日本の文学賞

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ゲームの王国 上

吉川英治文学新人賞

ゲームの王国 上

小川哲

ポル・ポト政権下のカンボジアと近未来を結ぶ二部構成の長編。暴力と知性、ゲームと政治の関係を大きな時間幅で描き、人間が制度に抗う可能性を問いかける。

SF歴史カンボジアゲーム政治

作品情報

歴史の暴力とゲームの論理が、人間の選択を追い詰める。

早川書房刊、上下巻構成。単一識別子のため、代表として上巻の ISBN/ASIN を採用し、下巻情報は参照 URL に残した。

書籍情報

出版社
早川書房
発売日
2017-08-24
ページ数
448ページ
言語
日本語
サイズ
14 x 2.4 x 19.4 cm
ISBN-13
9784152096791
ISBN-10
4152096799
価格
1980 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

空恐ろしいほどの傑作。 SFにしておくのがもったいない。 そう思った小説は本書が初めてだ。――大森望(書評家) 小川哲という才能を、 信頼して良かった。 “伊藤計劃以後"という時代は 本作の刊行によって幕を閉じる。――塩澤快浩(SFマガジン編集長) ハヤカワSFコンテスト受賞後第一作 テロル、虐殺、不条理を主題とした規格外のSF巨篇 サロト・サル――後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子とされるソリヤ。貧村ロベーブレソンに生を享けた、天賦の智性を持つ神童のムイタック。皮肉な運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1974年のカンボジア、バタンバンで出会った。秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺――百万人以上の生命を奪ったすべての不条理は、少女と少年を見つめながら進行する……あたかもゲームのように。 カバーデザイン:有馬トモユキ 写真:Roger-Viollet/アフロ

小川哲(おがわ・さとし) 1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍中。2015年に第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を『ユートロニカのこちら側』で受賞し、デビューを果たす。

レビュー

  • あっという間に読み進める

    とても忙しい中で、現実逃避しながら読んだ。あっという間に物語に入り込む。下巻が楽しみ。

  • 恐ろしく明晰かつ錯乱した文章の羅列

    物語全体でいうと、まず上巻と下巻で話のノリがだいぶ違う。 時系列的に間隔が空いているという以上に、まるで別の物語のようにすら感じられる。 本書の二大主要人物と思しきムイタックとソリヤにしてからが、もはや別人に思えるレベル。 上巻で神童のごとき冴えを見せたムイタックは下巻では小難しい理屈をこね回す気難し屋の大学教授になっているし、他人の嘘を喝破すること鬼神のごときソリヤも、汚れ仕事もいとわない現実主義的な野党政治家になっている。 束の間の遊戯で直接対決したときのあの闊達な2人との、落差が激しい。 いや、落差というよりは「とても些細で微妙な差なんだけど、決定的に違ってしまった」というべきか。 全くの別人というわけでもないが、神算鬼謀、深慮遠謀という言葉がぴったりだった2人が、なんというか、ややもすると凡庸で冴えない大人になったと思うのは気のせいだろうか。 どちらも社会的には成功しているし、だんぜん優秀ではあるのだが。 また、上巻でひたすら描写されたクメール・ルージュの話が丸々過去のことになって置き去りにされていて唐突な気がするし、そもそもソリヤの父と思しきポル・ポトの末路に至ってはほとんど何の言及もない。 「上下巻」とはいうが、もしかして中巻を読み飛ばしたのか?と疑問が生じるレベルである。 まあ、本書のテーマのひとつが「改竄される記憶」なのだろうから、このぐらいの落差は作者によって意図的に選び取られた展開なのかもしれないが。 また、得てして神童というものは凡庸な大人になっていたりするものである。 (本書の二人は凡庸という評価からは程遠いが) さて本書は、全体としてはおそらく「人生」とか「幸福」とか「生きることの意味」だとかいった、かなり形而上学的な諸問題を、非常にユニークな仕方で論じているようにも思える。 その点で、この物語はどんなにケチをつけようが、その最終的な価値じたいは決して毀損され得ない。 そもそも人生に意味などというものはないけれど、しかし人はそこにそれがあると錯覚しないことには生きていけない存在である。 そのありもしない「意味」というものをだまし絵のように浮かび上がらせるのが「ゲーム」や「ルール」といったこの世の仕組みないし構造であるとするなら、ムイタックはそのゲームやルールをメタ的に思考し、最適解となるような新しいゲームの在り方を模索試行し続けていて、ソリヤはむしろ既存のゲームにどっぷりと身を置き続ける中で、それでも実現可能な最善の選択をしようと藻搔いていたように読めた。 このとことん分かり合えたかもしれない才能ある二人が、運命のいたずらによって近現代史上の加害者と被害者に分かたれてしまい、以後その偶発性がずっと二人の人生を呪縛し続けるという基本構図は見えるのだが、なんというかその構図を回収する「佳境」というか「ドラマ性」が決定的に欠けている。 下巻ではようやくこの二人がゲームソフト上で対決するのだが、正直上巻における遊戯合戦の方が、才気あふれる子供が智略の火花を散らし合っている感じがしてワクワクした。 年のいったゲーマー同士が対戦ゲームでガチャガチャやってるのを見せられても、あまり盛り上がれない。 記憶の糸をたどり、それを心から楽しむことでキャラが強くなるという非常に特異なゲームシステムではあるが、やっているのはいくら魔法アリとはいえたんなるFPSの類である。 しかもその後に待っていたはずの肝心の現実での直接対決は、カンの凶行によってついに実現しなかった。 なんという肩透かしだろうか。 むしろ、個人的にはこのカンとWPやラディーとの対決ももっと読みたかったし、そうした展開の矢先に頭のおかしいヘモグロビン医師が話の腰を折ってしまうのも、どこかポストモダン小説のようで頂けない。 これだけの巨大質量、周囲の時空が歪みかねないレベルの小説を書いた作者に対してはまことに無礼千万なのだが、正直粗削り過ぎるのでもっともっと練り直して欲しいとすら感じる。 あとがきでは「9割削って1割残った」そうだが、その作業をもっともっと突き詰めることができるのではあるまいか。 この本の射程というか面白さは、まだまだこんなもんではないように思われる。

  • 著者の力量、極めて高し。手塚治虫の作品とか、HUNTER×HUNTERが好きな人は、本作に引き込まれると思う。星4.6。

    色々調べていると、本書の著者の評価が非常に高い様子なので、興味を魅かれて購入。題材についてはコメントし辛いが、確かに著者の構成力は凄まじく高くて、所々に鋭い一文があり、感情面でのバランス感覚が良く、物語内部でも物語そのものでも、状況を俯瞰的に捉える能力が極めて高くて、まだ現代日本にこんなに力のある作家がいるものかと、とても感心したし、嬉しく思った。手塚治虫の作品やHUNTER×HUNTERと同様に、存在感のある登場人物が容赦なく死んでいくスタイルなので、作品を通じて強い緊張感があり、特に前半のラストではハラハラさせられた。自分は一時現代小説を大量に読んでいたものの、感性ばかりが重視されて、(本格ミステリの方々を除き)論理性が軽視されるのに嫌気がさして、古典ばかり読むようになったのだが、ちょっとこの著者の作品はこの先も読んでみたいと思わせてくれる内容だった。あと、上巻では二人の主人公の内面がずっとブラックボックスで、評価の高いはずの作品としてその点がずっと気になっていたのだが、それすらも前半のラストを印象付けるための、著者による計算だったと分かった時は大いに恐れ入った。日本の現代小説も、邦楽がそうなったように、ひたすらに質が問われるように原点回帰してくれないものかと思ったりもした。下巻に大いに期待。

  • 良くも悪くも「三体」的

    上巻のあらすじが「運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで邂逅した。」、下巻のあらすじが「復讐の誓いと訣別から、半世紀。政治家となったソリヤは、理想とする〈ゲームの王国〉を実現すべく最高権力を目指す。」とあることから分かる通り、作品背景が非常に「三体」(の第一部)的です。また、物語におけるサスペンスとSFとのバランスや、作中で時代を遷移させることに伴う大河感の演出も「三体」に近しいものを感じました。 よって、「三体」にハマった人には文句なしにオススメ出来る一方で、未読の人が「三体」との択一が求められるならば「先に三体を読んでからでも良いのでは?」とアドバイスしたくなるのが正直なところです(「三体」ならば、第二部、第三部、と話が続いていくので、より大きな満腹感が得られますし)。 ただ、それはあくまで相対的な評価であって、絶対的には非常に満足出来る「読んでよかった」と感じられる作品でした。伏線となり得る要素がふんだんに散りばめられていた一方で、それらの回収が甘かったのが惜しい...(それが出来ていれば、よりインパクトが大きな作品になっていたはずです)

  • オモロイ

    まだ、読み途中ですが、あっという間に半分読み終えました。

  • 今の日本でこれだけの小説が書ける作家はいるだろうか?

    SF小説としても秀作だが、社会派推理小説、歴史小説としても良く書けていて、これだけの小説は見たことがない。読後の印象では「蒼穹の昴」と少し似ているが、繊細な心理描写や圧倒的な情報量ではこの本にはかなわない。 カンボジアで起きた悲劇を舞台に、そこで生きる人々の生きざまを通じて、現代社会の矛盾や人間の心理を分かり易く書き上げている。(迷信やおとぎ話的な部分は、未開の村社会の本質のような気がした) 特に上巻から下巻への移行部分では、こんな展開があるのかと思わず引きずり込まれてしまった。 近未来の脳科学とゲームの世界を融合させた記述は中々に説得力がある。(ご本人の専門分野か?) そして、「人生はゲーム」と現代の「ITゲーム社会」を見事にリンクさせたセンスには脱帽だし、すごい作家が出てきたものだと嬉しくなった。 今後、ご本人はこれ以上に楽しみながら小説が書けるか判らないと言っているが、読者としては次作以降も期待したい。

  • ゲームも革命もルールの中か外かの違い?

    偶然にも巡り会った天才少年・少女。ゲームという決められたルールの中で、いかにして勝つかを模索す る。一方クメール・ルージュはルールの外からルールを破壊する「革命」に命をかける。ルールの内と外と という両極端の対比を大きな柱とし、混沌としたカンボジアの情勢やファンタジー色の濃い超能力児の挿話 を織り交ぜている。 大量虐殺を伴うクーデターや革命を「ゲーム」というブラック・ジョークとも言うべき視点でとらえ、 ゲームの王国の不条理な世界を描き切っている。その技巧は広大な熱帯雨林のごとく繁茂で、かつ鮮やかで さえある。

  • 圧倒的な迫力と緻密な構成で描かれる一大サーガ

    「君のクイズ」で初めて小川哲作品に触れ、「地図と拳」「嘘と正典」を読了し、この「ゲームの王国」を読み始めた。作品としては「地図と拳」に近いテースト(多くの登場人物が絡み合って大きな物語を構成する)だが、アマチュア時代に書かれた当作品は「地図と拳」に比べて、視点の分散面等でやや粗削りな部分を感じる。 が、それを補って余りある圧倒的な迫力と緻密な構成で読者を最後まで惹きつけ続ける素晴らしい名作であった。シリアスもコメディーも性も生も死も詩もSFもエンターテイメントも喜劇も悲劇も、とにかく全てがこの作品には描かれていた。

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