬ。 上記の感想は本書のほんの一端でしかない。デビュー作というものは筆者の人間性がもっともあらわれるという。本書は莫大なテーマを内包しており、筆者の情熱が奔流となって読者に叩き込まれてくる。この筆者の焦りにも似た情熱は縦横無尽な展開へと昇華され、本書の特徴のひとつとなっている。めまぐるしい場面転換は映画やマンガのカメラワークを思わせる。そこに生まれる緊張感。筆者の言う「本当の戦国の風景」は見事に表現されていると言わざるをえない。
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山神、異形の魔物、呪、禁忌、穢れ等の霊界・妖異的雰囲気が全編を漂っている異色の戦国時代小説
武田信玄以前の甲斐の争乱を描いた戦国時代小説。山神、異形の魔物、呪、禁忌、穢れ等の霊界・妖異的雰囲気が全編を漂っている点が特徴である。主人公を務めるのは、信玄の父に当たる無神論者の信虎と、信虎の腹違いの兄(史料上は弟)で、山神を信奉・畏怖しているにも関わらず弑逆してしまった元々は山人のアケヨ(信友)という好対照の二名。表題の「虎の牙」は、「信虎の牙となって闘うアケヨ」、という意味か。 "山神の弑逆"が下剋上のメタファーである事から分かる通り、一般に強固と思われている武田軍団が、実は、信玄以前はカオス的で一枚岩ではなかった点が良く描かれている。また、元々は山人のアケヨの視座から見た、「武士とは何か」、という本質的問い掛けが作者の工夫であって、本作の意匠の1つなのだろう。山人は生きるために野獣・野鳥を殺すが、武士は利己目的で人を殺す、というやや哲学的な問い掛けである(戦国時代だから仕方ないと言ってしまえば、それまでだが)。一方で、ある武将が語る、「戦さと内政とは表裏一体」、という理性的言葉も意匠の1つなのだろう。どちらも現代に通じるものがある。 合戦シーンや軍略は他の戦国小説と大差ないので、やはり、アケヨが放つ異彩が本作の魅力であろう。冷静に考えると、明日の命さえ分らない戦国時代の武士には神仏を信仰していた者も多かった筈である。その点を強調して掬い取って、アケヨ(信友)という人物に着目した作者のアイデアが光る異色作だと思った。
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