作品情報
沖縄の資料館で働く未名子のもとに、記録と記憶、そして孤独な人々をつなぐ小さな出来事が重なっていく。
沖縄の古びた資料館を拠点に、記録と記憶が重なり合う感覚を描く長編としてまとめた。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2020-07-27
- ページ数
- 160ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 19.7 x 13.7 x 1.9 cm
- ISBN-13
- 9784103533818
- ISBN-10
- 4103533811
- 価格
- 1375 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
この島のできる限りの情報が、いつか全世界の真実と接続するように。沖縄の古びた郷土資料館に眠る数多の記録。中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子は、世界の果ての遠く隔たった場所にいるひとたちにオンライン通話でクイズを出題するオペレーターの仕事をしていた。ある台風の夜、幻の宮古馬が庭に迷いこんできて……。世界が変貌し続ける今、しずかな祈りが切実に胸にせまる感動作。
レビュー
-
ぼくの人生の資料を、ネットの向こうの存在しない誰かに
主人公は「沖縄及島嶼資料館」の大量の収集物をスマホで撮影し、SDカードに収める。ある日、そこは閉じられることになる。そこで、彼女は、それらの膨大なデータを、宇宙、深海、地下シェルターに住む三人に送信する。何のために。 「かつて島に暮らす人たちが絶望していたとき、その周りに広がっている景色は、地獄だった。彼らが暮らしていた直前までの場所とは地形からまったくちがってしまっていた。財産も家も森も、堀も坂道も、あらゆる生き物もすべて吹き飛んでしまった」(p.156)。 ここには、日本軍と米軍に襲われた沖縄と人びとについて聞いたことをなんとか表現しようとする気配がある。けれども、つぎのくだりはどうか。 「港川と呼ばれている一帯、かつての外人住宅――といったって、それができた当時ここは日本にとって外国だったわけだから」(p.4)。 ここには、沖縄にとって日本とアメリカは侵略者、土地略奪者であることへの神経がまるで無い。 (ガマは)「戦中は防空壕として使用され、太平洋戦争末期になると大小規模の集団自決がいくつも行われた」(p.48)。 あれは「自決」と言ってしまってよいものなのか。強いられたのではなかったか。「集団」や「大」「小」などという形容は、殺されたひとりのいのちへの冒涜ではないか。 作家の未熟さにもかかわらず、ある出来事の「資料」を残し、誰かに託す主人公の行為は、非常に重要である。しかも、小さな島を襲った巨大な暴虐の資料を、世界の最果ての孤独者に託すことは、象徴的だ。 ぼくは、悲しいこと、怒ったこと、感動したこと、おもしろかったこと、おかしかったこと、大事だと考えたこと、美しいと思ったことやものをSNSで発信してきた。読んでくれる人はいる。しかし、多くはない。本になることはない。 けれども、ぼくの言葉は、広大な宇宙にひそかに漂い、何百年かのちに、孤独な誰かに読んでもらえるのではないか、という空想をしないわけではない。ぼくの資料もネットの向こうのまだ存在しない誰かに委ねよう。
-
面白い
"ひとりの解答者が選びとる解答は、その人自身の、人生の反映なんです(中略)なんならもう二度と思い出したくもないと考えているような、脳の端にあった経験が、他人の問いによって意味を持ちます"2020年発表の本書は沖縄と孤独な人々の記憶がクイズを通して絶妙に繋がっていく良作。 個人的に沖縄には縁があるので、タイトルに惹かれて手に取りました。 さて、そんな本書は著者の野球好きが高じて球団の春季キャンプ見学で沖縄県に滞在した際に着想した作品で、沖縄の郷土資料館で整理の仕事をボランティアで手伝いつつ、宇宙ステーション、極地の深海、紛争地のシェルターといった世界の果ての人々にマンションの一室でオンラインクイズを出す"問読者(トイヨミ)という仕事をしている未名子。そんな彼女の前にある台風の夜、沖縄在来の馬、宮古馬(ナーター)が迷い込んでくるのですが。 まず、芥川賞の選評ではないが。沖縄という土着空間から始まって、問読者という仕事を通じてスルリと非日常的なSF世界へ、また突然、馬まで現れるという展開が新鮮でした。 また、本書では登場人物それぞれが抱える『孤独』が語られ、つながりや記録を残すことの大切さについても考えさせられるのですが。私自身はどうなのだろうか。そんな自問自答させられた読後感でした。 沖縄好きな方はもちろん、絶妙なバランス感のある小説好きな方にオススメ。
-
注文から到着までが、速い
時間通りに到着し キズもなく満足
-
読み応えありました
引き込まれていくような気分で 楽しく読み切りました
-
美しい文章で描かれたお話に心が癒されました。
沖縄が舞台っとなったお話ですが、台風と宮古馬以外はそれほどお話に関係ないと思います。 作者の高山さんの美しい文章で描かれる人間関係、登場人物とのお別れがせつなく美しく、宮古馬との出会いにハラハラし、人生で起きる出会いと別れには意味があるのかもしれないと感じてしまいました。 個人的に1人の時間に読むことをオススメします。
-
沖縄
沖縄の歴史を絡めた本で読み易かった。社交的でない人はうちでは色々なことに考えを巡らしているんだな。馬など飼うだけでも変化が起きるんだな
-
普通
登場人物の設定はかなりざっくりしてる感じ ストーリーの中心がどこにあるのかよくわからない 読後感は悪くなかったですけど
-
安っぽい・こじつけ・お気楽小説
「What+3 word」のような様々ある時代を変えていくかもしれないIT社会のアプリに触発されて書かれてのでしょうが、「IT社会での情報の捉え方」を書きたいがために、無理やり沖縄馬や、世界の孤独と閉塞された場所(宇宙、南極の深海、中東の戦場のシュルター)にいる、なぜか日本語のできる3人と、「3 wordクイズ」を出す会社へ就職してインターネットでクイズを出し会話するという、どう見ても無理なこじつけばかりで話しが展開していきます。 小説に奇想天外はありえますが、ミエミエのこじ付けでは白けるばかりです。 「世界 が 変わっ た あと でも、 この 場所 の、 現時点 での 情報 を、 自分 で あれ ば 差し出す こと が できる という 自信 が あっ た。」と文中で主人公が豪語していますが、やっていることは、毎日氾濫するマスコミの情報や、SNSの画像や動画、個人のブログでの情報の垂れ流しでしかない、と思います。 意思と戦略、テクニックがなければ、何か残っていく情報にはならない、と思います。 だから、沖縄王朝の歴史や太平洋戦争での絶望的な戦闘、台風の脅威、などなど、沖縄を書き込もうとしていますが、表面を滑るだけの言葉になってしまっています。 孤独、閉塞感、絶望、地獄、などなど、強い言葉をやたら使いたがりますが、同様に何も響いてきません。
関連する文学賞
- 芥川龍之介賞 第163回(2020年) ・受賞
- 沖縄書店大賞 第7回(2021年) ・準大賞