芸術選奨文部科学大臣賞 げいじゅつせんしょう もんぶかがくだいじんしょう
第13回(1963年)
受賞者
8名『大陸の細道』は、木山捷平が中国大陸での見聞と記憶をもとに、旅の時間と人間の姿を淡々と描いた紀行文学。派手な事件ではなく、土地の空気、移動の感覚、異郷で出会う人々の印象を積み重ねることで、戦前・戦中期の記憶を静かに浮かび上がらせる。
大陸を歩く旅の細い道に、時代の記憶と人の気配が重なる。
市川崑は、映画『破戒』と『私は二歳』により1963年の芸術選奨文部大臣賞を受けた。社会の差別を扱う文芸映画と、幼児の視点をユーモラスに取り込む家庭劇という異なる題材を通じて、映像表現の幅を示した受賞である。
重い社会性と軽やかな観察眼を、二つの映画で対照的に示した。
藤間藤子は、「喜三の庭」「三人三番叟」「長生」により1963年の芸術選奨文部大臣賞を受けた。日本舞踊の古典的な身体技法と舞台構成を土台に、格調ある演目を精緻に踊り分けた成果として記録されている。
古典舞踊の格と緻密な表現を、複数の演目で示した受賞。
麻生三郎の「人と雲」は、1963年の芸術選奨文部大臣賞の対象となった絵画作品。戦後日本の具象表現を代表する画家らしく、人体と空間、重く沈む色調、存在の不安を画面に凝縮した作品として位置づけられる。
人の姿と雲の気配が、重い色調のなかで向き合う。
山田喆は、「額皿和」と「白瓷平水指」により1963年の芸術選奨文部大臣賞を受けた。白磁を中心とする陶芸表現において、器形の緊張感、釉調の静けさ、用途と造形の均衡を示した受賞である。
白磁の静けさと器形の緊張が、陶芸作品としての存在感を生む。
『児流鏑馬』は、九代目三宅藤九郎が狂言の身体性と祝祭性を生かして示した古典芸術の舞台である。馬上の所作を想起させる敏捷な動きと、狂言師としての端正な間合いが重なり、儀礼と芸能の境界にある題材を舞台上の生きた表現へと引き寄せている。
儀礼の気配と狂言の軽やかな身体が交わる、九代目三宅藤九郎の舞台。
『日本名陶百選展』は、日本陶磁の名品を選び抜いて紹介した展覧会である。時代や産地を横断して陶芸の造形、釉調、用途の美を見せる構成により、鑑賞者が日本陶磁の広がりを体系的にたどれる場を作った。
日本陶磁の名品を横断的に見せ、鑑賞と研究を結びつけた展覧会。