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人形の旅立ち (福音館創作童話シリーズ)

坪田譲治文学賞

人形の旅立ち (福音館創作童話シリーズ)

長谷川摂子

『人形の旅立ち』は、長谷川摂子による連作ファンタジー作品集です。神社の楠の根もとに捨てられた雛人形が満月の夜にうろの中の海へ消える表題作をはじめ、山陰の町を舞台に子ども時代の不思議な旅を描きます。

児童文学連作ファンタジー山陰人形子ども時代

作品情報

満月の夜、古い雛人形たちは楠のうろの中の海へ旅立つ。

福音館書店から2003年6月15日に刊行された福音館創作童話。出版社ページで 208 ページ、ISBN 978-4-8340-0619-3、対象は小学高学年からと確認できます。表題作ほか4編を収めます。

レビュー要約

  • 長谷川作品に通う文と音の一体感が本作にも表れていると評され、読者を自然に引き込む感性が評価されている。山陰の土地の記憶と幻想が溶け合う点も魅力になっている。

書籍情報

出版社
福音館書店
発売日
2003-06-15
ページ数
206ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784834006193
ISBN-10
4834006190
価格
217 JPY
カテゴリ
本/絵本・児童書/読み物/童話・文学

なおがいつも遊んでいる神社の境内には大楠があって、根もとには古くなった雛人形が捨てられていました。満月の夜、楠の幹にぽっかりあいたうろに、吸いこまれるように人形たちが姿を消すのをなおは見ます。うろの中は、海でした……。表題作「人形の旅立ち」のほか4編が収められたこの作品集は、作者の故郷、山陰の町を舞台に紡ぎだされたもの。またひとつ、子ども時代への旅が、連作のファンタジーという形で書きとめられました。

『めっきらもっきら どおんどん』や『きょだいな きょだいな』などの絵本の作者である長谷川摂子さんが、子ども時代にもどる旅をして、故郷の山陰の町を舞台に書かれたこの5編のファンタジーの連作は、刊行までに実に20数年の年月がかかりました。「人形の旅立ち」と「妹」の2編は、当時福音館書店で出していた雑誌に掲載(1980年と81年の号)、さらにその2編が、3人の作者による短編集『少年の日に-子どもの館作品集-』に収められるときに「椿の庭」が書きおろされました(83年に刊行)。それから20年、なおの物語をもう幾編か書きたして新しく一冊の本にまとめたいという意図を作者も編集部も強く持ちながら、作者の言によると「暗いトンネルに入ってしまった」のです。一昨年の秋、ほとんど奇跡的ともいえるように、「ハンモック」と「観音の宴」の2編ができあがりました。20数年の年月をへて、巡り巡ってふたたび子ども時代に立ち戻った作者のまなざしには、ひたむきに澄んだ初々しい感性のかわりに、豊かなあたたかい光と一抹のさびしさが加わっていました。こうして長谷川さんの『人形の旅立ち』は完成しました。

レビュー

  • どことなく懐かしく、不思議な本

    そうそう、子どもの頃、こんなミステリアックで、不思議な体験したなぁ。私にとって懐かしく、すこし怖さを呼び戻したような本でした。私の子供のころは、まだまだ人気のいない家や神社、寺、荒れ果て草も木も茫々のような土地、が都会といえど近所にあり、夕方などは一人で通り過ぎるのはちょっぴり、勇気がいり勝手に謎めいた想像をしました。「人形」は、今でも何となく怖いですね。もし、粗末に捨ててしまったらとこの本を読んで、改めて考えなおしました。 児童書ではありますが、これは大人の本のような気がします。

  • 幻想小説。

    長谷川摂子と聞いて、あ、知っている、と反応する方はどれだけいらっしゃるものか。ほとんどいらっしゃらないのではないか。児童文学がお好きで、絵本も読まれる方か、ちいさいお子さんがいらして絵本を読み聞かせされた方のなかには、ひょっとしたらいらっしゃるのかもしれない。有名なものでは、『めっきらもっきらどおんどん』があります。しかしながら、本書が一番読まれた作品かもしれません。かくいう私もまた、長谷川摂子という書き手を意識し、初めて手にした作品が本書でしたから。正確にいえば、本書を手にしたことで、作者を知りましたから。帯にはファンタジーとあり、確かにファンタジーといえるのでしょうが、私は幻想小説といいたい。土着の、えもいわれぬ不条理な、それでいて郷愁を誘われる筆致。文章も筋の通った折り目正しい日本語であって。淡い哀しみ、恐怖が紡がれるなかに、金井田英津子先生の挿画が彩りを添えて。児童文学というだけで見くだすのか手にとる方はぐんと減りますが、これだけの水準の幻想小説は、よく読まれている一般の書籍にもなかなかないだろうと思われます。お子さんが読むのはもちろん喜ばしいことですが、齢を重ねた方々にも、凛とした佇まいの端整な小説を読みたいようであれば、お勧めしたいですね。ことに印象に残ったものが『観音の宴』。三味線流しが出てまいります。その、数奇な運命を奏でる三味の音が、殷々と鳴り響き、染みわたります。

  • 不思議な、でも真実の物語

    死んでしまった小さな女の子がときどき遊びに来る。捨てられた人形はある日、人形の浄土に旅立つ。そういうことがあるのかどうか。でも主人公の女の子はそれを見てしまった。この世の真実は普通に目に見えていることばかりではない。だって、私たちは死んだ人たちがどこにいるのかわからないし、死んだ人たちの思いや心がどこに行くのか、なくなってしまうのかもわからないのだから。

  • 大人にも読んで欲しい童話

    読み始めて気づいた、前に読んだことがあると。でも面白くて再度一気読み。舞台は第二次世界大戦後の山陰の街、今回は『ゲゲゲの女房』のヒロインのお里みたいなところかなぁと情景を重ね合わせて読みました。普通の暮らしの中に垣間見えてしまう暗い部分を、子供の妄想とも言えそうな不思議によって表現されています。結構ホラーなファンタジー童話とも言えるかな。言葉自体も表現もかなり難しく、童話とはいっても大人にこそ読んでほしい本。挿絵も良いです。

  • 美しき日本

    図書館などでは児童書に分類されているようですが、子供だけに読ませておくのはもったいない! 日本の四季折々の美しさ、田舎のなつかしい風景・・・私たちにとって大切な風景がうつくしい描写で丁寧に描かれています。 とても子供には読みこなせない繊細なお話です。 ストーリーに意外性はなく、流れるようにすすんでいきますが、幽玄的な美しさがたまらなく神々しいのです。 古い雛人形の旅立ち、亡くなった女の子が遊びにくる古い庭園、病気の妹にだけ見ることのできる不思議な幻想・・・。 美しさの中には死や病も必ず潜んでいるものなのでしょうか。 死や病が作品をより鮮やかに美しくしていました。 挿絵も古風で、のせるべきページに効果的に配置してあったような気がします。 ページをめくるのがとてもわくわくしました。

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