作品情報
何気ない暮らしの表面に、家族の不安とやさしさがにじむ。
新潮文庫『プールサイド小景・静物』に収録。芥川賞受賞作「プールサイド小景」と並び、庄野潤三が得意とした家族と日常の陰影を読むことができる一冊である。
レビュー要約
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大きな展開を抑えた静かな小説でありながら、生活の細部から不穏さや優しさが立ち上がる点に支持がある。読み返すほど人物の距離感が見えてくるという受け止め方が多い。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 1965-03-01
- ページ数
- 320ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-13
- 9784101139012
- ISBN-10
- 4101139016
- 価格
- 649 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
突然解雇されて子供とプールで遊ぶ夫とそれを見つめる妻――。 ささやかな幸福の脆さを描く芥川賞受賞作「プールサイド小景」等7編。 大金を使い込み、突然会社をクビになった夫。妻が問いただすと、つらい勤めの苦痛や不安を癒すため毎晩のようにバーに通いつめていたという。平凡な中年サラリーマンの家庭に生じた愛の亀裂――日常生活のスケッチを通し、ささやかな幸福がいかに脆く崩れやすいものかを描いた芥川賞受賞作『プールサイド小景』、家庭の風景を陰影ある描写で綴った日本文学史上屈指の名作『静物』等、全7編を収録。 【目次】 舞踏 プールサイド小景 相客 五人の男 イタリア風 蟹 静物 七篇再読……阪田寛夫 【本書収録「プールサイド小景」より】 結婚してから十五年にもなるのに、そういう危険を夫の身に感じたことがなく、「勤めを大事にしてね」と頼んだりしたことは覚えがなかった。 そういう風に考えてみると、彼女は自分たち夫婦が今日まで過して来た時間というものが、まことに愚かしく、たよりないものであったことに改めて気が附くのだ。そうなると、課長代理にまでなっていてクビにされた夫が俄かにボンヤリした、智慧のない人間に見えて来る。その夫を、彼女は遊び好きの飲ん兵衛だが、それだけ働きのある夫だと思ってはいなかったか。……(本書54ページ) 庄野潤三 (1921-2009) 大阪府東成郡住吉村(現大阪市住吉区帝塚山)生れ。九州帝国大学法文学部卒。海軍に入隊後少尉に任官。館山砲術学校で庄野隊を結成、米軍上陸に備え砲台を建設する。学校教諭、放送会社勤務の後、作家業に専念。1955年「プールサイド小景」で芥川賞受賞、第三の新人の一人として活躍する。「静物」「タベの雲」「紺野機業場」「絵合せ」「明夫と良二」「引潮」「サヴォイ・オペラ」「貝がらと海の音」「ワシントンのうた」等数多くの多彩な作品がある。日本芸術院会員、勲三等瑞宝章。
レビュー
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原点
昔図書館で借りて読みましたが、 年月経て家族シリーズに目を通した後で再び読むと、庄野潤三さんの原点なのかと納得したり、新鮮さが良い、 この本抜きには庄野潤三さんを語れないのかも
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人間の本性を抉り出す様な
人間の深層心理が巧く描写されていました。家族の中で発生する猜疑心、壊れ行く信頼、欲・愛情・嫉妬が交錯して狂気に走り出しそうな緊迫感、、、、。ただバサッと終わってしまうストーリーもあり、後味のすっきりしないものもありました。
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静物ゆえに
淡々と描かれる凡庸な日常、安定した家族の日々の心情が、たった数行の叙述によって、全て危ういものに変化してしまう、まるでホラー映画のような恐ろしさを秘めた小説。村上春樹の短編案内にも紹介されていたと記憶します。氏の以後の小説『夕べの雲』も『静物』や『プールサイド小景』あってこその作品でしょう。実際のところ、『夕べの雲』には、表面上全くといっていいほど日常の危うさや破綻の雰囲気さえもありませんが、それが潜在化されてしまっているところに『静物』以後の氏の作品の背景があるのだと僕は思っています。物語は潜在化しているのです。まさに現代の風景そのものでしょう。
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何かをきっかけに崩れ去ってしまいそうな危うさ
7作品が収められた短編集。 「舞踏」「蟹」「静物」と一女、二男の子のある夫婦の日常が切り取られており、他の作品も、多少の変化はあるものこの夫婦を軸とした私小説の趣きだ。 全ての作品を読み終えると、夫婦が哀しみを抱えているように映る。夫が年若い女性に思いを寄せ始めたのを知り、そのことを打ち明けてくれないことに静かに打ちのめされる妻「舞踏」、夫の使い込みでクビになった理由に、夫婦の溝を実感する妻「プールサイド小景」、過去の不幸が見え隠れする家族のひととき「静物」。 何かをきっかけに崩れ去ってしまいそうな危うさを感じる。 【芥川賞】
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日常にしみ込んでくる不安と崩れ
なにげない日常のなかににひそむ不安。おだやかにみえる日常はすこしのことで崩れていく。 ひび割れに水がしみこんでいくようにせまる不安と崩れがごく穏やかな文体で描かれている。
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情景描写だけで雰囲気を伝えていく
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逸品
素晴らしい作品が詰まった短編集とめぐり合った時、これはまさに至福の一時である。ゆっくりと一品づつ堪能するもよし、一気にかき込むもよし! この短編集はまさに逸品だ。『プールサイド小景』『静物』などの短編の粋が集まっている。まあ、個人的には『蟹』が舌足らずでドタバタしてるかなという印象がありますが、他は文句ありません。 しかし、下手な実験とか過激な描写を用いなくても文学が成立するもんなんですなぁ。
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うーん…
正直、大きな事件とか印象的なことが小説の中になさすぎて、それが後味が悪かった。普通すぎるというか、無味無臭な感じがしました。 家でゆっくり読みたいという意見には賛成です。
関連する文学賞
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- 芥川龍之介賞 第32回(1954年 第2回開催) ・受賞